松浦成昭・総長インタビュー
平成29年3月25日、大阪府立成人病センターが名称も改め新築移転。大阪国際がんセンターとして新たなスタートを切りました。
その新センターの三本柱である、病院、研究所、がん対策センターを統括するのが松浦成昭・総長です。
今回は、「なるべく多くの患者さまの悩みに応えたい」と語る、松浦成昭・総長のインタビューをご紹介します。
大阪国際がんセンター 総長
松浦 成昭
「大阪国際がんセンター」という名称に秘められた思いとは?
がんに特化した、グローバルな病院を目指して
大阪国際がんセンターの前身である大阪府立成人病センターは、国内初の生活習慣病専門の医療機関として、昭和34年に開院しました。その後、がんと循環器(心臓と血管)疾患に特化した病院へと進化を遂げ、医療活動に従事してきましたが、がん患者の増加に伴って、さらにがん治療に注力する必要性を感じていましたので、その決意表明の意味も込めて「がんセンター」と付けました。
また、昨今の外国人観光客の増加もあって、大阪にも海外から多くの観光客が押し寄せていますし、在日外国人の方も増えていますが、日本の医療は外国の方々にとって満足度が乏しいと言われています。そのような背景から、患者さまへのサービス、治療、診断、研究など、すべての要素を国際レベルに向上させたいという思いで「国際」という冠を付けました。新センターでは、特にアジアのがん対策を重視していまして、タイ、バングラデシュなどの医療機関との提携をすでに始めています。
大阪国際がんセンターのコンセプトをお教えください。
患者さまのニーズを的確にとらえ、患者さまの声に耳を傾ける病院
医療の進化に伴って、がん全般の5年生存率が約70%にまで向上した現代、患者さまのニーズは多様化しています。かつては命を取り留めることが第一でしたが、がんと向き合いながら生きていく方が増えている近年では、「QOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)を大切にしたい」という考えを持たれる方が増えています。
特に、国が策定した「がん対策推進基本計画」にも盛り込まれている、就労問題は深刻です。また、育児真っ盛りの30代~40代の女性にがんの発症が多くなり、「治療で子どもの授業参観に行けない」など、切実な訴えを耳にすることも多くなっています。
大阪国際がんセンターは、このような患者さまの声に真摯に耳を傾け、「患者さま目線」で治療に当たることができる病院でありたいと考えています。
新センターの運営方針とはどのようなものですか?
最先端のがん治療を発信する病院としての医療を
新センター運営の基本方針は、以下の5項目となっています。
(1)先進医療の開発と実践
(2)患者満足度の徹底追求
(3)教育と情報発信の充実
(4)医療資源の最大利活用
(5)経営改革へのたゆまぬ努力
今回の新センターのオープンが、単なる旧センターからの引っ越しに終わってはいけないと強く思っています。これまで、患者さまからいただいたアンケートや目安箱に寄せられた声では、感謝のお言葉もいただくのですが、さまざまなご意見も賜っています。それらを真摯に受けとめて、行き届いた配慮を心掛けていきたいと考えています。
「病院」「研究所」「がん対策センター」、
それぞれの役割をお教えください。
新センターの3つの柱、それぞれのレベルアップを目指して
「病院」では、これまで西日本一の数のがん手術を行ってきましたが、これからも治りにくいと言われるがん治療と誠実に向き合い、治療レベルの向上を追求していきます。
「研究所」には、「がん細胞ポート/キャンサーセルポート(仮称)」を新設しました。ここでは、生きたままのがん細胞を元にして患者さまの治療方針を立てたり、患者さまと薬の相性についての研究を重ね、企業と共同で創薬を行うことで、世界中から注目される研究拠点を目指します。
「がん対策センター」では、「がん登録」を行っています。大阪府の登録率は非常に高いので、そのデータを有効活用して新たな治療法を導き出したり、生存率をより明確にする方法を模索するなど、行政ともタイアップしながら地域ごとの対策を検討していきます。
今後目指すのは、どのようながん治療ですか?
患者さまの希望となり得るがん治療を
手術療法、放射線療法、化学療法をバランスよく取り入れ、患者さまの負担を最小限にすることを目指します。また、患者さまのQOL向上のため、医師、看護師、薬剤師、検査技師、栄養士らの医療スタッフが連携して治療を行う「チーム医療」を推し進めていきます。さらに、難治がんについても、治療の開発に力を入れていきたいと考えています。
各施設や他病院との連携を深め、より効率的な医療を
新センターの敷地内に、医療法人協和会が運営する「重粒子線がん治療施設」を設置し、放射線の一種である重粒子線で、がん細胞をピンポイントで照射する治療を行います。また、透析を要する合併症を持つがん患者さまに、よりよい医療を提供するため、近隣の大手前病院との提携を実施しています。
今後、新センター、重粒子線がん治療施設、大手前病院での共通診察券を作成します。診療情報の一元化で、効率的な治療体制の構築を考えています。
都道府県がん診療連携拠点病院としての役割について、どうお考えですか?
地域の医療機関と連携し、患者さまの悩みに応えていきたい
大阪府立成人病センターは、大阪国際がんセンターとなり、新しく生まれ変わりました。高度な医療を追求し、多くの患者さまの悩みに、できるだけ多く応えていきたい、というのが今の私の正直な気持ちです。また、当センターでの治療後においては、在宅ケアも視野に入れた地域医療連携を強化したく、地域の医療従事者のみなさまとの連携も深めていきたいと考えています。