乳がん
1. 乳がんとは?その特徴は?
乳がんは乳房(胸の中の組織)にできるがんの一種です。主に乳管(乳腺管)や乳腺小葉(腺房)から発生します。女性に多く見られますが、男性にも稀に発症することがあります。
乳がんの5~10%は遺伝性の乳がんと言われています。そのうちの約半分は、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)です。HBOCは、BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子にバリアント(変異)が見つかることで診断されます。他の遺伝子が原因となる遺伝性乳がんもあります。
2. 症状
乳がんの初期の症状には、乳房にしこりや腫れ、皮膚の変化(赤みやくぼみなど)、乳首からの分泌物(血液など)がありますが、ほとんどがしこりであり、月に一度の乳房セルフチェックをおすすめします。乳房の痛み・張り感の多くは女性の体で一般的に見られる正常な反応です。乳房にしこりがあっても、必ずしも乳がんとは限りません。症状がある場合は、乳腺科での専門的な検査が必要です。
3. 診断・検査
乳がんの診断には、マンモグラフィー(乳房X線検査)、乳房超音波(エコー)検査、乳房MRIなどの画像検査が使われます。精査が必要なしこりや乳房微細石灰化を認めれば、細胞診や、乳房生検にて組織を採取して病理検査を行います。これらの検査を通じて、乳がんの有無を調べます。
4. 治療
乳がんの治療には、手術、放射線療法、薬物療法(ホルモン療法薬、分子標的治療薬、細胞障害性抗がん薬、免疫チェックポイント阻害薬)などがあります。乳がんのタイプや進行度・患者さんの状態によって治療計画が決定されます。専門の医療チームが協力して治療に当たります。
手術の方法は大きく分けて乳房温存手術や乳房全摘手術があり、わきの下のリンパ節の状態によってセンチネルリンパ節生検術もしくは腋窩郭清術を行います。乳房再建術は希望に応じて同時もしくは後日に行います。当センターでは一部の症例に対し、乳腺内視鏡手術やラジオ波焼灼療法(RFA)を行っています(※適応については主治医にご確認ください)。
全身転移がある乳がんに対しては、薬物療法を中心とした治療となります。
また、HBOCに対するリスク低減乳房切除術やリスク低減卵管・卵巣摘出術を、婦人科と連携して積極的に行っています。