整形外科(骨軟部腫瘍科)

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  • スタッフ紹介
  • 外来診療表

1. はじめに

大阪国際がんセンター整形外科は骨軟部腫瘍を専門的に診療しています。悪性の骨軟部腫瘍は希少な病気であるため専門に診療する医師や施設が少なく、情報も不足しています。このため、適切な治療が行われない場合も少なからずあります。また、希少であるため、診療が進歩しにくい状況にあります。我々は骨軟部腫瘍の中心的専門施設として、骨軟部腫瘍の患者さんに適切な医療を提供します。また、大阪大学医学部附属病院と連携し、より良い治療を追求し、その成果を発信することで、医学の発展に貢献します。患者さんに喜んでもらい医学の発展に貢献できることが我々自身の喜びであり、やりがいです。このホームページを通じて、患者さんやそのご家族さん、骨軟部腫瘍に慣れていない医療従事者の方々に骨軟部腫瘍について知っていただき、その診療が適切に行われ、発展することを願っております。
なお、自立したプロフェッショナルとしての整形外科医の養成を目指して、「大阪国際がんセンター・整形外科専門プログラム」を作成しています。プログラムの詳細はこちらをご覧ください。

2. 骨軟部腫瘍について

骨軟部腫瘍とは、骨や軟部組織(筋肉や脂肪組織、神経など)に発生する腫瘍のことです。骨軟部腫瘍は良性と悪性とその中間に分けられます。悪性の骨軟部腫瘍のことを肉腫と言います。肉腫の特徴として、①まれであること ②種類が多いこと ③疾患特異的遺伝子異常を認めるものが多いこと ④様々な年齢に発症すること ⑤様々な部位に発生することがあげられます。

①まれである

骨に発生する肉腫は人口10万人当たり年間で1.0人、軟部組織に発生する肉腫は年間3.5人と報告されています。一方で、罹患率の高いがんである大腸癌は人口10万人当たり年間約120人発生するというデータがあります。肉腫は希少であるため、診療データが集まりにくく、治療が発展しにくいという問題があります。

②種類が多い

骨や軟部組織に発生する腫瘍の種類は非常に多く、良性悪性を合わせると約200種類あります。悪性の肉腫だけでも、70種類以上あることから、その一つ一つの肉腫は極めてまれです。このため、病理診断も骨軟部腫瘍の専門病理医でなければ診断が難しい場合も少なくありません。

③疾患特異的遺伝子異常

骨軟部腫瘍には疾患特異的な遺伝子異常が判明しているものが数多くあります。その多くは染色体転座による融合遺伝子です。例えばユーイング肉腫では11番染色体と22番染色体の相互転座によってEWSR1-FLI1という融合遺伝子が生じ、これがユーイング肉腫の発生の原因となっていることが知られています。融合遺伝子以外にも特定の遺伝子の変異や特定の遺伝子領域の増幅が認められる腫瘍が知られています。これらの遺伝子異常は診断に役立っており、一部の腫瘍では異常な遺伝子産物に対する阻害剤が治療に応用されています。

④様々な年齢に発症

疾患によって好発する年齢が様々です。骨肉腫やユーイング肉腫、横紋筋肉腫は小児に多く、滑膜肉腫は、20代から40代の若年成人に多く、脊索腫、軟骨肉腫、脂肪肉腫、悪性線維性組織球種といった肉腫は高齢者に多く発生します。様々な年齢に発症しするため、患者さん毎に抱える社会的問題もさまざまです。当院ではとくに社会的問題が多くなりやすい思春期・若年成人(AYA:adolescent and young adult)の患者さんに対しAYAサポートチームが妊孕性、学業、仕事、子育てなどの社会的問題に対する支援を行っております。

⑤様々な部位に発生

骨や軟部組織は、体のあらゆるところに存在するため、骨軟部腫瘍は、あらゆる部位に発生します。悪性軟部腫瘍では上肢や下肢が50%と最も多いですが、体幹壁や後腹膜、腹部内臓に40%、頭頚部に10%が発生すると報告されています。様々な部位に発生するため、様々な診療科が治療に関与する必要があります。このため、骨軟部腫瘍の診療には、さまざまな診療科や多くの職種の専門家が連携して治療を行うこと(Multidisciplinary teamによる治療)が多くのガイドラインで強く推奨されています。

