2020/09/24

内視鏡手技動画

日本の消化管内視鏡技術はこの20年位の間に著しく進歩し、消化管がんに対する内視鏡診断や内視鏡手術は世界トップレベルとされる中、より低侵襲でがんの切除が可能となってきました。このたび、進歩した内視鏡の内容をより具体的にイメージしていただくために、実際の診断や治療の様子を短い動画に編集しました。ぜひご覧ください。

慢性萎縮性胃炎例の画像強調内視鏡

慢性萎縮性胃炎例の胃体部粘膜です。ピロリ菌に長期間感染した胃粘膜はこのように凹凸不整で発赤と白色が混じりあったような色調となります。最新の画像強調内視鏡では、ボタンひとつで粘膜の凹凸と色調が強調されて、胃炎による粘膜の変化がとらえやすくなります。体下部大弯には以前の内視鏡治療後の潰瘍瘢痕が観察されます。NBIという青と緑色の光を照射するモードにすると、粘膜の細かい模様や微小血管を詳細に観察することが可能となります。小さなポリープの部分では血管が不整となっていて、腫瘍性のポリープが疑われます。周囲の粘膜にはピロリ菌の感染に伴う、腸上皮化生という粘膜の変化が見られます。

 

隆起早期胃癌の画像強調内視鏡診断とESDによる切除

噴門下部の隆起型の早期胃癌です。癌と周囲の粘膜をNBIという画像強調法で観察して、病変の周囲に電気メスでマーキングをしていきます。マーキングをした後に、粘膜下に局注液を注入してから、粘膜を電気メスで切開していきます。スコープの位置を変えたりしながら、いろいろな方向から粘膜を切開し、つぎに透明な粘膜下層を白い固有筋層から剥離していきます。それを続けていくと、病変をきれいに一括して切除できます。切除した後に標本を組織検査して、癌がリンパ節に転移している危険性がないかどうかを確認し、内視鏡切除だけで治るのかどうかを判断します。

 

下十二指腸脚に存在した50mm大の十二指腸ポリープに対する浸水下内視鏡的粘膜切除術(Underwater EMR)の実際。

病変の範囲をわかりやすくするため通常の色調とは異なるNBI(狭帯域フィルター内視鏡)というモードで観察しながら処置をします。内視鏡から十二指腸内に水(生理食塩水)を注入し、スネアと呼ばれる道具に高周波電流を流して切除します。画面上、白色に見える領域が十二指腸ポリープで、一部茶色に見える部位ががんの恐れがあったため同部位を最初に切除し、病理検査に提出します。その後病変の手前側(口側)から順に少しずつ切除を繰り返し(分割切除と言います)、標本を回収します。一般的に分割切除は再発のリスクが高いですが、Underwater EMRだと再発のリスクも低いと考えています。また病理検査の正確性も問題になり得ますが、手術が必要かどうかは十分診断できると思われ、この症例の病理診断は前がん病変でした。治療中、若干の出血がありますが適宜止血をします。最終的に45分程度で約半周の切除を行いました。2ヶ月後、1年後の内視鏡による経過観察を行いましたが、病変の遺残はありませんでした。

 

横行結腸に存在した40mm大の大腸ポリープに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の実際

病変の範囲を明瞭にするため青色の色素を散布した上で処置をします。平坦な病変のため範囲がわかりにくいですが、正常の大腸粘膜に見られる横方向のシワ模様が消えて、内部にプツプツとした青色の色素のたまりが見られる領域が病変です。大腸の場合は切除標本の回収が不十分になる恐れがあり、平坦な形態の病変ではがんの恐れもあるため、正確な病理診断ができるESDを選択しました。内視鏡用の針を用いて病変の粘膜の下に液体を注入し、内視鏡用の電気メスで病変の手前側(肛門側)から粘膜を切開し、その下の透明な粘膜下層を剥離します。白く筋状に走る筋肉を切除すると消化管に穴が開いてしまい(穿孔)重篤な状態に陥る可能性があるため、穴を開けないようにわずか数ミリの粘膜下層を正確に剥離する必要があります。適宜止血しながら病変の周囲粘膜を全周に切開し、さらに剥離を進めて完全に切除します。切除した病変は回収し、病理検査に提出します。病理診断は癌ではありましたが、内視鏡治療のみで治る程度の癌で手術を回避できました。

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