CIC再構成肉腫 CIC-rearranged sarcoma

  • 診療内容 / 実績
【疾患概念、発生頻度】
小児、若年者に好発する高悪性度小円形細胞肉腫である。非常に稀な悪性軟部腫瘍で、本邦での年間発生症例数は10例前後と推定される。主に体幹、四肢の軟部組織に発生するが、頭頚部、後腹膜、消化管、脳から発生することもある。骨からの発生は3-5%程度と稀である。
CIC再構成肉腫、滑膜肉腫、淡明細胞肉腫、胞巣状軟部肉腫、Ewing肉腫などの肉腫は染色体転座による融合遺伝子を有している。これらの肉腫では起源細胞に融合遺伝子が発現することでがん化すると言われている。CIC再構成肉腫の95%はCIC遺伝子とDUX4遺伝子が相互転座をきたした融合遺伝子CIC-DUX4であり、その他にCIC-FOXO4、CIC-LEUTX、CIC-NUTM1、CIC-NUTM2Aといった融合遺伝子も報告されている。
【臨床症状または病態】
痛みを伴うこともあれば、伴わないこともあるが、腫瘍サイズが5cmを超えて発見されることが多い。初診時、16-50%程度の頻度で遠隔転移を認める。遠隔転移の症状で見つかることもある。
【必要な検査とその所見】
CT、MRI、PETCT、X線検査、血液検査を行う。MRIでは、内部の壊死や出血、粘液成分などが混在し多彩な信号変化を呈する。遠隔転移精査のため、CT、PETCTでの全身検索を行う。血液検査ではLDHやCRPの上昇を認めることがある。
【診断のポイント、コンサルテーション】
確定診断には、病理検査が必須で免疫染色(CD99、ETV4、WT1など)や遺伝子診断(融合遺伝子の検出)が重要である。遺伝子診断が難しい場合もあり、診断には多様なアプローチと総合的な判断が必要となる。本疾患を疑えば、生検から専門施設で実施することが望ましい。仮に単純切除後に本腫瘍と診断された場合も速やかに専門施設への紹介が重要である。
【治療方針】
腫瘍の大きさ、転移の有無、病理学的悪性度などにより病期が決定し、年齢や腫瘍発生部位などを考慮し、治療方針を決定する。CIC再構成肉腫は高悪性度肉腫であり、周術期化学療法を中心とした集学的治療の対象となるが、化学療法の有効性は示されておらず標準治療は確立していない。Ewing肉腫に準じた高用量化学療法を試みることもあるが、化学療法に対する感受性は必ずしも高いとは言えない。遠隔転移がなく、切除可能な病変であれば、外科的切除が唯一の根治的治療となる。
【予後と合併症】
きわめて悪性度が高く、進行性の経過を辿ることがしばしばある。高頻度に遠隔転移をきたし、中でも肺転移が多い。5年生存率は17-43%程度と予後不良である。CIC再構成肉腫は、若年者に発生する非常に予後不良な肉腫であるため一刻も早い新たな治療法の開発が望まれる。
  • ・Soft Tissue and Bone Tumours, WHO Classification of Tumours (5th Edition)
  • ・Antonescu CR, Owosho AA, Zhang L, et al. Sarcomas With CIC-rearrangements Are a Distinct Pathologic Entity With Aggressive Outcome: A Clinicopathologic and Molecular Study of 115 Cases. Am J Surg Pathol. 2017 Jul;41(7):941-949.
  • ・Yoshida A, Goto K, Kodaira M, et al. CIC-rearranged Sarcomas: A Study of 20 Cases and Comparisons With Ewing Sarcomas. Am J Surg Pathol. 2016 Mar;40(3):313-23
  • ・Nakai S, Yamada S, Outani H, et al. Establishment of a novel human CIC-DUX 4 sarcoma cell line, Kitra-SRS, with autocrine IGF-1R activation and metastatic potential to the lungs. Sci Rep. 2019 Nov 1;9(1):15812.

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