後腹膜腫瘍(肉腫) Retroperitoneal sarcoma

  • 診療内容 / 実績
【疾患概念、発生頻度】
後腹膜腫瘍は腎臓、尿管、膀胱などの泌尿器系の臓器、腸管や大血管などが局在する後腹膜に発生する腫瘍の総称である。その中でも特に悪性軟部腫瘍(肉腫)を後腹膜肉腫とも呼ぶ。およそ四肢・体幹に発生する肉腫の10%程度を占める。またデスモイドや孤立性線維性腫瘍などの境界病変や神経症腫などの良性腫瘍も発生し、肉腫以外には悪性リンパ腫や転移性腫瘍も発生することがある。
比較的高頻度に発生する後腹膜肉腫は高分化型脂肪肉腫、脱分化型脂肪肉腫、平滑筋肉腫であり、約75−80%を占める。頻度はやや低いが未分化多型肉腫や粘液型脂肪肉腫、GISTなども散見する。
【臨床症状または病態】
症状に乏しいことが多く偶発的にCTやMRIで見つかることもしばしばある。腹部膨満感や腹痛、排尿・排便困難感で受診をきっかけに診断されることも多い。そのため後腹膜腫瘍は診断時の腫瘍サイズが大きいと言われており、当センターでも約30%の患者さんにおいて、受診時の腫瘍サイズが15cmを超えていた。
【診断のポイント、コンサルテーション】
肉腫である場合は特定の腫瘍マーカーなどの指標はなく生検による診断が必要である。しかし血液がんや転移性腫瘍は治療方針が大きく異なるため、それらを鑑別するためにも各種腫瘍マーカーの検査は推奨される。画像検査ではCTやMRIが有用である。また当センターからの研究でPET-CTでFDGの集積程度から腫瘍の悪性度・予後の推定が可能であると報告しており、PET-CTも有効な検査の一つである。また集積の強い部分をCTガイド下生検で検査することで病理学的な悪性度の評価も正確に行えるという利点もある。診断がついていないまま手術をされた状態で紹介されることも多く、後腹膜腫瘍を疑う場合はまず専門施設への紹介を検討いただいた方が良いと考える。
【治療方針】
遠隔転移がない場合には第一に外科的切除が推奨される。しかし、前述のように腫瘍が大きい場合が多く、多臓器に干渉、浸潤している場合もあり整形外科だけでは手術はできない。泌尿器科、大腸外科、時には血管外科、肝胆膵外科と協力し腫瘍切除を行っており、これらの診療科と定期的にカンファレンスを開催している。手術では少なくとも肉眼的に取り残しが無いように腫瘍を切除することを目指す。遠隔転移がある場合でも症状に応じて外科的切除を行う場合もある。しかし後腹膜腫瘍は再発率が約50%と高く、繰り返し手術が必要な場合も多く、当院では外科的切除が困難と判断した場合は整形外科にて化学療法を導入していることが多い。一方で手術によってとり切れた場合は、再発や転移の予防的な意味での化学療法の有効性は明らかでなく基本的には行っていない。一部、脂肪肉腫に対しては放射線治療が再発率を低下させるという研究もあるが、放射線治療後に再発してしまうと癒着により手術困難になるため当センターではいよいよ切除困難になった場合に放射線治療を選択する場合が多い。
【予後と合併症】
過去10年の当センター201人のデータでは5年生存率は74.7%であった。組織別で比較すると高分化型脂肪肉腫は94.5%、脱分化型脂肪肉腫は70.8%、平滑筋肉腫は67.8%であった。傾向として脂肪肉腫は局所再発率が高く、複数回手術することも比較的多く、病状が進行すると腫瘍切除が困難になり経口摂取ができず治療継続困難になる。遠隔転移は起こり得るが頻度は高くない。平滑筋肉腫は局所再発もするが遠隔転移が比較的多く、化学療法や放射線治療など集学的治療でコントロールできることもある。今後、化学療法や放射線治療の有効性の研究や、新規治療による治療成績の向上が必要な疾患群である。

関連サイト

センター
広報誌

総合受付06-6945-1181 月曜日~金曜日(祝日除く) 午前9時~午後5時30分