3. 対象疾患:代表的な疾患について、紹介します。各疾患名をクリックしてください

横紋筋肉腫骨外性骨肉腫類血管腫型線維性組織球腫(AFH)滑膜肉腫明細胞肉腫CIC再構成肉腫血管肉腫後腹膜肉腫
(以下準備中)
骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、脊索腫、骨軟骨腫、内軟骨腫、類骨骨腫、非骨化性線維腫、線維性骨異形成、単発性骨嚢腫、動脈瘤様骨嚢腫、転移性骨腫瘍、脂肪腫、デスモイド、孤発性線維腫、IMT、腱滑膜巨細胞腫瘍、血管腫(血管奇形)、グロムス腫瘍、平滑筋肉腫、神経鞘腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、類上皮肉腫、PMT、ASPS、粘液腫、筋上皮腫、BCOR遺伝子異常肉腫

4. 診療内容

4-1.診療の流れ

まず、臨床所見や画像血液検査から、明らかな良性であれば、経過観察を基本としますが、症状がある場合などは、腫瘍掻爬や辺縁切除という方法で手術をします。悪性の可能性がある場合は、腫瘍の一部を採取する生検を行い、病理検査で診断を確定します。悪性であれば、診断に従い病期評価(ステージング)を行い、Multidisciplinary team(MDT)による検討によって治療方針を決定します。

4-2.臨床画像診断
骨腫瘍の場合は、臨床画像診断で良悪性の鑑別が可能な場合が比較的多くあります。一方で、軟部腫瘍の場合は、ほとんどの場合、画像での良悪性の鑑別は困難であり、その多くで生検が必要となります。特に5cm以上の軟部腫瘍や数ヶ月で増大する軟部腫瘍は悪性の可能性が高く、生検がすすめられます。
4-3.生検
悪性の可能性がある場合は、腫瘍の一部を採取する生検を行い、病理検査にて診断を確定し、適切な治療方法を考えます。生検には針生検と切開生検という方法があります。針生検は侵襲が小さいという利点がありますが、採取できる量が少なく診断が困難となる場合があり、症例に応じて針生検と切開生検を使い分けます。骨軟部腫瘍は専門の病理医でなければ診断が難しい場合が多く、骨軟部腫瘍専門の病理医がいる、もしくは専門病理医にコンサルトができる施設で生検を行うことが推奨されています。画像検査や生検を行わずに、適切な切除縁について考慮することなく良性と考え、腫瘍を摘出した後に悪性と診断されることをUnplanned excision(無計画手術)と言い、避けるべきとされています。例外的に、生検が難しい2㎝以下の表在性の軟部腫瘍に対し、腫瘍全体を切除して病理診断を行う切除生検が許容されています(軟部腫瘍ガイドラインより)。万が一、Unplanned excisionを受けた場合は、追加で広範切除が必要となる場合が多く、専門施設で診療を受けることが薦められます。
4-4.病理診断
H.E.染色による細胞形態、免疫染色による分化傾向や特定のタンパク発現、遺伝子検査などを行うことによって病理診断を行います。腫瘍の診断や、核分裂数、壊死の割合などによって病理学的悪性度Gradeが決定されます。
骨軟部腫瘍専門とする病理医でなければ診断が難しい場合も多く、一般の病理医と専門病理医の診断の不一致は10%程度の頻度で生じるという報告もあります。
4-5.病期分類

肉腫の病期分類はT(原発腫瘍の大きさ)N(リンパ節転移)M(遠隔転移)に加えて、G(病理組織学的悪性度)の因子が加わることが特徴です。軟部肉腫では、低悪性度G1ではStageⅠになり、高悪性度のG2およびG3では、原発腫瘍の大きさが5cm以下のものがStageⅡ、5cm以上がStageⅢとなり、リンパ節転移や肺などの遠隔転移があるものはStageⅣとなります。骨の肉腫では、低悪性度のものをStageⅠ、高悪性度でSkip lesion(同一骨内の離れた部位の病変)がなければStageⅡ、Skip lesionがあればStageⅢ、肺やその他の部位に転移があるものをStageⅣと分類されます。当院における各病期の基本的な治療方針は下図のようになります。

