放射線腫瘍科
- 診療内容 / 実績
- スタッフ紹介
- 外来診療表
ほぼすべてのがんを対象に、患者さんにとって最適な放射線治療を提案します。
放射線治療はがん病巣に放射線を照射することによって、がんを死滅させる治療です。放射線治療は、患部を切除しないため、手術と比較して身体への負担が少なく、機能や形態の温存が可能という特徴があります。昨今の技術革新により、従来法に比べて病巣への放射線を集中させる高精度放射線治療が可能となり、より効果的で副作用の少ない治療ができるようになってきました。また放射線治療は、化学療法を併用した化学放射線療法、手術をサポートする術前・術後照射、痛みを和らげる緩和照射など、がん治療において幅広い役割を担っており、年々需要は増加しています。
当院では直線加速器(リニアック)3台による外部照射とリモートアフターローディングシステム(RALS)を用いたイリジウム192による子宮頸がんの腔内照射を行っています。他の診療科と連携し、集学治療を行う一方、病病連携・病診連携を通じて院外の患者さんの治療も積極的に受け入れており、さまざまな需要に対応できるようにしています。
また当科ではお仕事が終わられてから治療が受けられるように治療時間を延長しています。仕事に支障をきたさないように治療予約時間の調整も行なっています。 お一人で通院が出来ない患者さんに付き添われる、「患者支援者」の方の就労も継続出来るように配慮いたします。 詳しくは放射線腫瘍科にお問い合わせください。
- 直線加速器(リニアック)による外部照射
- 体の外から放射線を当てる治療法です。通常の三次元放射線治療に加えて、高精度放射線治療も積極的に行っています。強度変調放射線治療(IMRT)、IMRTの発展型である強度変調回転放射線治療(VMAT)や、定位放射線治療(SRS・SRT)、体幹部定位放射線治療(SBRT)、画像誘導放射線治療(IGRT)を実施しています。
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- イリジウム192による腔内照射(RALS)
- 子宮腔内及び膣に器具を挿入し、リモートアフターローディングシステム(RALS)を用いて器具内の特定位置に線源(放射線を発する物質)を挿入して一時的に留めることにより、がんを集中的に治療します。外部照射と組み合わせて治療を行います。主な対象は子宮頸がんです。
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- 強度変調放射線治療IMRT/強度変調回転放射線治療 VMAT
- 放射線の強度をコンピューターで制御し、病巣に多くの線量を集中させつつ周囲正常組織への被曝線量を低減させます。腫瘍制御率の向上と副作用の軽減が期待できます。主に原発性脳腫瘍,頭頸部がん、肺がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、子宮頸がんなどを対象としています。
- 定位放射線治療 SRS/SRT
- 転移性脳腫瘍や一部の原発性脳腫瘍が適応疾患です。放射線を多方向から腫瘍に集中して治療(いわゆるピンポイント照射)するため、高い治療効果・正常脳への副作用軽減が期待できます。当院ではHyperArc(TM)を導入し、多発の転移性脳腫瘍に対しても治療を行います。患者さんの病状によっては、手術や全脳照射が優先される場合があります。
- 体幹部定位放射線治療 SBRT
- 上記の定位放射線治療を体幹部の腫瘍に応用したものです。主に早期肺がん、肝がん、少数個の転移性肺腫瘍・肝腫瘍でサイズの小さなもの(5cm以内)を対象としています。肺や肝臓は呼吸で動くため、4D-CT撮像やマーカ留置などを行い、呼吸による腫瘍の移動量を考慮した治療を行います。放射線を多方向から腫瘍に集中して治療(ピンポイント照射)するため、高い治療効果・正常組織(肺や肝臓)への副作用軽減が期待できます。特に早期肺がんでは、年齢や合併症により手術が難しい方や手術を希望されない方にとって、有効な治療選択肢の一つです。
- 化学放射線療法
- 放射線治療の効果を高めるために、化学療法(抗がん剤)と組み合わせた治療を行います。当センターでは関連各科と連携し、患者さんにとって最適な治療を提案します。対象は、頭頸部がん、肺がん、食道がん、膵臓がん、子宮頸がんなどです。
- 術前照射・術後照射
- 手術の前後に放射線治療を組み合わせることで、手術をサポートします。効果を高めるために、化学療法を組み合わせる場合があります。あらかじめ腫瘍を小さくして手術しやすい環境を作る役割や、手術した部位周辺の再発を減らす役割があります。当センターでは関連各科と連携し、患者さんにとって最適な治療を提案します。主に術前照射は膵臓がん、食道がん、直腸がん、術後照射は頭頸部がん、子宮頸がん、原発性脳腫瘍、骨軟部腫瘍などに実施します。
