病院サイトへclick
研究所

がんの早期診断に有効なマーカーの検索、また化学療法や免疫療法、放射線療法などに抵抗性のがんも含めた新たな治療法の開発を行います。いずれも高度な基礎研究から臨床応用へと発展させることにより府民の健康と、ひいては我が国、世界のがん患者への貢献を目指します。

臨床研究
管理センター

当センターの基本方針のひとつである「先進医療の開発と実践」を実現するために、企業主導および医師主導の開発治験を推進し、当センター独自の臨床研究の支援を行っています。また2018年からは、認定臨床研究審査委員会を置き、センター内外の特定臨床研究の審査も実施しています。

次世代がん医療
開発センター

患者さんの生体試料などの収集や提供(Cancer Cell Portがんバンク)、治験や臨床研究にかかる支援や外部との共同研究の誘致などの支援活動を通じて、病院や研究所との架け橋となり、基礎研究や臨床研究の推進・普及のために活動しています。

がん対策センター

1962年から継続している大阪府がん登録を基盤に、大阪府がん対策推進計画など、科学的根拠に基づくがん対策の立案および進捗管理で大阪府と協働することに加え、病院や研究所等とともに大阪国際がんセンターを構成する柱の一つとして、その理念の実践に取り組んでいます。

高度な技術に対応し、食道がんを自動で診断する高精度「内視鏡診断AIシステム」を開発

Press Release

2019年9月30日

 

高度な技術に対応し、食道がんを自動で診断する

高精度「内視鏡診断AIシステム」を開発

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター(以下、当センター)の消化管内科 大森正泰 医師、石原 立 主任部長らのグループは、株式会社AIメディカルサービスと共同で、内視鏡画像から食道がんの診断を自動で行う「内視鏡診断AIシステム」を開発し、これが経験豊富な内視鏡専門医のスキルに匹敵する優れた診断精度であることを実証。この成果が米国の国際的な消化器内視鏡雑誌である「Gastrointestinal endoscopy」に掲載されることが、2019年9月25日に承認されました。

 食道がんはわが国で年間に約23,000人がかかり、約12,000人が亡くなっており※1、その数は決して少なくありません。高齢化の影響を受けて、増加傾向にあります。
 かつて食道がんの治療成績は極めて不良でしたが、近年、内視鏡診断や治療法の進歩によりかなり改善してきました。しかし、すべてを合わせた食道がん患者の5年生存率は40%程度とまだ不十分であり、さらなる改善のためにはがんの早期発見が重要です。そのためには内視鏡診断精度の向上が望まれますが、早期の食道がんはわずかな変化しか示さず、外見上、正常な食道と区別がつきにくく、通常の白色光で観察する内視鏡検査では見落とされることもあります。これに対して近年では狭帯域光※2による観察や拡大観察※3といった新しい方法が開発され、これらを用いると診断精度は向上します。しかし、これらの手法を使いこなすには高度に専門的な知識や経験、技術を要し、実際の普及率は半数程度にとどまっています。

 そこで、高度な専門技術にも対応し、食道がんの診断を自動で行う「内視鏡診断AIシステム」を当センターで開発しました。このシステムは、豊富な治療実績※4から得られた約17,000枚の食道がん内視鏡画像と、がんではない約5,000枚の内視鏡画像をディープランニング手法※5で学習するものです。AIによる食道がん診断は実際の内視鏡検査と同じ手順で行われ、まず白色光もしくは狭帯域光※2による拡大しない通常の観察を行って、正常な食道の中からがんを疑う生体の変化を拾い上げます。次により疑わしい生体の変化があれば狭帯域光※2観察を用いた拡大観察※3に切り替えて精査し、それが本当にがんであるのか診断します。

 AIの診断精度を検証するため、①食道がん、②食道がんとよく似た変化が認められるが、がんではないもの、③正常な食道、の3種類が含まれた135例の画像セットを用意し、AIと15人の内視鏡専門医の診断を比較しました。まず、狭帯域光※2観察を用いた拡大しない通常の観察ではAIはすべてのがんの拾い上げに成功し(感度100%)、正常な食道をすべて正常と正しく判断していました(正常食道の特異度100%)。次に狭帯域光※2観察を用いた拡大観察※3による精査の結果ではAIは98%のがんを正しく診断し(感度98%)、15人の専門医の平均成績(感度83%)を大きく上回りました。
 上記①,②を含めた全体の正診率でもAIは83%と専門医平均の78%を上回りました。さらに、白色光による通常観察においても、拡大しない通常の観察でのがんの拾い上げは感度90%と、AIの成績は良好でした。これらの結果は狭帯域光※2観察や拡大観察※3などの高度な専門技術の有無に関わらず、AIシステムが有用であることを示唆しています。

 近い将来このAIシステムが実用化されれば、すべての内視鏡検査で経験豊富な専門医と同等の診断サポートが得られ、医師の経験に関わらず高度な診断が提供可能となります。結果、早期の食道がんの見落としが減るほか、不要な組織生検が減ることで、検査を受ける患者の負担軽減につながります。
今後、この技術の普及により内視鏡診療全体の水準を高く保ち、食道がんの治療成績の更なる向上や、体への負担の少ない内視鏡治療への適応例の増加が期待されます。

 

※1 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」より引用。年間食道がん罹患数は22,710人で、内訳は男性19,067人、女性3,693人(2014年地域がん登録全国合計値)。年間食道がん死亡数は11,568人で内訳は男性9,580人、女性1,988人(2017年)。

※2 狭帯域光観察は粘膜表面の細かな構造や微小な血管のコントラストを強調した観察が可能とする技術。消化管の観察に用いる光の波長を適切に短くする(狭帯域特性に変更する)ことで、がん内部の拡張した血管が強調され、食道がんが茶色の領域(Brownish area)として視認されやすくなる。

※3 拡大観察では、スコープの先端に取り付けた2枚のレンズを調整することで、光学的に拡大して対象物を観察する。狭帯域光観察と併用することで、より細かな表面構造や血管が評価可能になり、腫瘍と非腫瘍を見分ける精度が向上することが多くの研究で報告されている。

※4 当センターで過去10年以上にわたって蓄積された内視鏡画像を使用した。当センターは食道がんの内視鏡的食道粘膜切除手術等において日本で第1位(2017年度)の治療実績を有する。これは「病院情報局」2017年度 傷病別全国統計 食道の悪性腫瘍(頸部を含む)の内視鏡的食道粘膜切除等を行った患者数で、2019年2月13日に厚生労働省の診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会から公表された、平成29年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告データをもとに算出した。

※5 ディープランニング(深層学習)とはAIの学習方法の一つ。ディープランニングにより、AIは与えられた画像データから、がんに見られる規則性や判断基準を自ら導き出すことが可能となる。今回のAIシステムはディープランニングの手法の一つであるコンボルーショナルニューラルネットワーク(CNN)を用いて構築された。ニューラルネットワークとは人間の脳回路をモデルにしたアルゴリズムのことで、CNNは特に画像認識に優れる。

 

詳細はこちら

 

【お問い合わせ先】

TEL 06-6945-1181(内線5121)

事務局 広報企画グループ

受付時間:平日9:00~17:30

関連サイト

センター
広報誌

  • 病院サイトへ
  • 交通アクセス
総合受付06-6945-1181 月曜日~金曜日(祝日除く) 午前9時~午後5時30分