4-6.手術
骨軟部腫瘍の手術方法は三つに分類されます。一つ目は腫瘍内切除や腫瘍掻爬と呼ばれる方法で、これは腫瘍の内部を通過し腫瘍を分割して切除する方法です。悪性腫瘍にこのような切除を行うと、再発は必発で、腫瘍を周囲組織に広げてしまうことになり、さけるべき手術方法になります。二つ目は辺縁切除という方法で、腫瘍の被膜で切除する方法です。良性の軟部腫瘍の多くはこのような方法で切除しますが、悪性腫瘍の場合は被膜と思われる部分の外まで腫瘍が浸潤していることが多く、再発することが多いと報告されています。三つ目は広範切除という方法で、腫瘍を正常組織で包み、腫瘍を見ないように切除する方法で、悪性の骨軟部腫瘍で推奨されている手術方法です。周囲の正常組織を切除するため、手術前に画像で腫瘍の広がりを精査し、生検で悪性であることを確認しておかないと実施することは難しく、手術前にMRI画像をとり、病理診断をつけておくということが必要になります。悪性骨腫瘍の場合は、広範切除後に再建が必要になることが多く、再建方法として、腫瘍用人工関節、自家処理骨移植(術中体外放射線照射処理骨、液体窒素処理骨など)、血管柄付き腓骨移植などの方法があります。各再建方法によって長所と短所があり、腫瘍の部位や状態などによって再建方法を決定します。神経や血管が腫瘍に巻き込まれている場合やよい再建方法がない場合など、患肢温存手術が難しい場合は、切断術を選択することもあります。
4-7.化学療法

悪性骨軟部腫瘍の中でも、高悪性度骨肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫(胞巣型・胎児型)は化学療法の感受性が高く、それぞれの疾患ごとに化学療法と手術や放射線を組み合わせた治療戦略が確立しています。その他の多くの軟部肉腫はまとめて臨床試験が行われることが多く、非小円形細胞軟部肉腫して治療体系が確立しており、年齢や病期分類に応じて化学療法の適応が決定されます(上図)。また、中には特定の薬剤が有効であるまれな軟部肉腫もあります。

4-8.放射線治療
横紋筋肉腫(胞巣型・胎児型)やユーイング肉腫は放射線感受性が高く、化学療法と放射線治療で根治できることもあります。その他の多くの肉腫では、通常の放射線治療のみで根治することはあまり期待できません。しかし、手術前後に放射線治療を行うことで再発率が下がるという報告があります。また、症状の緩和やQOL維持のために放射線治療を行うことも多いです。腫瘍の発生部位や広がりから根治をめざした切除ができない肉腫に対して、粒子線治療(重粒子線治療、陽子線治療)が保険適応になっています。粒子線治療は、以前には根治が困難であった切除不能肉腫に対し、根治できる可能性を提供する画期的な治療法ですが、再発や合併症もあり、切除に代わる治療法には至っていません。当科では隣接する大阪重粒子線センターをはじめ全国の粒子線治療施設とも連携をとり、難治性肉腫の治療成績向上に取り組んでいます。

5. 当科の取り組み

5-1.多診療科多職種チーム医療

肉腫は様々な部位に発生し、手術や化学療法、放射線治療を駆使して治療を行う必要があるため、各臓器の専門医や各職種の専門家によるチーム医療が必要です。当院はがん専門病院であり様々ながんのスペシャリストが集結しており、各臓器がん各職種のスペシャリストが定期的に集まり、肉腫カンファレンスを行い、治療が困難な肉腫症例にもよりよい治療の提供を目指し実施しています。

5-2.3Dプリンタによる立体造形モデルやナビゲーションを用いた骨軟部腫瘍手術

骨軟部腫瘍の手術では、腫瘍を残すことなく正確に切除し再建手術を行うことが求められます。ところが、骨盤腫瘍など複雑な形状の場合、CTやMRIの2次元データのみでは腫瘍の解剖学的位置を正確に把握することが難しく、正確な手術が困難でした。当科では3Dプリンタによる立体造形モデルやナビゲーションを用い、手術中にリアルタイムに正確な解剖学的位置を把握し、より正確で安全な腫瘍切除と再建手術を行うように取り組んでいます。

