がん検診によるがんの早期発見
がん検診の精度管理とは?
精度管理の目的
がん検診の精度管理の目的は、検診を実施した場合に生じる地域や施設のバラツキを把握し、最小化することで、安定化したサービスとしての検診提供体制を確立することです。住民がどの地域に住んでいたとしても、質が担保された検診を受けることができるように、市町村は各々が実施しているがん検診の精度を確認し、問題があれば改善していかなければなりません。この過程を怠ってしまうと、がん死亡を防ぐことのできない質の悪い無意味な検診を住民に提供していたとしても気づくことさえできません。このような事態を防ぐためにも、市町村が検診を委託している検診実施機関や精密検査実施機関で「誰が」「どのような方法・手順で」検査を住民に実施しているのかを確認することが重要です。さらに、検診実施後はその実績(検診の「受診率」と「プロセス指標:要精検率、精検受診率、がん発見率、陽性反応適中度」) をもとに精度について分析し、次年度も同じ方法で検診を実施して良いのか、改善しないといけない部分がないかどうかを確認し、見直さなければなりません。そして、最終的にはがん死亡率や罹患率の動向も併せてモニタリングしていく必要があります。
精度管理のための取り組み
がん検診の精度管理と言っても、具体的に何をすればいいのでしょうか。市町村が検診を実施するにあたって必要な取り組みについて説明します。
<がん検診の実施体制の整備とその確認>
質が担保されたがん検診実施のため、平成20年に厚生労働省のがん検診の事業評価に関する委員会は「仕様書に明記すべき必要最低限の精度管理項目」と「事業評価のためのチェックリスト」を設定しました。その後、個別方式の導入や検診技術の発展の影響を受け、平成28年3月に国立がん研究センターがこれらの改訂版を作成しました。「仕様書に明記すべき必要最低限の精度管理項目」には委託契約時の仕様書に記載すべき項目がまとめられています。これらの項目を全て実施することで初めて検診の実施体制および質を最低限のレベルにすることができるため、市町村はこれらの項目全て実施可能な検診機関に検診を委託する必要があります。「事業評価のためのチェックリスト」は「市町村用」「検診実施機関用」「都道府県用」の3種類あり、各々でチェックリスト項目を全て達成することができているか確認し、できていない部分があれば実施できるよう体制整備に努めなければなりません。このチェックリストは自己点検であるため、これらの項目がきちんと実施されているかどうかを第三者の目で確認することも必要かもしれません。
「仕様書に明記すべき必要最低限の精度管理項目」と「事業評価のためのチェックリスト」の詳細については、それぞれ国立がん研究センターのホームページを参考にしてください。
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仕様書に明記すべき必要最低限の精度管理項目、事業評価のためのチェックリスト
http://ganjoho.jp/med_pro/pre_scr/screening/check_list.html
<がん検診の受診率とプロセス指標の把握>
市町村は、住民に質の悪い検診を行っていないかどうか、その精度を確認する必要があります。検診の実態やその精度を評価するための指標として、受診率とプロセス指標と呼ばれる4つの指標(要精検率、精検受診率、がん発見率、陽性反応適中度)があります。受診率とプロセス指標は目標値や許容値が設定されており(表3参照)、都道府県や市町村はそれらとの比較や他府県・他市町村との比較を行うことで、自市町村の検診の精度の現状を把握する必要があります。以下に受診率とプロセス指標の説明、さらに各指標の計算方法について記載します。
がん検診の受診率とプロセス指標について
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受診率 : 対象集団のうち検診を受診した者の割合
1年に1回のがん検診(大腸・肺)の場合
2年に1回のがん検診(胃・乳・子宮頸)の場合 -
要精検率:がん検診を受けた者のうち、精密検査が必要と判断された者の割合
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精検受診率 : 要精検者のうち、精密検査を受診した者の割合
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がん発見率 : がん検診を受診した者のうち、がんと診断された者の割合
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陽性反応適中度 : 要精検者のうち、がんと診断された者の割合
表3 各がん検診に関する事業評価指標とそれぞれの許容値及び目標値
胃がん | 大腸がん | 肺がん | 乳がん | 子宮頸がん※4 | ||
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受診率 | 目標値(国)※1 | 50%以上 | 50%以上 | 40%以上 | 40%以上 | 40%以上 |
目標値(大阪府)※2 | 40%以上 | 40%以上 | 45%以上 | 45%以上 | 45%以上 | |
要精検率 | 許容値※3 | 11.0%以下 | 7.0%以下 | 3.0%以下 | 11.0%以下 | 1.4%以下 |
精検受診率 | 目標値(国)※1 | 90%以上 | 90%以上 | 90%以上 | 90%以上 | 90%以上 |
目標値(大阪府)※2 | 90%以上 | 80%以上 | 90%以上 | 95%以上 | 90%以上 | |
許容値※3 | 70%以上 | 70%以上 | 70%以上 | 80%以上 | 70%以上 | |
がん発見率 | 許容値※3 | 0.11%以上 | 0.13%以上 | 0.03%以上 | 0.23%以上 | 0.05%以上 |
陽性反応適中度 | 許容値※3 | 1.0%以上 | 1.9%以上 | 1.3%以上 | 2.5%以上 | 4.0%以上 |
※ 受診率の数値設定の対象となる年齢は、胃・大腸・肺・乳がんは40歳から69歳まで。子宮頸がんは20歳から69歳まで。要精検率・精検受診率・がん発見率。陽性反応適中度の数値設定の対象となる年齢は、胃・大腸・肺・乳がんは40歳から74歳まで。子宮頸がんは20歳から74歳まで。
※1 平成30年3月策定「がん対策推進基本計画」より
※2 平成30年3月策定「第3期大阪府がん対策推進計画」より。第3期大阪府がん対策推進計画では、現実に即した目標値を設定すべきであるという考えより、表のとおりに目標値が設定された。
※3 「今後の我が国におけるがん検診事業評価の在り方について報告書 平成20年3月 がん検診事業の評価に関する委員会」より
※4 市町村で実施する子宮頸がん検診の細胞診の分類は、平成26年度より、日母(クラス)分類からベセスダシステムへ移行した。ここに示された許容値は、日母(クラス)分類を行っていた時代に作成されたものである。
がん検診のPDCAサイクルとは?
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