肺がんの薬オシメルチニブの心臓への副作用について血液を全身に送り出すポンプとしての機能を弱めると注意喚起

Press Release

2021年6月30日

 

肺がんの薬オシメルチニブの心臓への副作用について

血液を全身に送り出すポンプとしての機能を弱めると注意喚起

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大阪国際がんセンター(以下、当センター)呼吸器内科國政啓医長、熊谷融主任部長は、肺がんの薬オシメルチニブ(商品名タグリッソ)の副作用について当センターの腫瘍循環器科と共同研究を行い、その成果を肺がんの専門誌 Lung Cancer に論文として発表しました *1。この薬は心臓への副作用があるため注意が必要で、飲んだ量とは関係せずに起こること、服用を止めれば元に戻ることがポイントです。当論文は Lung Cancer 誌から重要論文に選ばれ*2、がん薬物治療で最も権威のある雑誌 Journal of Clinical Oncology が取り上げたので*3、世界中の肺がん専門家の注意を喚起しました。

 

肺がんにはいろいろな遺伝子の異常が見つかっており、その中で一番多い EGFR (上皮成長因子受容体)遺伝子変異に対する特効薬がたくさん開発されてきましたが、現在はオシメルチニブという薬の効果が優れているので、最もよく使われています。当センターは早くからこの薬を使用しており、重篤な心臓への副作用が他の抗がん剤よりも多く発生することを経験しているので、腫瘍循環器科と共同で研究を行いました。

 

オシメルチニブはこれまで、心電図検査での変化が知られていましたが、今回の研究では、心臓が血液を全身に送り出すポンプとしての機能を低下させることを明らかにしました。 2014 年 1 月~ 2019年 12 月に当センターでオシメルチニブを服用した肺がん患者 183 名について、心臓のポンプ機能を示す左室駆出率(LVEF)※1 の検査データを見ました(図 1 )。オシメルチニブを服用した後に LVEF の値が1 0%以上減少した患者について詳しく解析したところ、以下の結果を得ました。

 

1)LVEF の減少が起こるのはオシメルチニブの服用を始めてから約 6 カ月以内、2)オシメルチニブを飲み続けても LVEF が減少し続けるのではなく、低値のまま推移する、3)オシメルチニブの服用を止めると LVEF は元の値まで戻る、4)過去に心臓の病気がある患者にはこの副作用が出やすい(図 2 )。

 

この結果から、オシメルチニブによる心臓のポンプ機能に対する副作用は、服薬量とは関係せず、飲むのを止めると元に戻ることがわかりました。心臓の病気があり、ポンプ機能が落ちている患者がオシメルチニブを服用する際には注意が必要です。

 

オシメルチニブは今後も使用する患者が増える傾向にあり、また他の抗がん剤との併用療法が進むので、当センターは副作用についての研究を継続し、安心して服用していただくように努めてまいります。

 

※1 LVEF (左室駆出率):左室駆出率とは、主に心臓超音波検査などで評価する一回心拍出量の心室拡張末期容積に対する割合で、正常値は 50~80 %。

 

本報告は第3回日本腫瘍循環器学会学術集会にて発表し、一般演題優秀賞を受賞しました

 

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【図1】オシメルチニブ投与後に有意に LVEF は低下する

 

【図2 】オシメルチニブにより LVEF が 1 0%以上低下した症例における LVEF の経時的変化

 

【出典】
*1 Kunimasa K, Oka T, Hara S, Yamada N, Oizumi S, Miyashita Y, Kamada R, Funamoto T, Kawachi H, Kawamura T, Inoue T, Kuhara H, Tamiya M, Nishino K, Matsunaga T, Imamura F, Fujita M, Kumagai T. Osimertinib is associated with reversible and dose-independent cancer therapy-related cardiac dysfunction. Lung Cancer. 2021 Mar;153:186-192.

 

*2 Anand K. Cardiac dysfunction due to Osimertinib. Lung Cancer. 2021 Mar;153:193-194.

 

*3 Kunimasa K. Is Osimertinib-Induced Cardiotoxicity Really Harmless? J Clin Oncol. 2021 Apr 23;JCO2100266.

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