がん登録の歩み
大阪府がん登録とその根拠となる法制化の経緯
2018年12月
1953年から悪性新生物が死因第2位となり、1951年から結核と入れ替わり第1位になっていた脳血管疾患と併せて成人病の予防、対策を早急に立てるかが課題となり、「成人病」(adult diseases)は、1957年2月の厚生省(当時)成人病予防対策協議連絡会の議事録で記載され、これを受け1963年までに3回の悪性新生物実態調査が行われた。1981年以降は悪性新生物が死因の第1位となった。
地域住民を対象とした地域がん登録事業は、1983年に「老人保健法」(昭和57年8月17日法律第80号)施行にともない、厚生省「健康診査管理指導事業実施要綱」により、都道府県が実施すべき事業として位置付けられた。
がん登録で扱う個人情報については、1988年に「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」(昭和63年12月16日法律第95号)が公布されるなど関心が高まる中、国に先立って1996年10月に「大阪府個人情報保護条例」(平成8年3月29日大阪府条例第2号)が施行され、大阪府がん登録(大阪府悪性新生物登録事業)は、このときに個人情報保護審議会の審議を受け承認を得た。
2003 年5 月から施行された「健康増進法」(平成14年法律第103号)の第16 条において、「国民の生活習慣とがん、循環器病その他の政令で定める生活習慣病(以下単に「生活習慣病」という。)との相関関係を明らかにするため、生活習慣病の発生の状況の把握に努めなければならない。」とされ、その具体的な内容は、「地域がん登録事業および脳卒中登録事業であること」が示された(健発第0430001号)。一方で、2003年5月に「個人情報の保護に関する法律」(平成15年5月30日法律第57号)、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」(平成15年5月30日法律第58号)、「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」(平成15年5月30日法律第59号)が成立し、2005年4月までに全条項が施行されることになった。
地域がん登録事業に関して2004年1月には厚生労働省健康局長より、本人の同意を得ずにがんの情報を収集・利用することなどについては、増進法(平成14年法律第103号)第16条に基づき、民間の医療機関が国又は地方公共団体へ診療情報を提供する場合、行政機関に該当する医療機関が国又は地方公共団体へ診療情報を提供する場合、独立行政法人等に該当する医療機関が国又は地方公共団体へ診療情報を提供する場合は、利用や提供の制限の適用外の事例に該当する旨の通知(健習発第0108003号)がなされた。同年12月に厚生労働省が示した「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイドライン」においても、地域がん登録事業による国または地方公共団体への情報提供は、本人同意原則の適用除外にあたることが明記された。
2004年に「第3次対がん10ゕ年総合戦略」、2005年に「がん対策推進アクションプラン2005」を策定、2007年に「がん対策基本法」(平成18年6月23日法律第98号)が施行されるに際し、「がん対策推進基本計画(第1期)」がまとめられ、この中で重点的に取り組むべき課題の一つとしてがん登録の推進が掲げられた。この時点で地域がん登録は35道府県1市が実施していた。
2013年の「がん登録等の推進に関する法律」(平成25年12月13日法律第111号)によってがん登録が初めて法律で明文化された。同法は2016年1月1日に施行され、全国を網羅するがん登録が法のもとで実施され、法施行後、全ての病院と指定された診療所は、がん患者の罹患情報届出義務が発生することとなった。また、全国がん登録システムにより、全国規模で、同一条件の情報が集約され、分析が可能となった。
なお、2017年5月の改正個人情報保護法の施行にあたっても、がん登録等の推進に関する法律は、個人情報保護法における法令に基づく場合に相当し、民間の医療機関、行政機関に該当する医療機関、地方独立行政法人等に該当する医療機関が地方公共団体への届け出情報を提供する場合は、がんの情報を利用及び提供において本人の同意を得る必要のないことが厚生労働省健康局長により改めて通知(平成29年健発第0530第2号および第3号)された。