肝胆膵内科膵検診室 

  • 診療内容 / 実績

膵がんは予後不良で、早期発見が難しいがんであります。一方で早期発見ができれば予後も良好とされており、現在、肝胆膵内科膵検診室では、早期膵がん発見を行うためのシステムの構築に取り組んでいます。

膵精密超音波検査

「膵精密超音波検査」は、当院にて開発された、膵臓をより詳細に見るための超音波検査法で、通常の腹部超音波検査より良好な病変検出感度を持つことが示されています。
患者さんへの負担が少なく、スクリーニング検査に適していると考えています。

MRIで検出された5mm以上の膵のう胞の検出率

通常腹部超音波検査 70.2% (314/447)
膵精密超音波検査  92.2% (412/447)

M. Nakao, K. Katayama, et al. Eur J Radiology 2017.

膵臓は、その半分が胃の後ろに隠れる形になっているため、超音波検査で膵臓全体を観察するのが難しくなっています。膵精密超音波検査では、約60°の半座位を取れるベッドにもたれ、腹筋の緊張を取り除いた状態で検査を行います。腹筋の緊張が取れることで、超音波プローブを深く押し付け、膵臓をより近くから観察できます。
まず絶食で観察を行います。検査後半に飲料(市販のミルクティーあるいはお茶)を約350ml摂取して頂き、 胃内に液体を充満させて観察を行います。胃を液体で充満させることで膵臓を観察しやすくなります。検査中に身体の姿勢を変えていただくこと(体位変換)で、出来るだけ見落としの少ない膵臓観察を心がけています。
膵臓全体を細かく観察するため、通常の腹部超音波検査は肝臓、胆のう、膵臓、脾臓、腎臓などを約15分かけて観察するのに比べ、膵精密超音波検査は、膵臓に特化して丁寧に時間をかけて検査しています。

 

 

膵癌早期診断の取り組み

当院では、臨床研究の一環として、膵臓に主眼をおいたこの「膵精密超音波検査」をスクリーニング検査に取り入れ、膵がん早期発見の実績をあげています。以前の当院での検討では、膵検診中に指摘された膵がん11例のうち8例が早期診断されたことを報告しています。(J. Fukuda, K. Ikezawa et al. Cancers 2021.)

1.膵臓にのう胞や主膵管拡張があると言われた
2.第一度近親者(両親、きょうだい、子供)に膵がん家族歴がある

などは、膵がんの危険因子と考えられていますので、かかりつけの先生を通して、当院の診療予約をお願いします。

膵精密超音波検査は膵臓をより良く描出するために工夫された検査法ですが、全ての患者さんで膵臓が明瞭に描出されるとは限りません。必要な画像検査は患者さんによって異なりますので、検査の内容については担当医とご相談ください。

UICC第8版 Stage 0 あるいは Stage Iと診断.

膵がん検診研究への参加について

胆膵内科膵検診室では、膵臓に特化した体外式超音波検査(膵精密超音波検査)を用いて、膵がんの高危険群の方を対象に臨床研究として、膵がん検診の新規研究を実施しています。

(参加対象)
○年齢35歳以上75歳未満で全身状態が良好な方
○「膵精密超音波検査」で主膵管拡張あるいは膵のう胞が検出される方のうち、下記の基準のいずれかを満たす方
    1) 膵管拡張2.5mm以上、かつ膵のう胞5mm以上
    2) 膵管拡張4mm以上
    3) 膵のう胞20mm以上
ただし、第一度近親者(両親、兄弟姉妹、子供)に膵がん家族歴がある方につきましては、上記基準を満たさない場合でも参加が可能になることがあります。

○一方、膵精密超音波検査での十分な膵臓描出が困難な方、閉所恐怖症などの理由でMRI検査が困難な方は本研究への参加が困難となります。

(方法)
6か月毎の膵精密超音波検査と年1回のMRI検査、腫瘍マーカーなどの血液検査を基本とした定期検査を受けて頂いています。
異常所見を認めた際には超音波内視鏡検査(EUS)、造影エコー検査、超音波ガイド下生検やERCP膵液細胞診などにより速やかに確定診断を行い、根治を目指すシステムです。

膵がんが無い場合も、定期的なフォローが必要と診断される場合もあります。膵がんの危険度が低いと診断された場合には、「膵精密超音波検査」を含まない形でフォローさせて頂くか、かかりつけの先生にフォローをお願いする場合があります。本検査をあくまで臨床研究として実施しているものですので、ご理解を宜しくお願い致します。

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