院内の専門家による相談 × 当事者グループ × 院外の専門家が相互に補完しながら、患者さんをサポート。
がんを告知されると、精神的ショックは計り知れません。そして、生活、家計、心理など、あらゆる面で不安になる人も少なくありません。その状況を和らげることができればと、大阪国際がんがんセンターでは3つの組織が活動中。
その現状について、下記の4人にそれぞれの立場でお話をしていただきました。
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患者会「1・3・5の会」
(2016年秋発足)
三木祥男・会長 -
NPO法人「つながりのひろば」
(2017年11月発足)
笹田友恵・理事長 -
大阪国際がんセンター がん相談支援センター
東山聖彦・センター長(副院長)
池山晴人・副センター長
- 患者会「1・3・5の会」(2016年秋発足)
三木祥男・会長 - NPO法人「つながりのひろば」(2017年11月発足)
笹田友恵・理事長 - 大阪国際がんセンター がん相談支援センター
東山聖彦・センター長(副院長)
池山晴人・副センター長
患者会「1・3・5の会」さんは、どのようなことをなさっているのでしょうか?
患者会の情報交換が、仲間の絆を築いてくれる
三木氏 がんを告知されると、生活が一変するのです。私の様に咽頭がんになると、しゃべりづらくなり、食事をするのも時間がかかり、仕事も変わりました。様々な変化にショックを受け、精神面で大きな負担となるのです。でも、患者会で、仲間の体験談や情報を交換すると、ダメージを受けた心を開くことができることもあるのです。
「治療を施しようがない」と医師から告げられ、1人で考え込み、ふさぎこんでいた70歳代の男性が、患者会を訪れて話をしているうちに「治療を続けてきたのに病院から見放された気がした。でも、野球好きの小学5年生の孫が、5年後、甲子園に出場する姿をどうしても見たい」と胸の内を明かし、周囲のメンバーの体験談を聞くうち、心が打ち解け「患者会に入会して良かった。これから、前を向いて生きてきたい」と、打ち明けられたこともありました。
希少がんの人同士の出会いの場にもなっているなど、患者会は、患者同士の情報交換によって、仲間の絆が築かれていく場になるのです。
NPO法人「つながり広場」さんは、どのようなことをなさるのでしょうか?
患者さまや家族が、生きがいを持った生活を
笹田氏 患者さんやご家族にとって、気軽に訪問し安心して語らいやサポートを受けることができる場作りを目指しています。
先日、大阪市内で行った市民生活を支援する催しでは、60歳代のがん患者さんのご遺族が「手術もできず、合う抗がん剤もなく、夫が亡くなりました。その後、生活が変わり、心が癒やされないのです」と話されました。そのような家族や、患者さんが、どのようにすれば、暮らしやすくなるかを認定看護管理者である私たちと共に考える場であるともに、時にはファイナンシャルプランナーなども紹介するなど、幅広いサポートをしていきます。
大阪国際がんセンターの「がん相談支援センター」の取り組みは、「つながり広場」さんの活動は重なることが多いのではないのですか?
「エビデンス」に基づいて、患者さまやご家族を支援
東山氏 私達は医療従事者の立場で、科学的根拠である『エビデンス』に基づいて、患者さんやご家族をお支えしています。患者会の「1・3・5の会」さんは、患者さんの『体験』から出てくるノウハウが、発揮されています。また、NPO法人「つながりの広場」さんは、『エビデンス』や『体験』に沿って、支援活動をされています。
今まで以上に、我々「相談支援センター」も、患者さんの『体験』を理解しながら、トータル的に患者さんのQOL(生活の質)を高めるよう努力をしています。
池山氏 本来「相談支援センター」はなくても良い病院でないといけないと思うのです。でも、やはり主治医に聞けない、誰にも相談できないということもあります。ですから、この病院に関わっていない人でも、「相談支援センター」へは、匿名で相談して頂くことができるということも、知っておいていただきたいことです。広く支援していくのですから、様々な重なりはあってもよいと思います。
「がん相談支援センター」では、どの様な相談が、寄せられますか?
「治療を頑張ってきたのに・・・」「診療費が不安」
池山氏 「治療を頑張ってきたのに、抗がん剤の効果がない」「経済費、医療費が不安」「治療中、仕事を休んだが、また仕事を再開したい」「がんを告知された本人と、どう接すれば良いのか」「病について、インターネットで調べましたが、どうだろうか」「免疫療法とは、どういう治療なのか」などのジャンルを問わず、様々な質問をお受けしています。
「つながり広場」さんは、患者さんの生活にハリをもたらす様な活動をされているそうですね。
患者さまと病院スタッフ「大阪マラソン」を完走!
笹田氏 がんを克服した人、治療中の人、大阪国際がんセンターのスタッフら約40人(ボランティアを含む)によるランチーム「元気マラソン」の発足や練習のお手伝いなどをしました。そして、11月に開催された「大阪マラソンに参加して、全員完走できたのです。病院スタッフが、患者さんに支えられて完走したぐらいだったのですが、患者さんだけでなく、チームとしても自信につながったと思います。
※元気マラソンチームは、NPO法人「つながりひろば」の健康回復支援活動として、大阪国際がんセンターに限定することなく、より多くの支援者と参加者を募集しています。
患者会「1・3・5の会」さん、NPO法人「つながりひろば」さんと
「がん相談支援センター」は、今後も連携して活動されるということですが、
将来へ向けた抱負をお教え下さい。
互いの強みの発揮を/サポートの積み上げを
三木氏 「互いの強みを発揮しながら、同じ方向へ進んで行きたい。そして、「つながりひろば」さんには、客観的な目線で、支えて頂きたい。
笹田氏 がんという病気が特別なものではなくて、身近な病気として付き合えるよう、患者さんやご家族にとっての気軽に相談できる窓口を増やしていきたいですね。
池山氏 それぞれの役割のすみ分けでなく、サポートの積み上げをしていかなければならないと思います。互いに強みを積み上げていくのです。