- 緩和照射(進行がん)
- 症状を和らげることを目的とした外部照射を行います。主に骨転移による疼痛、腫瘍による疼痛・呼吸苦・嚥下困難(飲みこみにくさ)・出血などを対象としています。
診療実績(2019年度)
外部照射治療件数
年間治療件数 |
2,064 |
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IMRT(VMAT) |
957 |
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肺 | 肝臓 | 脳 | 計 | |
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定位照射 | 85 | 18 | 184 | 290 |
192lr腔内照射 | 32 |
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原発巣別(新患)
脳・脊髄 | 頭頸部 | 食道 | 肺・気管・縦隔 | 乳腺 | 肝・胆・膵 | 胃・小腸・結腸・直腸 |
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26 | 192 | 90 | 228 | 336 | 111 | 55 |
婦人科 | 泌尿器系 | 造血器リンパ系 | 皮膚・骨・軟部 | その他 | 小児例(20歳未満) | |
73 | 160 | 59 | 54 | 39 | 0 |
治療期間
治療日数は目安です。患者さんの病状によって異なる可能性があります。
対象となる疾患 | 治療法 | 入院・外来 | 治療日数 |
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原発性脳腫瘍 | IMRT/VMATまたは三次元放射線治療 | 外来または入院 | 5~6週間 |
転移性脳腫瘍 | 定位放射線治療(SRS・SBRT)もしくは全脳照射 | 外来または入院 | 1~5日または2週間 |
頭頸部がん | IMRT/VMAT | 外来または入院 | 7~8週間 |
I期喉頭がん | 三次元放射線治または IMRT/VMAT | 外来 | 7週間 |
乳がん(術後) | IMRT/VMATまたは三次元放射線治療 | 外来 | 4~6週間 |
早期肺がん | 体幹部定位放射線治療(SBRT) | 外来 | 1~2週間 |
肺がん | IMRT/VMATまたは三次元放射線治療 | 外来または入院 | 4~7週間 |
食道がん | IMRT/VMATまたは三次元放射線治療 | 外来または入院 | 4~7週間 |
膵臓がん | IMRT/VMAT | 外来または入院 | 5~6週間 |
肝臓がん | 体幹部定位放射線治療(SBRT) | 外来 | 1~2週間 |
前立腺がん | IMRT/VMAT | 外来 | 8週間 |
子宮頚がん | 三次元放射線治療またはIMRT/VMAT ±腔内照射 | 外来または入院 | 7~8週間 |
子宮頚がん(術後) | IMRT/VMAT | 外来または入院 | 5~6週間 |
緩和照射(進行がん) | 三次元放射線治療 | 外来または入院 | 1日~4週間 |
*IMRT/ VMATは強度変調放射線治療/強度変調回転放射線治療を指します。
放射線治療の進め方
放射線治療の流れは、①「診察」、②「治療計画用のCT撮影」、③「治療計画」、④「治療(放射線の照射)」、⑤「経過観察」となります。
- ①診察
- 診察と種々の検査結果から、放射線治療の適応を判断し、治療方針(身体のどの部位にどのくらいの放射線を何回照射するのか、等)を決めていきます。また、治療方法と予想される効果および副作用について説明します。
- ②治療計画用のCT撮影
- 治療時の体位を決めて、治療計画のためのCTを撮影します。治療は毎回同じ姿勢で行わなければならないため、身体の一部を固定するための固定具を用いることがあります。
CTを撮影した後、治療時に同じ姿勢を再現できるよう皮膚や固定具に消えにくいインクで「しるし」をつけます。治療初日までの間に「しるし」が消えないようにご注意ください。
- ③治療計画
- 撮影したCTの画像を用いて、コンピューター上で放射線を当てる方向、当てる量を設定して線量の計算を行います。医師と専門の知識を有した医学物理士が相談をしながら治療計画を作成します。 また、安全で正確な治療を行うために多くの検証作業を行います。そのため、高精度放射線治療の治療計画は、1週間ほどの時間がかかります。
