病院サイトへclick
研究所

がんの早期診断に有効なマーカーの検索、また化学療法や免疫療法、放射線療法などに抵抗性のがんも含めた新たな治療法の開発を行います。いずれも高度な基礎研究から臨床応用へと発展させることにより府民の健康と、ひいては我が国、世界のがん患者への貢献を目指します。

臨床研究
管理センター

当センターの基本方針のひとつである「先進医療の開発と実践」を実現するために、企業主導および医師主導の開発治験を推進し、当センター独自の臨床研究の支援を行っています。また2018年からは、認定臨床研究審査委員会を置き、センター内外の特定臨床研究の審査も実施しています。

次世代がん医療
開発センター

患者さんの生体試料などの収集や提供(Cancer Cell Portがんバンク)、治験や臨床研究にかかる支援や外部との共同研究の誘致などの支援活動を通じて、病院や研究所との架け橋となり、基礎研究や臨床研究の推進・普及のために活動しています。

がん対策センター

1962年から継続している大阪府がん登録を基盤に、大阪府がん対策推進計画など、科学的根拠に基づくがん対策の立案および進捗管理で大阪府と協働することに加え、病院や研究所等とともに大阪国際がんセンターを構成する柱の一つとして、その理念の実践に取り組んでいます。

活性酸素の消去が糖鎖によって制御されるメカニズムを発見~新たな肺がん治療の開発へ希望~

Press Release

2023年2月16日

 

活性酸素の消去が糖鎖によって制御されるメカニズムを発見

~新たな肺がん治療の開発へ希望~

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 大阪国際がんセンター(以下、当センター)の谷口直之研究グループ(糖鎖オンコロジー部)はこの度、日本医科大学、大阪大学、広島大学、岐阜大学、兵庫医科大学の研究グループと共同で、活性酸素を消去するタンパク質(スーパーオキシドジスムターゼ)のひとつであるSOD3がコアフコースという糖鎖によって制御されることを明らかにしました。その研究結果が、先日、国際的な研究学術誌 Antioxidants & Redox Signalingに掲載されました※1。なお、この研究は当センター糖鎖オンコロジー部の大川祐樹研究員および当時研修生だった北野真郷氏が中心になって行われました。

 私たちは酸素を吸って生命を維持しており、酸素はとても大事ですが、生体の中では不安定で、ほかの物質と反応しやすい活性酸素になります(産生系)。また一方で、生体の中には産生された活性酸素を消去する仕組みもあります(消去系)。活性酸素は産生系と消去系がバランスをとって、増え過ぎないように調節されていますが、そのバランスが崩れ活性酸素が増えてしまうと、身体の細胞が傷つき、がんや様々な病気につながることがわかっています。ヒトはそれらの活性酸素を消去するために体内にスーパーオキシドジスムターゼというタンパク質を持っています。SOD1、SOD2とSOD3の3種類が存在しており、中でもSOD3にはヘパリン結合部位があり、それを介して血管内皮細胞などの細胞表面に結合する一方で、血液中にも分泌されます。SOD3には他のSODにはない糖鎖を持っていますがその働きは今までよくわかっていませんでした。糖鎖はグルコースやマンノース、フコースなどの糖が鎖状に繋がったもので、タンパク質に付加することで、そのタンパク質の機能を制御します。

 今回、研究グループはコアフコースという糖鎖がSOD3のもつ活性酸素を消去する機能に必要であることを明らかにしました。SOD3のコアフコースの機能を明らかにするため、コアフコースを作るFUT8※2という酵素を実験的に欠失させた肺癌細胞を解析しました。この細胞では、FUT8を欠失していない細胞に比べて、SOD3の発現分泌が抑制されており、加えてSOD3の活性酸素の消去機能が著しく低下していました。また、SOD3の立体構造をコンピュータシミュレーションした結果、コアフコースがSOD3の活性酸素の消去に働く部位の立体構造を変化させ、その機能を制御する可能性を明らかにしました。さらに、SOD3が肺癌細胞の増殖を抑え、かつ、肺がん患者の血液中ではコアフコースが付加したSOD3が増加することなどから、コアフコースによるSOD3の機能制御が、肺がんの病状によく関与することを明らかにしました。研究グループは今後、これら結果を新しい肺がん治療法の開発に繋げるため、更に研究を継続していきます。

【お問い合わせ先】

TEL 06-6945-1181(内線5101/5104)

地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター

事務局 総務・広報グループ

受付時間:平日9:00~17:30

【注釈】

※1 Mary Ann Liebert, Inc,(アメリカ合衆国)より発行される抗酸化物質や酸化還元シグナルの研究分野をカバーする査読つきの科学雑誌。doi:10.1089/ars.2022.0010.

※2 コアフコース糖鎖を合成する酵素であるα1,6 フコース転移酵素

 

【図1】研究結果の概要

SOD3は活性酸素を消去する酵素であり、機能するにはコアフコースが必要であることを明らかにした。SOD3が肺がんなどのがん細胞の増殖を抑えることがわかった。

関連サイト

センター
広報誌

  • 病院サイトへ
  • 交通アクセス
総合受付06-6945-1181 月曜日~金曜日(祝日除く) 午前9時~午後5時30分