腎臓がん
腎がんの解説
1. 腎がんとは
腎がんは尿を作る臓器である腎臓の中の尿細管細胞という細胞ががん化したものです。喫煙や肥満により腎癌の発症リスクが上昇するということや、遺伝的背景が腎癌の発症と関連すると言われていますが、確定的な腎がんの原因というのははっきりしていません。
2. 腎がんの症状
一般的に腎癌の症状は、「血尿」、「お腹にしこりを触れる」、「痛み」と言われており、このような症状があれば腎がんの検査を早急に受けていただく必要があります。腎がんは進行すると上記のような症状が出ることもありますが、早期の腎がんは全く無症状です。また、進行した腎がんでも全く症状がないこともあります。
3. 腎がんと診断するための検査/腎がんと診断された後に行う検査
腎がんを早期に発見するためには腹部超音波検査(エコー検査)が有用で、腹部超音波検査で腎がんが疑われたら、確定診断としてCT検査を施行します。腎がんを診断するためにはFDG-PET/CTの役割は限定的です。腎臓の良性腫瘍を疑う場合や、腎臓に発生した他のがん(悪性リンパ腫や他のがんの腎臓への転移)を疑う場合は針生検を行うこともあります。
画像や生検で腎がんと診断されたらCTやMRIで転移がないかを調べ病期診断を行い、病期に応じて治療方針を決定します。
腎がんの病期(ステージ) | |
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Ⅰ期 | ・腎がんの大きさが7cm以下で腎臓にとどまっている |
Ⅱ期 | ・腎がんの大きさが7cmを超えるが腎臓にとどまっている |
Ⅲ期 | ・腎がんが腎臓周囲の脂肪組織または静脈内に拡がっているが遠隔転移はない ・腎臓周囲のリンパ節に転移があるが遠隔転移はない |
Ⅳ期 | ・腎がんが腎臓周囲脂肪組織を超えて浸潤している(含:副腎) ・遠隔転移がある |
4. 腎がんの治療
III期までは手術による治療を考慮します。腎がんのみ切除して、正常の腎臓を温存することが可能な場合は腎部分切除術を行います。腎がんのみ切除することが困難な場合には腎全摘術を行います。殆どの腎がんの手術は小さな傷で行う腹腔鏡による手術で行いますが、最近ではロボットを用いて腹腔鏡手術を行う事が多くなっています。特に、腎部分切除術を行う場合は、ロボットを用いることで安全で低侵襲な手術を行うことができます。しかしながら、腎がんの拡がりなどがんの状態等を考慮して開腹手術を行う場合もあります。
大きな腎がんや、周囲へ拡がった腎がんの場合、薬物療法を行って腎がんを小さくしてから手術を行うこともあります。
また、手術で取り除いた腎がんの性質が悪いがんであると判断した場合、再発予防のため、1年間の薬物療法をお勧めすることがあります。
IV期でも遠隔転移がない場合、手術を行う場合があります。その場合、腎がんが浸潤した周囲の臓器や組織を一緒に切除します。切除が困難と判断された場合は薬物療法を行い、切除可能になれば手術を行うこともあります。
IV期で遠隔転移があればIMDC分類という予後を予測するための分類法を用いて、腎がんの予後を推測することができます。
IMDC分類の予後予測因子
- Karnofskyの一般全身状態スコアが80%未満
- 腎がんの診断から治療開始までが1年未満
- 貧血
- 補正カルシウム値の上昇
- 好中球数の増加
- 血小板数の増加
当てはまるものが一つもない→低リスク
当てはまる項目が1つ、あるいは2つ→中リスク
当てはまる項目が3つ以上→高リスク
腎がんに使用する薬剤は免疫療法と血管新生阻害剤が治療の中心となります。腎がんに対して初めて薬物療法を行う際、二つの免疫療法剤を組み合わせる治療法、あるいは血管新生阻害剤と免疫療法を組み合わせる治療法を行います。これらの併用療法が困難な場合は血管新生阻害剤治療のみを行うこともあります。腎がんに対して初めての薬物療法として使用できる治療法は以下の薬物療法があります。
腎がんの最初の治療法
二つの免疫療法の組み合わせの治療
- オプジーボ+ヤーボイ
血管新生阻害剤と免疫療法を組み合わせる治療
- レンビマ+キイトルーダ
- カボメティクス+オプジーボ
- インライタ+キイトルーダ
- インライタ+バベンチオ
血管新生阻害剤単独療法
- カボメティクス
- ヴォトリエント
- スーテント
上記のどの薬物を選択するかはIMDCリスク分類を参考に、患者さん一人一人のの全身状態や年齢、患者さんのご希望を考慮して決めていきます。
最初の治療で効果がなかった場合や、副作用で継続ができなくなった場合、今まで使用していなかった血管新生阻害剤や免疫療法、あるいはmTOR阻害剤(アフィニトール、トーリセル)といった薬剤を使用していきますが、二つの薬剤の組み合わせの治療ではなく一つの薬剤を単独で使用していきます。