- ④治療
- 通常の外部照射であれば1回の治療時間は10~15分間程度です。定位放射線治療などの場合は、20~30分かかることもあります。放射線が実際にでている時間は数分で、放射線の照射中に痛みなどを感じることはありません。照射中は治療用の寝台上で動かず安静にしていただく必要があります。 治療期間・回数は疾患、病状、治療部位等により異なります。通常1日1回の治療を月~金の平日毎日行い、数週間かけて治療を行っていきます。
<治療時の流れ> 入室、脱衣、寝ている姿勢を調整、位置合わせ、照射、着衣、退室。
- ⑤経過観察
- 治療期間中、放射線治療の効果や副作用等を見るための診察を週1~2回行います。 照射期間中は予約日以外でも必要に応じて診察を行いますので、体調不良など、相談したいことがある場合は申し出てください。その場合、初回に診察した主治医とは異なる医師の診察になる場合があります。 放射線治療終了後も定期的に診察を受けていただくことがあります。
看護と患者サポート
放射線治療を始められる方とご家族へ看護師からのメッセージ
放射線治療は毎日継続し、予定した回数の治療を受ける事が重要となります。 痛みなどの症状や放射線治療による副作用のために治療を中断したり延期したりすることがないよう、放射線腫瘍科医師や診療放射線技師と連携しサポートしていきます。放射線腫瘍科医師の初診後、治療を受ける時の姿勢や服装の説明など放射線治療に関するオリエンテーションを行います。治療を受ける際の姿勢や服装の説明や写真、ご希望があれば治療室内の見学もしていただくことで実際の治療の様子をイメージできるようにしています。 外来で通院治療される患者さんの場合は仕事や育児など生活スタイルの調整が必要となります。毎日継続できる方法を一緒に考えましょう。
☆治療部位に応じたケア☆
・頭部(脳) 頭部への照射は、治療開始当初に一時的に吐き気や嘔吐が出現する場合があります。出現した場合には薬物による症状緩和が出来ます。放射線治療による脱毛は、放射線を当てたところだけに起こります。頭部全体に放射線を当てた場合は、治療開始から2~4週間で髪の毛が抜け始め、個人差がありますが終了後数か月から1年で生え始めることが多いです。頭皮を保護する方法の紹介や当院が行なっているアピアランスケアのためのセルフケアブースでウイッグなどの紹介もしています。
・頭頸部(のど、舌など) 放射線と抗がん剤による化学放射線療法が中心となります。放射線治療による入院は必要ありませんが、抗がん剤治療に合わせて入院が必要で入退院を繰り返し約2か月間の治療となります。呼吸、発声、噛む事、飲み込む事など、日常生活に影響を及ぼす副作用が出やすい部位の治療です。口内の乾燥、唾液量の減少、粘膜炎が起こりやすくなります。口内の乾燥など症状に応じたうがい薬の作り方や、吸入器について説明を行います。食事に伴う痛みがある場合は痛み止めの使い方や食事形態の相談を行い、栄養状態を低下させないようサポートいたします。
・食道 治療範囲によっては食道粘膜炎や皮膚炎が出現します。食事の飲み込み時の違和感やつかえ感が出現し、食事摂取に影響を及ぼします。首や鎖骨周囲は衣類の摩擦により皮膚炎が悪化しやすいので注意が必要です。適切な衣類の紹介も行っています。食道粘膜炎に対しては粘膜を保護する薬や鎮痛剤を処方し、症状をコントロールいたします。吐き気や嘔吐により食事摂取量が低下した時は栄養補助食品の使用を提案したり、食事指導を行います。
・肺 治療範囲によっては食道粘膜炎や皮膚炎が出現します。食事の飲み込み時の違和感やつかえ感が出現し、食事摂取に影響を及ぼします。また、背中にも皮膚炎が出る場合があり、衣服の擦れに注意が必要です。痛みで食事摂取に影響を及ぼす場合は鎮痛剤の使用や、食事内容の工夫や調理方法などを一緒に考えていきます。
・乳腺 腋窩リンパ節郭清術を受けた方は手術をした側の腕を上げると痛みが起こることがあり、治療中に一定の姿勢をとるのが辛く感じるときがあります。そのような場合は診療放射線技師とともに、患者さんの苦痛が和らぐように事前に体位の工夫をします。皮膚と皮膚が接する部位や乳頭部の皮膚炎に注意が必要です。治療開始時期から適切なケアを行うことで症状の悪化を防げます。皮膚炎に対してご自身でケアが出来るように指導いたします。 またリンパ浮腫に関するご相談もリンパ浮腫療法士の資格を持つ看護師がお受けすることもできます。
・子宮 肌の露出を最小限にして治療が行えるよう心がけています。肛門部や外陰部の皮膚炎に対し陰部の皮膚を保護する方法などをご説明します。また下痢が出現した場合は食事の工夫などの説明も行います。
