子どもと若い世代の白血病の治療成績が大幅改善
Press Release
2021年7月29日
子どもと若い世代の白血病の治療成績が大幅改善
40年前に8割亡くなっていた白血病の子どもが8割治る時代に
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大阪国際がんセンターがん対策センターの中田佳世副部長は、同センター血液内科の藤重夫副部長らとともに、子どもから若年成人の白血病の治療成績が大幅に向上していることを明らかにしました。この研究は大阪府がん登録を活用したもので、大阪府がん診療連携協議会小児・AYA部会およびがん登録・情報提供部会の活動の一環として行われ、研究成果は英文医学誌「Cancer Science」に掲載されました*1。また、これは、20年以上にわたる長期推移を示した国内初の報告となります。
未成年(0-19歳)にできるがんの中で最も多いのは血液のがんである白血病です。かつて未成年の白血病はほとんど治すことができず、治療成績を示す5年生存率は10-20%しかなく、大部分の子どもは亡くなっていました。しかし最近、治療法が進歩して白血病になった子どもが病気を克服して元気に生活しているという話がよく聞かれるようになりました。
わが国において白血病の子どもや若い世代がどれくらい治るようになったのかを調べた研究は今までありませんでした。そこで、1975-2011年の長期間にわたる白血病の子どもや若い世代の治療成績の移り変わりについて、大阪府がん登録を用いて調べることにしました。
1975-2011年に白血病にかかった小児と思春期・若年成人世代(Adolescent and Young Adult,AYA世代:15-39歳)の患者約5,000例における5年生存率の長期推移を調べたところ、1975-2011年の37年間において、小児とAYA世代ともにそれぞれ大きく改善していることが分かりました(図1)。2006-2011年に診断された急性リンパ性白血病※1、急性骨髄性白血病※2、慢性骨髄性白血病※3の患者それぞれの5年生存率は、1975-1981年に診断された患者と比較すると、小児とAYA世代ともに大きく改善していました。特に慢性骨髄性白血病患者では、1975-1981年に診断された小児で6.3%、AYA世代で14.1%でしたが、2006-2011年の診断では、小児・AYA世代とも90%以上となり、白血病の中で最も顕著な改善が見られました。
生存率改善の背景には、わが国の小児がんに対する臨床研究の立ち上げや、AYA世代に対する小児型治療法の導入、小児とAYA世代における造血幹細胞移植治療技術の発展が影響していると考えられます。また、慢性骨髄性白血病については、原因となる遺伝子異常を狙った薬の使用が開始(2001年)された後に5年生存率が90%以上に達しており、新しい薬の開発が大きく貢献したと推察されます。本調査結果は、大阪府内の小児とAYA世代の白血病診療施設において、治療法、治療薬の導入が迅速に行われてきた成果を示していると思われます。
小児とAYA世代の白血病の患者数は少ないため、生存率の長期推移を示したデータはわが国には存在せず、1962年以降、府内医療機関の協力のもと継続して行われている大阪府がん登録事業によるデータの蓄積、継続した生存確認調査だからこそ、明らかにできたと考えます。
大阪国際がんセンターは、大阪府唯一の都道府県がん診療連携拠点病院として府内67のがん診療連携拠点病院等と連携し、大阪府がん診療連携協議会を運営しており、がん対策センターは、大阪府がん登録事業の運営およびそのデータを用いた調査分析を行っています。またセンター内にはAYA世代サポートチームが結成され、療養中のAYA世代のがん患者の支援を行っています。
当センターは、これからも小児とAYA世代のがん、希少がんについて調査を進め、治療およびQOLの向上を目指して取り組んでまいります。
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地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター
事務局 総務・広報グループ
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<注釈>
※1 急性リンパ性白血病:白血球の一種であるリンパ球が幼若な段階でがん化し、がん化した細胞が無制限に増殖することで発症する白血病。5年生存率:1975-1981年 小児30.2%/AYA世代4.2% → 2006-2011年 小児86.7%/AYA世代64.5%
※2 急性骨髄性白血病:リンパ球以外の白血球、赤血球、血小板になる予定である細胞ががん化し、無制限に増殖することで発症する白血病。5 年生存率:1975-1981 年 小児 7.0%/AYA 世代 5.2% → 2006-2011 年 小児 77%/AYA世代 66.5%
※3 慢性骨髄性白血病:造血幹細胞の遺伝子の異常(フィラデルフィア染色体異常)によって、本来なら白血球の一種である好中球、好塩基球、好酸球、単球になる予定である細胞ががん化する白血病で、病期は進行度合いにより慢性期・移行期・急性期に分けられる。5 年生存率:1975-1981 年 小児 6.3%/AYA 世代 14.1% → 2006-2011 年 小児 100%/AYA世代 93.3%
*1 Nakata K, Okawa S, Fuji S, et al. Trends in survival of leukemia among children, adolescents, and young adults:A population-based study in Osaka, Japan. Cancer Sci. 2021 Mar;112(3):1150-1160. doi: 10.1111/cas.14808
[図 1]白血病の 5 年生存率の推移(1975-2011 年診断、大阪府在住者)
[参考]小児・AYA 世代に発生した白血病の種類と割合(1975-2011 年診断、大阪府在住者)