後期臨床研修 婦人科

婦人科カリキュラムのご案内

1.はじめに

まもなく卒後5年が経過し、産婦人科認定医となられる皆さんへ

 

 すでに様々な婦人科、周産期、不妊の症例を経験し、いよいよ自身のsubspecialityを選ぶ時期になってきました。いずれのsubspecialityも興味深く、選びがたいであろうと思いますが,あなたが手術に興味があって、だけれどもまだ少し術者になる自信がないのであれば、婦人科腫瘍をまず目指されることをおすすめします。自分が手術手技を身につけて、自身の判断で治療に望めることはとても魅力的なことです。鉄は熱いうちに打てといいます。皆さんのように若く、柔軟で気力、体力に満ちているこの時期に、多数の症例を経験し、しっかりとした修練を積むことはとても重要なことです。実地の経験を通じて骨盤解剖に精通すれば婦人科に独特な腟式手術を含め腹腔鏡下手術、さらにはロボット支援手術まで技能を広げることは容易となるでしょう。また一方で、婦人科腫瘍の守備範囲は手術のみにはとどまりません。手術以外の多岐にわたる治療法、たとえば化学療法、ホルモン療法、放射線療法、独特の診断技術を身につける必要があります。また、生殖年齢にある若い患者さんを診ることも多く、妊孕性温存治療やがん予防のためのワクチン、さらには遺伝性卵巣腫瘍の予防的手術まで、あなたが身につけるべき知識、技能はとても広いのです。

 私たち大阪国際がんセンター婦人科では皆さんを支援する経験豊富なスタッフを多数擁し、婦人科腫瘍専門医を目指しておられる先生方が自信を持って診療にあたれるまで、丁寧に指導していきます。

 

婦人科 主任部長 上浦 祥司

2.コースの概要

 産婦人科認定医取得済みあるいは取得見込みの卒後5年目以降の方で,婦人科腫瘍専門医修練カリキュラムに則った修練を希望する者を対象とする。研修期間は3年間とし,他の修練指定施設での研修も希望によって考慮する。当科は婦人科内視鏡手術技術認定医修練施設でもあり,希望あれば技術認定医としての症例蓄積も可能である。

3.目標とする習得資格

  • がん治療認定医
  • 婦人科腫瘍専門医
  • 産科婦人科内視鏡手術技術認定医

4.長期目標

1. 婦人科悪性腫瘍に関する専門知識習得、診断・治療計画立案、手術手技の習得、化学療法の基本、緩和ケアを含めた患者家族のトータルサポートを習得

2. 大阪大学関連病院での研修も含めて一般産科婦人科の基本的事項の習得

3. 緩和ケアの基本的能力を身につける(緩和ケア研修を受講するなど)

5.習得手技

①産科婦人科疾患に関する診断、検査、内科的、外科的治療一般

②婦人科悪性腫瘍に対する手術手技(骨盤外科、泌尿器科領域を含む)
放射線治療、化学療法、子宮鏡、直腸鏡等の診断技術

 

一般目標

 