・前立腺 腸や膀胱にあたる放射線量を減らすため、照射前は膀胱内に一定量尿を溜めたり、排便・ガスのコントロールが重要です。看護師は便秘にならないような食事や日常生活の指導を行います。
・骨 骨転移に対する治療では、治療中の痛みを最小限にするために体の位置や治療時間に合わせた鎮痛剤の使用などを検討します。鎮痛剤を服用されている場合は「服用からどのくらいの時間で効果が出てきたか?」など聞き取りを行いながら鎮痛剤の変更や飲むタイミングなどを患者さんと相談していきます。
・放射線治療を受けながら社会生活を送られる方へ 放射線治療は副作用が比較的軽度で、放射線治療単独治療であれば通院での治療が可能です。治療時間も部位によっては10分~20分程度と短時間です。 初診時、看護師は患者さんに仕事を続けながら治療を受けられるかどうかの確認をします。また同時に患者さん自身が仕事と治療を両立する見通しが立てられるよう、今後の治療の予定や、治療時に出現する副作用についてお伝えし、その副作用への対処を患者さん自身で行えるように支援します。
スタッフ紹介
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主任部長
手島 昭樹
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副部長
小西 浩司
職 名 | 氏 名 | 認定医/専門医/指導医 |
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主任部長 | 手島 昭樹 | 日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医 日本医学放射線学会研修指導者 第一種放射線取扱主任者 |
副部長 | 小西 浩司 | 日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医 日本医学放射線学会研修指導者 |
副部長 | 森本 将裕 | 日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医 |
診療主任 | 金山 尚之 | 日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医 |
医員 | 井川 俊樹 | 日本医学放射線学会放射線科専門医 |
医員 | 虎谷 昌保 | 日本医学放射線学会放射線科専門医 |
レジデント | 田中 和典 | |
レジデント | 西 貴久 |
職 名 | 氏 名 | 認定資格 |
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副技師長 | 宮崎 正義 | 医学物理士 放射線治療専門放射線技師 第一種放射線取扱主任者 |
総括主査 | 谷口 真 | 放射線治療専門放射線技師 放射線治療品質管理士 第一種放射線取扱主任者 |
総括主査 | 上田 悦弘 | 医学物理士 第一種放射線取扱主任者 |
主任 | 上加世田 寛 | 放射線治療専門放射線技師 |
主任 | 大平 新吾 | 医学物理士 |
主任 | 五十野 優 | 医学物理士 治療専門医学物理士 |
正岡 祥 | 医学物理士 医療情報技師 医用画像情報専門技師 公認医療情報システム監査人補 |
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乾 翔輝 | 医学物理士 | |
新田 雄也 | 医学物理士 第一種放射線取扱主任者 |
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村田 誠也 | 第一種放射線取扱主任者 | |
谷口 礼実 | 医学物理士 |
外来診療表
診察室 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |||||
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AM | PM | AM | PM | AM | PM | AM | PM | AM | PM | |
1診 | ◎手島 | ◎森本 | ◎金山 | ◎小西 | ◎井川 | |||||
2診 | ◎虎谷 | 虎谷 | ◎田中 | 放射線腫瘍科 再診 | 西 | |||||
3診 | 井川 | 小西 | 手島 | 西 | 田中 | |||||
4診 | 小西 | 手島 | 虎谷 | 森本 | 金山 | |||||
5診 | 放射線腫瘍科 再診 | 堀 | 放射線腫瘍科 再診 | 放射線腫瘍科 再診 | 放射線腫瘍科 再診 |
◎は、初診対応です