頭頸部外科(耳鼻咽喉科)
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- スタッフ紹介
- 外来診療表
根治性と機能温存の両面から最適な治療法を提供します。
診療内容の概要
頭頸部外科(耳鼻咽喉科)では、図のような鼻・口~のどの悪性腫瘍や甲状腺腫瘍、唾液腺腫瘍を扱っています。口からのどの主な働きは、「食べること」と「話すこと」で、日常生活に欠かすことはできません。そのため、頭頸部がん治療では、がんの根治だけではなく機能温存が重要となります。治療後の機能障害は程度の差はあれ避けることはできませんが、可能な限り最小限にとどめ安心して日常生活を送れるように、形成外科・消化管内科・放射線腫瘍科・IVR科・腫瘍内科など多くの診療科と協力して多様な標準治療と新しい治療を駆使し、多職種によるチーム医療を行っています(治療ポリシーの詳細をご覧下さい)。
主要疾患
舌・口腔、喉頭、咽頭、頸部食道、鼻・副鼻腔、甲状腺腫瘍、唾液腺などの
耳鼻咽喉科領域の腫瘍
治療ポリシー
〇多くの診療科と協力して最高水準の多様な標準治療を提供します。
〇多職種によるチームで治療後の生活を考えたケア(「食べる」を支えるチーム医療)
を行います。
主な治療について
頭頸部がんに対する根治を目指すための最も適切な治療(標準治療)は、手術(A,B)、放射線治療(C,D)、薬物療法(D,E)が3本柱ですが、がんの発生部位により異なります。(A,B,C,D,Eの詳細は、下段の〇多くの診療科と協力して行う最高水準の多彩な標準治療)
- ・舌・口腔がんに対する標準治療は手術です。早期がんで切除範囲が小さければ機能障害も軽度です。進行がんに対しては切除と同時に再建(A)を行うことで機能障害を最小限にとどめます。
- ・喉頭がんでは、早期がんに対する標準治療は放射線治療ですが、表在癌に対しては経口的な内視鏡切除(B)も行われます。進行がんに対する標準治療は喉頭摘出術ですが、放射線治療と抗がん剤の併用による化学放射線療法で喉頭温存が可能な場合が増加しています。
- ・上咽頭がんに対する標準治療は放射線治療(C)です。進行がんでは抗がん剤を併用します。
- ・中咽頭がんでは、早期がんに対する標準治療は経口的切除です。進行がんに対しては、放射線治療と抗がん剤の併用による化学放射線療法か、切除と同時に再建(A)を行うことで機能障害を最小限にとどめます。
また、ヒトパピローマウイルスが発がんに関与するp16陽性がんの場合には、放射線治療(C)が主体となります。 - ・下咽頭がんでは、早期がんに対する標準治療は放射線治療ですが、表在癌に対しては経口的な内視鏡切除(B)も行われます。進行がんに対しては、下咽頭喉頭全摘出と同時に小腸の一部で再建(A)を行う手術が標準治療ですが、放射線治療と抗がん剤の併用による化学放射線療法で喉頭温存が可能な場合もあります。
- ・鼻・副鼻腔がんでは、標準治療は手術による摘出です。早期癌に対しては経鼻的切除が可能です。進行がんに対しては切除と同時に再建(A)を行うことで機能障害を最小限にとどめますが、超選択的動注化学放射線療法(D)により整容面も考慮した治療も行っています。
- ・甲状腺腫瘍に対する標準治療は手術です。気管や食道の合併切除が必要な進行がんでは、切除と同時に再建(A)を行うことで機能障害を最小限にとどめます。
- ・唾液腺腫瘍に対する標準治療は手術です。顔面神経の合併切除が必要な進行がんでは、切除と同時に顔面神経の再建(A)を行うことで機能障害を最小限にとどめます。
治療ポリシー(多診療科との協同治療、多職種チーム医療)の詳細
〇多くの診療科と協力して行う最高水準の多彩な標準治療
頭頸部外科のみで行える治療も多くありますが、治療後の機能障害や治療の安全性を考慮し、積極的に多くの診療科と協力しながら治療を行っています。
- A 進行がんに対する微小血管吻合を用いた再建手術 (形成外科)
- 多くの進行がんに対する手術は、程度の差はあれ術後の機能障害が避けられません。
その機能障害を最小限にするために、がんの切除と同時に自分の体の他の部分(腹部、大腿部や小腸の一部など)からの移植が必要となることがあります。適切な再建を行うためには直径2~3㎜の血管をつなぎ合わせる微小血管吻合が不可欠ですが、形成外科との密接な協力により微小血管吻合術の成功率は99%以上です。 - B 表在性咽喉頭がんに対する内視鏡的切除術(消化管内科)
- 内視鏡の進歩により診断可能となってきた微小な表在性咽喉頭がんに対しては、消化管内科と協力し全身麻酔下の内視鏡的切除術を積極的に行うことにより、より低侵襲で機能障害の小さな治療を実現しています。
- C 有害事象の軽減を目指した強度変調放射線治療:IMRT (放射線腫瘍科)
- 放射線治療は咽喉頭がんに対する機能温存治療の代表的治療ですが、口腔~咽頭の乾燥や味覚障害などの有害事象が生じます。放射線腫瘍科の協力により、IMRTを用いることでこのような後遺症を減らすことができるようになっています。
- D 上顎がんに対する超選択的動注化学放射線療法 (IVR科)