  • がんの生物学
    がん一般および婦人科悪性腫瘍に特異的な発がん過程における環境因子、ウイルスの影響 などを理解する. がんの浸潤、転移の基本的な概念・理論を理解する.
  • がんの遺伝子・遺伝学
    発がんにおける遺伝的因子を理解する.がん遺伝子、がん抑制遺伝子、DNA ミスマッチ修復 遺伝子、テロメレース関連遺伝子、アポトーシス関連遺伝子などのがん関連遺伝子、好発 がん家系について一般的基礎的な知識を習得する. これらと婦人科悪性腫瘍の発生との 関連についても学ぶ.
  • 腫瘍免疫学
    免疫システムの基本的な要素について知るとともに腫瘍に関連した免疫系の要素を理解す る。臨床において遭遇する免疫反応の機序や免疫システムを応用した検査、治療の方法論 を学ぶ.
  • 病因、疫学、スクリーニング、予防
    腫瘍形成における遺伝因子および環境因子の病因を理解し,疾患の疫学的因子と疾患の記 述内容についての基礎知識を持つ。また,スクリーニングおよびリスク評価の基本原側を 理解し,使用する検査の感度および特異性,費用対効果を知る。スクリーニングの果たす 役割が明確である場合とそうでない場合,または確定しない状況を知る。遺伝子スクリー ニングと遺伝カウンセリングの原則および適応を認識する。がんの進行を予防する意味と, がんの発症を予防するためにどのような一次・二次・三次予防法を選択できるかを知る。
  • 臨床統計と臨床試験
    臨床研究を立案したり研究結果を解釈するために必要不可欠な疫学的知識や統計学的手法 を理解し、用いることができる.
  • 手術
    一般的な手術の適応および禁忌の理解を深め,悪性疾患患者の病期分類,根治療法,緩和 治療における手術の役割を熟知する。また,臓器温存の適応,手術と他の治療法との手順 を理解し,根治療法としての手術,ならびに放射線療法や抗がん剤,またはその両方を補 助療法とした手術のリスクとベネフィットを認識することが必要である。
  • リハビリテーション
    手術後の理学療法の重要性について認識する。早期離床の重要性や術後の日常生活への復 帰の過程について理解し、必要に応じて理学療法を取り入れていくことができなければな らない。
  • 放射線治療
    放射線治療の原理や実際の方法に精通する. 根治的照射と症状緩和目的の照射の適応を理 解し、 放射線腫瘍医と共同で外部照射や密封小線源治療計画の立案に参画できること。
  • 化学療法
    がん化学療法で用いられる主要な薬剤の薬物動態を理解し、それらをガイドラインに記載 されているような有効性・安全性が証明されている投与法にて適切に用いることができる.
  • 生物学的治療法
    他項で示されているサイトカインや造血成長因子などの生物学的療法の活性および適応を 理解する。また、同様に他項で示されている免疫療法、細胞治療、遺伝子治療といった生 物学的療法の基礎概念をあわせて理解する。
  • 支持療法および治療薬剤の薬理学
    使用頻度の高い薬剤について、薬剤の吸収・分布・代謝・排泄の流れを理解し、それらの 時間的推移がもたらす薬物動態学および薬力学について理解する。また、それらの薬理学 的特徴から薬剤の有害事象を評価し、薬剤の併用においては各薬剤の薬理学から相互作用 の可能性を考慮し、適切に使用することができる.
  • 緩和医療、終末期医療
    緩和的治療を熟知し、緩和医療、終末期医療を実践できる。WHO の疼痛ラダーの実用的知識を有し、オピオイド麻薬や他の鎮痛薬を適切に投与できる。
  • コミュニケーション
    患者およびその家族とコミュニケーションをとることができ,悪い情報も伝え,困難な状 況でも適切に行動できることが要求される。また,チーム医療として他の専門職腫(看護 師,ソーシャルワーカー,臨床心理士等)とコミュニケーションをとり,協力することを学ぶ。
  • 各種がんの管理・治療の基礎的知識
    婦人科以外の各領域の専門家達の診断、病期判定、およびその治療と合併症の管理について知識を得る。種々の治療法の利点と限界を理解するため、いろいろな専門家達と交流していかねばならず、それら学際的な意見交換がなされる会議には積極的に参加する。
  • がんの精神的社会的側面
    がんの診断や治療に伴う患者の社会的側面を理解し、その問題に対して適切に対応できることが必要である。
  • 患者教育
    医師は疾病に関連して患者が知識を持つことや行動することを支援しなければならない。 患者から相談された場合のみならず、必要があると考えられる事項については教育的な説 明を行わねばならない。

6.研修期間

3年間

7.募集人数

毎年1-2人

8.診療科の手術件数、経験目標症例数

 当院婦人科新規手術症例数:子宮頸癌手術50-60例、放射線治療10-20例、
子宮体癌40-50例、卵巣癌20-30例、新規化学療法30-40例。 

 婦人科浸潤がん症例(手術、放射線治療、化学療法などを含む)150例以上の経験を必要とする。手術は、浸潤がんの執刀者として30例以、第一助手として30例、その他の助手として40例を含めて100例以上の浸潤がんの手術経験を必要とする。この手術経験のうち15例以上は広汎子宮全摘出術の執刀者でなければならない

9.診療科の指導体制

診療科医師数 常勤4名

10.コンセプト 

①産婦人科認定医取得後のsubspecialityとして婦人科腫瘍専門医をめざす者に1十分な研修機会を与える。

②認定医研修中に産科婦人科内視鏡手術技術認定医の修練を続けている者には,引き続き症例集積の機会を提供する。

11.大阪国際がんセンター研修終了後

研修終了後の進路は、本人の希望を優先します。もし未定であれば相談にのります。

12.問い合わせ

婦人科 主任部長  上浦 祥司

 

大阪国際がんセンター事務局 人事グループ

〒541-8567 大阪市中央区大手前3-1-69

電話:06-6945-1181

メールアドレス:jinji#oici.jp(#を@に変えてください。)

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