線維性骨異形成(Fibrous Dysplasia)
【概要】
線維性骨異形成は骨髄内に線維性組織の増殖と未熟な線維性骨よりなる骨梁を伴う病変で、1つの骨に限局するもの(単骨性)と多数の骨に発生する(多骨性)とがある。多くは無症状であるが、病変が大きくなると骨の膨隆や変形をきたし、大腿骨頸部などの荷重部では病的骨折を起こすことがある。女児では多骨性病変に皮膚の色素沈着と性早熟などの内分泌異常を伴ったものはMcCune-Albright症候群と呼ばれる。また多発性筋肉内粘液腫に多骨性病変を伴ったものはMazabraud症候群と呼ばれる。
【疫学】
年齢は10代までが多く、男女比では女性にやや多い。発生部位では大長管骨に多く、その中でも大腿骨頸部の頻度が高い。大長管骨以外では肋骨、顎骨、および頭蓋骨にも多く認められる。肋骨発生の平均年齢は、他の発生部位例の年齢と比較して高い。
【遺伝子背景】
線維性骨異形成にはGNAS遺伝子の点変異が検出され、この遺伝子異常は本病変に極めて特異性が高いとされている。この遺伝子異常の検出は骨内高分化骨肉腫との鑑別に有用である。
【必要な検査とその所見】
単純X線やCTでは溶骨性病変、無構造なすりガラス状病変、不整な石灰沈着や骨硬化性病変などを示す。骨髄内から膨張性に発育し、骨皮質は薄くなる。病変の辺縁にしばしば太い硬化像(rind sign)を認める。
長管骨では骨幹端と骨幹に発生し、長管骨ではしばしば病的骨折を合併する。微小骨折を繰り返すことで前腕や下腿では湾曲変形、大腿骨近位部では羊飼いの杖変形(shepherd’s crook deformity)をきたすことがある。 MRIではT1強調像では低信号あるいは中等度信号を示し、T2強調像では信号は不均一である。その他、Tc-99mMDP骨シンチグラフィにて強い集積を認め、多骨性線維性骨異形成での病変の分布を知るために有用である。
【治療方針】
単骨性病変の予後は良く、治療は必要ないことが多い。大腿骨頸部などで痛みが継続し病的骨折を起こす恐れのあるものには松葉杖や装具などの安静を指示する。繰り返しの微小骨折による変形の進行、また疼痛を伴う大きな病変部、遷延治癒骨折、偽関節などは手術が選択される。
手術方法では矯正骨切り、髄内釘・プレート固定、掻把・骨移植術などの手術を行うことが多いが、多骨性の場合や若年者では再発することが多いため注意が必要である。成人になると病変が非活動性になり進行が停止することが多くの症例に認められるため、掻把・骨移植術などの手術の早期の適応には慎重になるべきである。
多骨性は時に多発骨折を繰り返し治療に難渋する症例や胸壁の病変で呼吸障害をきたす治療困難な症例もある。最近ではビスホスフォネート投与の治療効果の有用性も報告されている。続発性の肉腫発生はまれな合併症として知られている。単骨・多骨性どちらにも発生したとの報告があり、線維肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫などが報告されている。
【参考文献】
骨・軟部腫瘍 臨床・画像・病理 改訂版第2版・第3版 診断と治療社
Muhammad Kassim Javid, et.al Best practice management guidelines for fibrous dysplasia/McCune-Albright syndrome: a consensus statement from the FD/MAS international consortium. Orphanet Journal of Rare Disease (2019)14:139
Tiago Aoveral Pereira, et.al Surgical treatment of fibrous dysplasia in the proximal femur: a literature review. European Journal of Orthopaedic Surgery and Traumatology (2025)35:148
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