- 上顎がんに対する標準治療は手術で、進行がんでは再建手術が必要となりますが、術後の顔貌の変容は程度の差はあれ避けることはできません。整容面を考慮しつつ根治を目指すために、治療放射線診断・IVR 科の協力により、動脈内のカテーテルから高濃度の抗がん剤をがん病巣の近くに投与しながら放射線治療を行っています。
- E 分子標的薬, 免疫チェックポイント阻害薬 (腫瘍内科)
- 切除不能の再発や転移が生じた場合には全身的な薬物療法が必要となりますが、近年新しい種類の薬剤が次々と開発されています。かつての抗がん剤だけでなく、分子標的薬(セツキシマブやレンバチニブなど)や免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブやペンブロリズマブなど)により、様々な組み合わせで治療が可能となっています。腫瘍内科の協力により多種多彩な有害事象に迅速に対応し、安全に治療を継続する体制をとっています。
- ・重粒子線治療
- 隣接する大阪重粒子線センターでの治療適応の検討や治療が予定どおり完遂できるように治療中の処置等に協力しています。
- ・頭頸部アルミノックス治療(光免疫療法)
- この治療の適応は切除不能の再発頭頸部がんで、まだ標準治療ではありませんが、頭頸部アルミノックス治療認定施設として、他施設での再発例に対してもセカンドオピニオンを通して積極的に受け入れを行っています。
〇多職種によるチーム医療(「食べる」を支えるチーム医療)
治療中~治療後の誤嚥性肺炎や種々の合併症を予防し、体重減少を防ぐためには、口腔ケアや嚥下リハビリ、栄養管理が重要です。さらに、治療終了後にすみやかに安心して自宅での生活に戻れるよう、地域の先生方にも治療前からチームの一員に加わっていただく取り組みを始めています。
- ・頭頸部在宅療養支援チーム
- 患者相談室、外来&病棟看護師を中心とし、摂食・嚥下障害看護認定看護師、薬剤師、栄養士などからなるチームが、予定どおりに治療が終了した後に安心して治療後の日常生活が送れるように、治療前の段階から考えてケアを行います。
- ・口腔ケアチーム
- 歯科医師、歯科衛生士、看護師、薬剤師を中心とし、摂食・嚥下障害看護認定看護師、放射線技師などからなるチームが、手術前や放射線治療前から口腔ケアや指導を行うことで、治療に伴う合併症を減らして安全に治療が行えるように努めています。
- ・嚥下リハビリテーションチーム
- 嚥下リハビリを担当する言語聴覚士、摂食・嚥下障害看護認定看護師、担当医などが毎週行う嚥下造影検査によって治療中や治療後の嚥下機能を評価し、さらに栄養士や薬剤師も加わる多職種嚥下カンファレンスで、食事開始の時期や食事の内容を検討し、少しでも早く安全に食べられるように心掛けています。
術後の嚥下造影検査
多職種嚥下カンファレンス
診療実績(術式・治療法ごと)、5年生存率など
手術症例数
手術件数 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
舌・口腔がん | 80 | 85 | 93 | 90 | 75 | 132 | 120 |
咽頭がん | 124 | 124 | 120 | 115 | 140 | 123 | 141 |
喉頭がん | 21 | 13 | 11 | 16 | 15 | 23 | 28 |
鼻・副鼻腔がん | 5 | 1 | 8 | 3 | 7 | 6 | 8 |
甲状腺がん | 31 | 22 | 42 | 44 | 36 | 33 | 47 |
唾液腺がん | 7 | 11 | 18 | 19 | 11 | 9 | 12 |
再建手術(B) | 84 | 91 | 89 | 77 | 77 | 73 | 76 |
経口的咽喉頭手術 (Cを含む) |
73 | 91 | 94 | 95 | 97 | 90 | 111 |
手術以外(放射線治療・薬物療法・緩和療法など)の症例数
手術以外の症例数 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
咽頭がん | 53 | 67 | 69 | 90 | 111 | 118 | 112 |
喉頭がん | 19 | 15 | 20 | 42 | 33 | 39 | 36 |
鼻・副鼻腔がん | 9 | 7 | 11 | 22 | 27 | 19 | 20 |
治療成績(5年生存率と喉頭温存率)
症例数 | 1期 | 2期 | 3期 | 4期 | 全症例 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
喉頭がん | 258 | 5年全生存率 | 89% | 79% | 71% | 61% | 78% |
喉頭温存率 | 96% | 82% | 58% | 43% | 76% | ||
下咽頭がん | 379 | 5年全生存率 | 84% | 80% | 72% | 51% | 70% |
喉頭温存率 | 93% | 83% | 70% | 54% | 75% | ||
