希少がん「成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)」の新しい診断方法開発に向けた取り組みを進めています<企業5社との共同研究>

Press Release

2022年8月22日

 

希少がん「成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)」の新しい診断方法

開発に向けた取り組みを進めています<企業5社との共同研究>

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 大阪国際がんセンター(以下、当センター)は、希少がんである成人T細胞白血病リンパ腫※1(以下、ATL)のデータベース※2を整備して、早期診断や新たな診断指標の探索、それを活用した診断法を開発する研究を、2021年5月より厚生労働省のクリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)推進支援事業(以下、CIN事業)による補助金を受け、企業と共同して始めました。その研究成果を受け、2022年5月25日※3からは一部共同研究先を変更して、ATLのデータベースの質を高める新たな基盤研究を開始しました。。

 ATLはHTLV-1というウイルスが原因の難治性・希少がんの一つであり、近年大阪で増加傾向となっています(図1)。ATLには「くすぶり型」、「慢性型」、「急性型」、「リンパ腫型」の4病型に分類され、「急性型」、「リンパ腫型」の5年生存率は1割台しかなく、「くすぶり型」「慢性型」でも4~5割に留まっています(図2)。 4病型の中で「急性型」のATLを除いて早期の段階で診断することは難しく、治療成績を上げることができていません(図3)。

 これを改善するため、本研究で、ATLデータベースを活用した研究を進め、早期の段階で的確に診断する方法を新たに開発します。さらには、データベースで得られた情報から治療標的を推定することにより、ATLの治療薬の開発が期待できると考えています(図4)。

 昨年は、データベース作成及び拡充する運営体制の構築を行いました。その結果、データベースを一つのデジタル化したプラットフォーム上に整理することができ、今後の利活用の際の利便性が向上しました。また、形態診断が難しいので、ATL細胞の形態像をデジタル化してデータベースに搭載することの意義を英文誌に報告しました※4
 今年度は引き続き、本データベース情報の利活用をさらに推進するために、利用を検討している企業の関心も高いと考えられる患者さんの普段の病態を入力できるアプリを開発、その入力データを同じクラウドで登録できる充実したシステムを構築します。その他にも昨年度からの継続で新規のバイオマーカーの情報としてmiRNAやペプチドマーカー等のデータも格納できる体制を整備します。

 なお、この共同研究は、企業5社(参画企業=セラビジョン・ジャパン株式会社、株式会社プロトセラ、株式会社アウトソーシングテクノロジー、BLUE TAG株式会社、MiRXES Japan株式会社)と共同で行います。CIN事業で構築したATLデータベースは、本事業終了から2年経過後には参画した企業以外でも活用できるように整備を進めています。

 当センターは今後、さらなる医療機関の参加と企業によるATLデータベースの利活用、共同研究を促し、ATLおよび関連疾患の早期診断や、治療技術の開発のための研究を進めてまいります。また、ATL治療成績向上を目指す大阪モデルとして、早期リスク診断法と予防法などの保健行政への提言を目標としています。そして、地域医療機関や行政と連携することでATLの啓発を高め、ATLの早期診断と早期治療を実践し、ATL根絶を目指します。

【お問い合わせ先】

TEL 06-6945-1181(内線5101/5104)

地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター

事務局 総務・広報グループ

受付時間:平日9:00~17:30

【注釈】

※1 白血球の中の T 細胞に HTLV-1ウイルスが感染し、 がん化したことにより発症する血液のがん

※2 疾患登録システム(患者データベース)を臨床開発に利活用することで、日本国内における
医薬品・医療機器等の臨床開発を活性化させることを目指し、その環境整備を産官学で行う厚生労働省が補助するプロジェクト

※3 厚生労働省から通知のあった採択・事業開始日

※4 Fuji S, et al.Int J Lab Hematol. 2022.

 

図1 大阪府下のATL登録実数と罹患者増減傾向

大阪府下のATL登録実数と罹患者増減傾向

図2 病型と生存率

病型と生存率

図3 HTLV-1キャリアからATLへの進行の流れ

HTLV-1キャリアからATLへの進行の流れ

図4 今後の研究の進め方

今後の研究の進め方

[参画企業5社について]

参画企業5社について

CIN活動ユニット
・疾患レジストリ  :株式会社アウトソーシングテクノロジー(左写真)
・分子バイオマーカー:MiRXES Japan株式会社、株式会社プロトセラ(右写真)
・画像バイオマーカー:BLUE TAG株式会社、セラビジョン・ジャパン株式会社(写真なし)

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◆セラビジョン・ジャパン株式会社:末梢血自動血液細胞分類装置によるATL細胞を自動解析する人工知能の開発とATL細胞を含めたデジタル細胞画像の出力を行い、早期に正確なATL診断支援することを目指す。

◆株式会社プロトセラ:血液中のペプチドを測定し、解析を行うことで、疾患のリスク評価を確認できるペプチド由来バイオマーカーの確立を目指す。

◆株式会社アウトソーシングテクノロジー:ITインフラの基盤を構築し、患者データベース情報を正確にかつ簡便にIT技術を用いた管理することを目指す。

◆BLUE TAG株式会社:デジタル細胞中のATL疑い細胞を画像から精度良く検出する人工知能開発に向けての、教師画像の整理・分類、ATL細胞分類AIモデル作成を行い、ATLの画像診断支援を行えるシステム構築を目指す。

◆MiRXES Japan株式会社:血液中のmicroRNAを高感度で検出できる特許技術を利用して、ATLの早期リスク診断あるいは移植後の再発モニタリングに関するデータ収集を行い、新たなマーカーを取り入れた予後予測モデルの構築を目指す。

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