胃がん

胃癌の解説

1. 胃癌の特徴

胃癌は、胃の内側の粘膜に発生する悪性腫瘍です。2020年に新たに診断された胃癌の罹患数は1位大腸、2位肺に次いで3位、男女別では男性で4位、女性で4位と、日本人に多い癌のひとつです。胃癌の原因として最も重要なのは、ヘリコバクターピロリ菌の感染で、ピロリ菌感染による慢性的な胃粘膜の炎症は、胃がんの主原因の1つとされています。最近報告された観察研究によりますと、2016年から2017年に胃癌手術を受けられた患者さんの約67%にピロリ菌の感染歴がありました。ピロリ菌以外の原因には喫煙、食塩・高塩分食品の摂取が挙げられます。

2. 症状

症状があまり出ないことが多い
胃癌の約半数は早期癌として検診で発見されます。早期胃癌では無症状なことが多く、進行しても症状が出ないこともあります。
症状
みぞおちのあたりの痛み(心窩部痛)、不快感、胸やけ、嘔気、食欲不振を認めることがあります。腫瘍が大きくなると、腫瘍からの出血により吐血、黒色便や貧血、通過障害により嘔吐などが出現します。

3. 診断、検査

胃癌の診断は、胃カメラによる観察と、胃カメラ下に組織を採取(生検)して病理検査により診断されます。胃癌の治療方針を決定するためには進行度(ステージ)を決定する必要があります(表1)。ステージ決定には、癌の深さやリンパ節転移、他臓器への転移、腹膜転移の有無を調べる必要があり、胸部・腹部のCT検査を行います。MRI検査は、特に肝臓や骨、脳に転移が疑われる際に撮影します。腹膜播種が疑われる場合には、全身麻酔下に腹腔鏡下検査を行うこともあります。腹腔鏡検査では腹部に小さな穴を開け、二酸化炭素で腹腔を膨らませ、観察と疑わしい場合は組織と細胞を採取し、病理検査に提出します。

 

表1. 進行度分類(Stage)<胃癌取り扱い規約第15版>

■臨床分類

M0 M1
N0 N(+) Any N
T1(M, SM), T2(MP) I IIA IVB
T3(SS), T4a(SE) IIB III
T4b(SI) IVA

■病理分類

M0 M1
N0 N1 N2 N3a N3b Any N
T1a(M), T1b(SM) IA IB IIA IIB IIIB IV
T2(MP) IB IIA IIB IIIA IIIB
T3(SS) IIA IIB IIIA IIIB IIIC
T4a(SE) IIB IIIA IIIA IIIB IIIC
T4b(SI) IIIA IIIB IIIB IIIC IIIC

4. 治療

遠隔転移が無い場合
早期胃癌の一部は、内視鏡的切除(EMR/ESD)の適応となります。それ以外はリンパ節切除を伴った胃切除術が行われます。胃切除術は侵襲の少ない腹腔鏡手術、daVinciを用いたロボット支援下手術の割合が年々増えてきています。当科での2023年低侵襲手術(腹腔鏡+ロボット支援下手術)の割合は99.5%、うちロボット支援下手術が78%です。
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胃切除術
胃癌の術式は、胃癌が胃のどの部位に存在するかによって決まり、それに伴って切除するリンパ節も決まります(リンパ節郭清)。
●幽門側胃切除術

幽門側胃切除術

ビルロートI法再建

ルーワイ再建

●噴門側胃切除術

噴門側胃切除術

食道残胃吻合法

ダブルトラクト法再建

●胃全摘術

胃全摘術

ルーワイ再建

StageⅡ、Ⅲ胃癌に対しては術後補助化学療法(再発率を減少させるために行う抗がん剤治療)が追加されます。また胃切除後の生活指導および胃切除後後遺症に対する治療を行い、再発や二次がんの早期発見のために、胃がん治療ガイドラインに従って、原則5年間の術後フォローアップを行います。

腹膜播種、遠隔転移がある場合
手術だけでは根治が難しいため、抗がん剤治療が治療の中心となります。近年、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害剤なども登場し、高い効果が期待される治療も出現しています。もともと切除不能なStageⅣ胃癌であっても、抗がん剤治療がよく効いて根治手術が狙えることがあり、そういった手術をコンバージョン手術と呼び、当科でも積極的に導入しています。

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