デスモイド(Desmoid Tumor)

  • 診療内容 / 実績
【概要】
デスモイドはデスモイド型線維腫症とも呼ばれ、線維芽細胞のクローナルな増殖が見られる疾患で、転移はしないが、浸潤性増殖と高い局所再発を特徴とする。体のどの部分でも発生し、骨盤腔や腸間膜に発生する腹腔内デスモイド、腹直筋やその他の腹壁に発生する腹壁デスモイド、それ以外に発生する腹壁外デスモイドに分類される。
【疫学】
デスモイドは稀な腫瘍であり、その発生頻度は軟部腫瘍の3%未満で、年間発生率は100万人あたり3-5例である。好発年齢は30-40代で、女性に多く、男性の2.2-3.9倍である。11-32%のデスモイドは妊娠中もしくは出産後の女性に発症する。デスモイドの25%が過去に先行する外傷歴があり、腹壁および腹腔内壁のデスモイドの場合には68-86%が腹部手術後に認められる。デスモイドの5-10%は家族性大腸腺腫症(FAP)の患者である。
【遺伝子背景】
8番および20番のトリソミーが見られる症例が知られているほか、β-カテニンをコードする遺伝子であるCTNNB1遺伝子の点突然変異もしくはAPC遺伝子の点突然変位が発生に関与するとされている。
【臨床症状】
臨床症状はさまざまで、腫瘍の位置によって異なる。デスモイド患者の多くは発症時に腫瘤を触知する。四肢にデスモイドがある場合には疼痛や可動域制限、歩行困難となることがあり、腹腔内デスモイドの患者では腹部膨満感、便秘、腹痛、腸閉塞を引き起こすことがある。発生場所によっては生命を脅かす臓器の損傷を引き起こす可能性もある。
【必要な検査とその所見】
CT、MRI、組織検査を行う。
単純X線写真では病変の指摘は困難である。CTでは境界不明瞭な軟部腫瘍として描出される。様々な吸収値を呈しうるが、石灰化は稀である。MRIではT1強調画像では筋肉と同程度の低信号を呈し、T2強調画像では細胞成分に富む部位は高信号、膠原繊維の多い部位は低信号を呈する。特に高信号の病巣内に線状の低信号域が混在することが特徴的である。悪性腫瘍と比較してあまり拡散制限を来さず、ADC値が高い傾向にある。
【治療方針】
2000年代初頭まではデスモイドの治療は手術が基礎と考えられていたが、手術を行っても非常に再発率が高く、辺縁切除ではほとんど(90%)が再発するとされている。また、2-3年で20-30%の患者が自然退縮したという報告もあり、最近では疼痛や機能障害がなければ経過観察する場合も増えてきている。また、手術をした際に、切除が不完全となった場合には術後の補助放射線治療は有効であるとされている。
薬物療法としては、抗腫瘍薬である(メトトレキサート+ビンブラスチン)や分子標的治療薬であるチロシンキナーゼ阻害薬の有効性が報告されている。
【参考文献】
骨・軟部腫瘍 臨床・画像・病理 改訂第2版 診断と治療社
Riedel RF, et al. Evolving strategies for management of desmoid tumor. Cancer. 2022
Bektas M, et al. Desmoid Tumors: A Comprehensive Review. Adv Ther. 2023
Desmoid Tumor Working Group. The management of desmoid tumours: A joint global consensus-based guideline approach for adult and paediatric patients. Eur J Cancer. 2020
Fujita M, et al. Treatment of a Desmoid Tumor That Enlarged During Pregnancy: A Case Report and Literature Review. Kurume Med J. 2023
Gounder MM, et al. GOunder/Desmoid Tumor Research Foundation DEsmoid Symptom/Impact Scale (GODDESS©): psychometric properties and clinically meaningful thresholds as assessed in the Phase 3 DeFi randomized controlled clinical trial. Qual Life Res. 2023

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