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脱分化型脂肪肉腫 Dedifferentiated liposarcoma (DDLPS)
脱分化型脂肪肉腫 Dedifferentiated liposarcoma (DDLPS)
【疾患概念、発生頻度】
脂肪肉腫は主に4亜型、高分化型脂肪肉腫、脱分化型脂肪肉腫、粘液型脂肪肉腫、多形型脂肪肉腫に分類され、全軟部肉腫の約40%を占める。その中で脱分化型脂肪肉腫は高分化型に次いで2番目に多く、40-50歳以上に性差なく発生する高悪性度の腫瘍である。高分化型脂肪肉腫が脱分化することで発生する場合もある。四肢や体幹などあらゆる場所に発生するが、60-70%は後腹膜に発生し症状に乏しいため10cmを超えるような腫瘍も稀ではない。90%以上の症例にMDM2、CDK4の遺伝子増幅が認められ原因遺伝子と考えられている。
【臨床症状または病態】
10cm前後の大きな腫瘍を形成するが、後腹膜発生のものは症状に乏しく偶発的に発見されることも多い。非常に大きなものは腹部膨満や排便の困難感などの消化器症状や疼痛などを有する場合もある。当院での治療成績は5年生存率で76.4% (当センター2010-2022年)である。
【必要な検査とその所見】
MRI、CT(PET-CT)を行う。MRIでは巨大で比較的均一な軟部腫瘤であり、T1でIso-Low、T2で不均一Highな信号を示す。石灰化部分はどちらもLowになる。CTでは時に石灰化を伴うこともある。内部に壊死や出血を伴う場合もある。初診時より遠隔転移があることは比較的稀である。また当院の症例の解析からFDG-PETにより測定可能なSUVmaxの値が高集積のものは悪性度が高いことが分かっている。(5年生存率、約90% vs 約60%; SUVmax;4を閾値として比較、下図)
【診断のポイント、コンサルテーション】
確定診断には、病理検査が必要である。軟部発生、特に後腹膜の大きな腫瘍の場合は本疾患を疑う必要がある。その際は、生検から専門施設で実施することが望ましく速やかに専門施設への紹介が必要である。鑑別診断としては後腹膜腫瘍では平滑筋肉腫の頻度が次いで高く考慮すべき腫瘍である。また精巣に発生することも多く泌尿器科や消化器外科などと連携が必須である。
【治療方針】
脱分化型脂肪肉腫において外科的切除のみが明確に治療成績を改善する。そのため当院では、切除可能であれば手術を第一選択としている。ただし、腸管や腎臓などの合併切除が必要になる場合も多く多診療科の連携が必須である。海外では術前後の補助的放射線治療や補助化学療法によって治療成績が向上するかを調べる臨床試験が試みられているが、現在のところその効果は明らかではなく、当院では基本的に術前後の補助放射線治療や補助化学療法は行っていない。切除不能や遠隔転移を認めた場合には化学療法や放射線治療を行う。化学療法は通常の軟部肉腫に準じてアドリアマイシン単剤が第一選択であるが、時にエリブリンで長期コントロールが得られる場合もある。最近ではMDM2阻害薬やCDK4阻害薬の臨床試験が行われており、有効な治療薬として期待されている。放射線については、後腹膜の場合は腸管などの合併症に留意しスペーサーを挿入してから陽子線や重粒子線治療も行われる。
【合併症と予後】
予後不良な疾患であり5年生存率は60-70%と報告されている。転移はあまり頻度が高くなくむしろ局所再発を繰り返し切除不能になることで予後不良となる場合が多い。手術をしても、24ヶ月前後で約50%の症例において局所再発を認める。
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