中咽頭がん | 274 | 5年全生存率 | 74% | 82% | 77% | 73% | 76% |
口腔がん | 336 | 5年全生存率 | 87% | 77% | 81% | 61% | 76% |
(1)学会認定
- ・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門研修連携施設
- ・日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医制度指定研修施設
- ・日本気管食道科学会研修施設
- ・JCOG参加施設
スタッフ紹介
-
主任部長
藤井 隆
-
副部長
喜井 正士
-
副部長
宮部 淳二
-
副部長
北村 公二
-
診療主任
是松 瑞樹
職 名 | 氏 名 | 専門分野 | 認定医/専門医/指導医 |
---|---|---|---|
主任部長 | 藤井 隆 | 頭頸部外科 | 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医・指導医 日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医・指導医 日本気管食道科学会専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 頭頸部アルミノックス治療医・指導医 |
副部長 | 喜井 正士 | 頭頸部外科 | 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医・指導医 日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 |
副部長 | 宮部 淳二 | 頭頸部外科 | 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医・指導医 日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医 頭頸部アルミノックス治療医 ダヴィンチサージカルシステム認定医 |
副部長 | 北村 公二 | 頭頸部外科 | 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医・指導医 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門研修指導医 |
診療主任 | 是松 瑞樹 | 頭頸部外科 | 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医 日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医 頭頸部アルミノックス治療医 ダヴィンチサージカルシステム認定医 |
医長 | 岸川 敏博 | 頭頸部外科 | 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医・指導医 |
医長 | 横田 知衣子 | 頭頸部外科 | 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医・指導医 日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 頭頸部アルミノックス治療医 ダヴィンチサージカルシステム認定医 |
レジデント | 石谷 祐記 | 頭頸部外科 | 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医 |
レジデント | 武田 俊太郎 | 頭頸部外科 | 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医 |
レジデント | 名古 周平 | ||
レジデント | 田村 浩一 | ||
回数報酬医 | 音在 信治 | 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医・指導医 日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医 |
外来診療表
診察室 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
AM | PM | AM | PM | AM | PM | AM | PM | AM | PM | |
87 | 頭頸部Ⅰ | 北村 | 頭頸部Ⅰ | 藤井隆 | 頭頸部Ⅰ | |||||
88 | 頭頸部Ⅰ | 岸川 | 頭頸部Ⅰ | 是松 | 頭頸部Ⅰ | |||||
89 | 発声外来 | |||||||||
90 | 腫瘍外来 | 横田 | ヴォイスプロテーゼ(第1週) 横田(第3週) 腫瘍外来(第4週) |
音在 | (第4週)腫瘍外来 | |||||
91 | ドック | 石谷 (第1・3・5週)/ 武田 (第2・4週) |
ドック |
☆は非常勤医師です