子宮がん(子宮体がん・子宮頸がん)

子宮体がん

1. 子宮体がんとは

子宮体部の子宮内膜にできるがんが子宮体がんです。子宮体がんは女性ホルモン(エストロゲン)が発生に深く関わっているため、昨今の食生活の欧米化や女性の肥満、月経不順などが原因で増加傾向にあります。閉経後の50歳以降に多いがんですが、最近若年子宮体がんの患者さんも増加傾向です。年間約1万7千人の女性が子宮体がんを発症しています。

図(子宮体がん)

出典:公益社団法人 日本産科婦人科学会 子宮体がん

2. 症状

子宮体がんの主な症状は不正出血です。閉経後の不正出血や長引く月経症状には注意が必要です。がんが進行すると下腹部痛や腰痛といった症状が出現することもあります。

3. 診断と検査

子宮体がんの細胞診での検診精度は低いため、細胞診で異常がなくとも不正出血がある場合には組織診を推奨します。また、閉経後にも関わらず、超音波検査で子宮内膜の肥厚が見られる場合にも内膜の精査を行います。細胞や組織検査で子宮体がんと診断されれば、子宮・卵巣の評価目的にMRI 検査、転移の有無の評価にCTもしくはPET-CTの撮影を行います。組織検査の結果や画像の検査から病期を診断して治療方法を決定します。

4. 治療

子宮体がんの病期分類は以下の通りで、病期によって治療法を決定します。

出典:患者さんとご家族のための子宮頸がん 子宮体がん 卵巣がん 治療ガイドライン

1)妊孕能温存希望がある場合
若年の子宮体がんの患者さんで、組織型が類内膜腺癌の高分化型であり、かつ癌が子宮内膜に現局している場合には黄体ホルモン療法(MPA療法)が考慮されます。奏功率は7割程度ですが、再発率は約50%とリスクが高い治療方法になります。
2)妊孕能温存希望がない場合
子宮体がんの初回標準治療は手術療法です。再発リスクの低い、類内膜癌高・中分化型でIA期の子宮体がんの患者さんは単純子宮全摘術+両側付属器切除術が推奨されており、ロボット手術や腹腔鏡手術といった低侵襲手術も選択できます。IB期以上の患者さんや、再発リスクの高い組織型の患者さんは、上記術式に加えて、骨盤内リンパ節郭清術+傍大動脈リンパ節郭清術を行うことが推奨されています。術後に摘出した子宮やリンパ節の病理検査の結果で、術後の化学療法を行うかどうかを決定します。
遠隔転移のあるIVB期の患者さんは、まず全身の化学療法を行い、化学療法が十分に効いて遠隔転移が制御できれば手術療法を行うこともあります。

子宮頸がん

1. 子宮頸がんとは

子宮の入り口にできるがんが子宮頸がんです。ほとんどの子宮頸がんがヒトパピローマウィルス(HPV) の感染が原因で発症することがわかっています。子宮頸がんは20代から増え始めて30代から40代にピークを迎えます。妊娠適齢期や子育て中に発症することが多いため、「マザーキラー」とも言われています。年間約1万人の女性が子宮頸がんを発症しています。

図(子宮頸がん)

出典:公益社団法人 日本産科婦人科学会 子宮頸がん

2. 症状

子宮頸がんの前がん病変である子宮頸部異形成や、ごく初期の子宮頸がんの状態では症状はほとんどありません。がんが大きくなってくると、月経以外の出血や、性交渉時の出血、帯下の増加などの症状が現れます。さらにがんが進行すると、腹痛や腰痛といった症状が現れます。

3. 診断と検査

検診で子宮頸部の細胞診異常を契機に子宮頸がんがわかる場合が多いです。次の検査としてはコルポスコピーという拡大鏡を用いて病変の部分を同定し、組織検査を行います。組織検査で子宮頸がんと診断されれば、子宮・卵巣の評価目的にMRI 検査、転移の有無の評価にCTもしくはPET-CTの撮影を行います。組織検査の結果や画像の検査から病期を診断して治療方法を決定します。

4. 治療

子宮頸がんの病期分類は以下の通りで、病期によって治療法を決定します。

出典:患者さんとご家族のための子宮頸がん 子宮体がん 卵巣がん 治療ガイドライン

1)妊孕能温存希望がある場合
円錐切除術や広汎子宮頸部切除術で治療を行います。適応となるのは子宮頸がんIA1期、IA2期、IB1期までの患者さんです。子宮は温存できますが、子宮頸部が短縮することによって、流産・早産のリスクが高まります。
2)妊孕能温存希望がない場合
手術療法、放射線治療、化学療法が選択肢となります。病期や組織型、年齢や合併症によって最適な治療方法を決定します。
<手術療法>
上皮内癌からIA1期のごく早期子宮頸がんの患者さんには単純子宮全摘術、IA2期からIIB期までの患者さんには準広汎もしくは広汎子宮全摘術、骨盤内リンパ節郭清術が選択されます。広汎子宮全摘を行うと、排尿にかかわる神経の一部が損傷を受けるため、手術後に排尿障害が生じる場合があります。また、リンパ節郭清術を行うことによって、術後リンパ浮腫が生じる場合があります。

出典:患者さんとご家族のための子宮頸がん 子宮体がん 卵巣がん 治療ガイドライン

<放射線治療>
ご高齢の患者さんや、合併症の多い患者さん、IIB期からIVA期までの進行期子宮頸がんの患者さんが適応となります。放射線治療に少量の抗がん剤を併用することによって、放射線治療の効果が高まることがわかっていますので、通常は抗がん剤を併用して治療を行います。放射線治療の早期副作用(主に治療中)としては吐き気、倦怠感、下痢などが挙げられ、晩期副作用(治療が終わって数年たってから)としては放射線性腸炎や膀胱炎、腸閉塞、骨盤骨骨折などが出現することがあります。
<全身化学療法>
子宮頸部以外にリンパ節や他臓器に遠隔転移がある場合には残念ながら手術や放射線治療といった局所治療は適応にならないため、全身化学療法が選択されます。最近では、分子標的治療薬であるベバシズマブや免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブが保険で従来の抗がん剤に併用して使用できるようになり、良好な成績をおさめています。

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