類上皮肉腫 Epithelioid sarcoma (EPS)

  • 診療内容 / 実績
【疾患概念、発生頻度】
若年成人の主に四肢に後発する稀な悪性軟部腫瘍である。やや男性の罹患率が高い。会陰部や外陰部にも発生する場合がある。組織学的には古典型(遠位型)と近位型があり、古典型の方がやや発症年齢が若い傾向にある。原因遺伝子としてBAF complexの構成因子の一つであるSMARCB1(INI1)の欠失が報告されており、エピジェネティックな遺伝子異常が誘因となっている可能性がある。悪性ラブドイド腫瘍などでも同様の異常が認められる。
【臨床症状または病態】
5cm前後の多結節性の腫瘍を形成し、皮膚・皮下組織などの浅層から筋肉内の深部組織に至るまでどこでも発生しうる。発生初期には疼痛はないことが多いが、進行すると有痛性になる場合もある。潰瘍化や出血壊死を伴う場合もある。再発や遠隔転移の発生率が非常に高く、リンパ節転移も認めることも多い。
【必要な検査とその所見】
MRI、CT(PET-CT)などを行う。CTにて非特異的な軟部陰影として認める。辺縁に石灰化を伴うこともある。MRIではT1でLow、T2で不均一Highな信号を示す分葉状の軟部腫瘤を認める。肺、軟部、骨、リンパ節などの転移の検索にPET検査も有効であり強い集積を認める。
【診断のポイント、コンサルテーション】
確定診断には、病理検査が必要でありサイトケラチンなどの上皮性の形質を伴う軟部腫瘍を認めた場合本疾患を考える必要がある。しかしながら非常に稀な疾患であるため専門施設でないと確定診断が困難な場合が多い。確定診断のためにはSMARCB1(INI1)の欠失を免疫染色にて確認する必要がある。生検から専門施設で実施することが望ましく、速やかに専門施設への紹介が必要である。
【治療方針】
遠隔転移がない場合は手術による腫瘍広範切除が推奨される。場合によっては近接するリンパ節郭清を行う施設もある。しかしながら局所再発率、遠隔転移ともに高頻度に発生する。しかしながら補助化学療法や放射線治療の有効性は明らかでない。切除不能な場合は重粒子線治療なども選択される。再発や遠隔転移など進行した場合は、軟部肉腫の通常の方針に従いドキソルビシンを含むレジメが選択されることが多いが、有効性は高くない。当院では適応外使用として、海外の研究報告で一定の効果が報告されているタゼメトスタット(EZH2)阻害剤を投与する場合もある。
【合併症と予後】
予後不良な疾患であり5年生存率は50%前後と報告されている。遠隔転移を認める症例では生存率は24%と非常に予後不良な疾患である。皮膚潰瘍を伴う腫瘍からの出血や脳転移なども問題となる合併症である。

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