6. 当科の診療実績 2020年度(2020年4月~2021年3月)

手術件数:266件
手術内訳:良性102件・悪性127件(軟部78件・骨30件・転移19件)
外来院外初診患者数:583人
外来院内初診患者数:587人
入院件数:709件
化学療法実施患者数:93人
セカンドオピニオン件数:21件

7. われわれの治療成績

7-1.骨肉腫

大阪大学整形外科腫瘍グループ独自の化学療法プロトコールOOSDを用いて良好な成績を上げています。1997年から2016年までに当センターを含む大阪大学整形外科腫瘍グループで治療した高悪性度骨肉腫のうち40歳以下の四肢発生で初診時転移の無い95人の5年無病生存率は81%、5年生存率は95%でした。

7-2.後腹膜肉腫

2010年から2021年に当センターで治療した後腹膜肉腫201人の5年生存率は74.7%で、組織別には高分化型脂肪肉腫(WDLPS)94.5%、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)70.8%、平滑筋肉腫(LMS)67.8%となっています。

8. 研究活動

骨軟部腫瘍の患者さんに現状の治療よりも良い医療を提供できるようにするために、研究活動はわれわれの重要な活動の一つです。骨軟部腫瘍を多く診療している施設としての使命と考えています。

8-1.論文
2021年 英文17編
8-2.学会発表
2021年 国内学会12件 国際学会1件
8-3.基礎研究 2021年実施中の基礎研究
  • ・肉腫におけるフェロトーシスの関与
  • ・肉腫由来オルガノイドパネルの構築
  • ・肉腫新規融合遺伝子の探索
  • ・軟骨肉腫の全ゲノム解析による予後因子の検討
8-4.治験 2021年実施中の治験
  • ・進行再発骨肉腫患者を対象としたTAS115の第Ⅲ相臨床試験
  • ・再発性難治性滑膜肉腫を対象とした放射性同位元素標識OTSA101-DTPAの第Ⅰ相臨床試験
  • ・固形がん患者を対象としたTAS115とピオグリタゾン・ロサルタン・ミダゾラムとの薬物相互作用試験
  • ・腱滑膜巨細胞腫を対象とした日本でのPexidartinibの第Ⅱ相臨床試験
8-5.臨床研究(介入あり)
  • ・JCOG1802 進行軟部肉腫に対する二次治療のランダム化第 II 相試験
8-6.臨床研究(介入なし)
  • ・JMOG多施設共同研究 など多数

スタッフ紹介



職 名 氏 名 専門分野 認定医/専門医/指導医
部長 竹中 聡 骨軟部腫瘍 日本整形外科学会専門医
緩和ケア研修修了医
副部長兼
リハビリテーション科部長
田宮 大也 骨軟部腫瘍
がんリハビリテーション
肉腫基礎研究
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会運動器リハビリテーション医
緩和ケア研修修了医
がんのリハビリテーション研修修了医
新リンパ腫瘍研修修了医
日本リハビリテーション医学会認定臨床医
副部長 若松 透 骨軟部腫瘍 日本整形外科学会専門医
緩和ケア研修修了医
副部長 角永 茂樹
診療主任 渡邊 牧代 日本整形外科学会専門医
緩和ケア研修修了医
医療リンパドレナージ医師対象理論講習会修了医
診療主任 中井 翔 骨軟部腫瘍 日本整形外科学会専門医
緩和ケア研修修了医
レジデント 吉田 英人
レジデント 高見 晴奈
レジデント 山田 慶貴

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外来診療表

診察室
AM PM AM PM AM PM AM PM AM PM
54 院外初診 院内初診 / 院外初診 院外初診 ☆荒木
(第1週)
院外初診 院内初診 / 院外初診 院外初診
55 若松 角永 院内初診 / 院外初診 院外初診 田宮大 竹中
56 院内初診 / 高見   中井翔
58 院内初診 / 鈴木り  

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☆は非常勤医師です

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