血液内科
- 診療内容 / 実績
- スタッフ紹介
- 外来診療表
血液内科の理念
全ての血液がん・血液難病の治癒を目指し、最適かつ最先端の治療の提供を目指します
診療内容の概要
血液のがんや難病に対する最適・最先端と考えられる治療を専門としています。2017 年3 月の大阪国際がんセンターの開院とともに、無菌病室を33 床有する国内有数の血液内科診療施設となりました。これにより無菌環境の必要な患者様の受け入れや、緊急移植にも十分対応できる体制が整っています。急性白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫・慢性白血病・骨髄異形成症候群などの造血器腫瘍の診断を、迅速かつ的確に行うとともに、抗がん剤を用いた化学療法・抗体薬をはじめとする分子標的療法・放射線治療・造血細胞移植を組み合わせた集学的治療を行っています(表1)。
造血細胞移植については、骨髄移植・末梢血幹細胞移植・臍帯血移植・HLA 半合致移植・自家末梢血幹細胞移植を、患者さんの状況に合わせ、最適と考えられる方法を速やかに選択して行っています。また2021年には、新しい免疫細胞療法であるキメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T療法)を取り入れ、移植が困難な再発・難治の急性リンパ性白血病・悪性リンパ腫にも、治癒を目指した治療ができる体制を整えました。2023年は造血細胞移植・CAR-T療法あわせて101件、2024年は造血細胞移植・CAR-T療法あわせて95件の治療を行っています(図1)。CAR-T療法の薬剤の種類が増えており、適応となる疾患も拡大するため、より多くの患者様に安全に治療を提供できるように、チームの体制を整えていく方針です。
最先端の治療を目指す一方で、治療終了後の長期フォローアップ外来や、若年でがんを罹患された患者様を多方面からサポートするための診療体制を整備しています。院内各部署のみならず近隣の医療機関とも連携してワーキンググループやAYA世代サポートチームを立ち上げ、晩期合併症の管理などのサバイバーシップケアや、妊孕性保存のサポートにも注力しています。
さらに血液がん・血液難病の治療を担う最先端の病院として、未来の医療に貢献すべく、Japan Stem Cell Transplantation 研究会・West Japan Hematology Study Group・Japan Adult Leukemia Study Group・JCOG リンパ腫グループ・Japan Study on Predisposing Factors of ATL Development、阪大Clinical Blood Club などの多施設共同の臨床研究に積極的に参加し、新たなevidenceの創出にも取り組んでいます。大阪国際がんセンターの研究部門とも連携し、独自の研究の展開・成果発信にも取り組んでいます。
主要疾患
急性・慢性白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫、骨髄異形成症候群などの血液がん
再生不良性貧血・溶血性貧血・血小板減少性紫斑病などの血液難病
治療ポリシー
○それぞれの患者さまに応じた最適と考えられる治療を行います。
○33床の無菌病床を生かし、血液がんに対する化学療法、そして造血細胞移植に力を入れています。
○治験薬を含め、最先端の医療の提供を目指します。
治療の特色
造血細胞移植においては本邦のパイオニアのひとつであり、長年培われた伝統・豊富な実績・良好な治療成績を誇っています。医師・看護師・薬剤師・造血細胞移植コーディネーター・臨床心理士・リハビリセラピスト(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)・栄養士・歯科医師・歯科衛生士が一丸となって治療を支えるチーム医療を実践しています。血液の病気を治すだけでなく、退院後の生活を見据えたリハビリテーションや、若い世代の患者様の長期的なサポートにも力を入れています。
(移植チームのHPはこちら→https://oici.jp/hospital/patient/zokekkansaiboishoku/)
表1 対象疾患と主な治療法
疾患名 | 主な治療法 |
---|---|
急性白血病 | 化学療法・分子標的治療・造血幹細胞移植・免疫細胞療法 |
慢性白血病 | 化学療法・分子標的治療 |
悪性リンパ腫 | 化学療法・分子標的治療・造血幹細胞移植・免疫細胞療法 |
多発性骨髄腫 | 化学療法・分子標的治療・造血幹細胞移植 |
骨髄異形成症候群 | 化学療法・造血幹細胞移植 |
再生不良性貧血 | 免疫抑制療法・サイトカイン療法・造血幹細胞移植 |
- 同種造血幹細胞移植
- 造血器悪性腫瘍の根治的な治療法です。フル移植・ミニ移植など様々な移植方法に対応しています。移植にはご家族・骨髄バンク・臍帯血バンクの造血幹細胞を用います。患者さんとHLA(白血球型)が一致した健康体のドナーから血液の提供を受けます。HLAが半分しか合致していない血縁者様からの移植も実施可能です。
- 自家末梢血幹細胞移植
- 悪性リンパ腫や多発性骨髄腫に対し、患者さん自身の造血幹細胞をあらかじめ凍結保存し移植に用います。抗がん剤や全身放射線照射による前処置の後、あらかじめ採取し、凍結保存しておいた患者さんご自身の造血幹細胞を移植します。
- キメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T療法)
- 患者さんから採取したTリンパ球に、がん細胞を攻撃するように設計したキメラ抗原受容体を遺伝子導入し、培養で増やしたあと、患者さんに投与する免疫細胞療法です。リンパ球を安全かつ清潔に採取・保存できる設備が必要なので、全国でも限られた医療機関のみが提供できる、新しいがん治療です。2019年に難治性の急性リンパ性白血病や悪性リンパ腫に保険承認され、2021年に当センターでも施行できる体制を整えました。2024年には使用するCAR-T製剤を拡大し、年間約20例に治療を行いました。今後も新しい製剤の導入を行い、治療対象となる疾患の幅を広げ、より多くの患者さんに提供できるようにする予定です。
診療実績
2024年は同種造血細胞移植を62例、自家末梢血幹細胞移植を14例、CAR-T療法を19例、計95例の造血細胞移植・免疫細胞療法を施行し、症例数においても全国で有数の血液がん診療施設です(図1)。他の医療機関から多くの患者様をご紹介・依頼いただき、年間の診療症例数は漸増傾向です(表2)。また悪性リンパ腫に対する新しいCART製剤の登場に加えて多発性骨髄腫にも適応拡大されたため、今後より多くの症例に対応できるように体制を整えています。さらには、大阪国際がんセンターはがんゲノム医療拠点病院であるため、2025年3月から保険収載された血液がんに対する遺伝子パネル検査を地域の拠点として推進します。
図1. 造血細胞移植数の年次推移 (別添グラフ参照)
表2 疾患別症例数 (2020年〜2022年)(https://oici.jp/ocr/registry/index.html)
2020年 | 2021年 | 2022年 | |
---|---|---|---|
白血病 | 46例 | 45例 | 59例 |
悪性リンパ腫 | 152例 | 137例 | 161例 |
多発性骨髄腫 | 18例 | 13例 | 18例 |
その他の造血器腫瘍 | 21例 | 27例 | 25例 |
当科にご紹介をいただく医療機関の方へ
大阪国際がんセンターの社会的ニーズを鑑み、造血幹細胞移植や免疫細胞療法が適応になる血液がん症例を特に積極的に受け入れています。新しい免疫細胞療法製剤が臨床の現場に導入されるとともに、新薬開発に伴う臨床試験・治験の数も増えています。さらには遺伝子パネル検査に基づいた新しい時代の診療が今年度から開始される状況で、ますます当センター血液内科が果たすべき役割が大きくなると考え、対応できる体制を整えています。その一方で、従来の化学療法・放射線治療もスムーズに実施できる体制を維持しておりますので、血液がんの患者様の診療に関しましては、病型・病状に関わらず遠慮なくご相談ください。当科は血液がんを主な診療対象としていますが、再生不良性貧血・自己免疫性溶血性貧血・血小板減少性紫斑病など、良性ではあるものの難治の血液疾患も診療しております。血液がんと診断された方はいうまでもありませんが、白血球・赤血球・血小板数の異常やリンパ節腫大などで血液の病気が疑われる方がおられましたらお気軽にご紹介ください。
(連絡先;横田貴史 メールアドレス yokotat@oici.jp)
【末梢血幹細胞採取、リンパ球採取を行った方々ヘ】保存期間が5年を超えた細胞の廃棄について
学会等認定
● 日本血液学会 専門研修認定施設
● 日本造血・免疫細胞療法学会 非血縁者間造血幹細胞移植認定診療科 認定カテゴリー: 1
● 日本骨髄バンク 非血縁者間末梢血幹細胞採取認定施設
● 骨髄移植推進財団 認定施設
● さい帯血バンクネットワーク 認定施設
学術的取り組み
私たちは、目の前の患者様の治療に日々取り組むと同時に、未来の治療開発に向けて臨床・基礎研究に取り組んでいます。研究成果は、国内学会だけでなく国際学会において精力的に発信しています。
現在進行中の研究課題
「がん免疫療法における血液学的免疫関連有害事象に関する研究」
「濾胞性リンパ腫及び辺縁帯リンパ腫の臨床経過等に関する後方視的調査研究」
「HLA 半合致移植後合併症に 移植後シクロフォスファミド投与量が与える影響に関する検討」
「当院における成人T細胞白血病リンパ腫に対する同種造血幹細胞移植成績に関する研究」
「成人T細胞白血病・リンパ腫患者における新規治療標的としての免疫調整因子に関する研究」
「造血発生を誘導する新規遺伝子Ahedの生理的機能と白血病発症に関与する分子機構の解明」
「造血細胞移植と精製ミトコンドリアを用いた致死的ミトコンドリア病に対する新期治療方法の開発」
「ヒト急性骨髄性白血病の腫瘍幹細胞に発現する細胞表面抗原を標的とした新規治療の開発」
ニュース
第46回日本造血・免疫細胞療法学会総会(2025年2〜3月)で中井りつこ特別研究員の発表が「JSTCT2024若手優秀研究賞」に選ばれました。
受賞演題名 「骨髄移植はマウスモデルでミトコンドリア病リー症候群の病勢と死亡率を低下させる」
第46回日本造血・免疫細胞療法学会総会(2025年2〜3月)のシンポジウムで多田雄真医長が移植後の妊孕性温存に関する講演を行いました。またこの学会では当科所属の若手医師6名がそれぞれ筆頭で発表を行いました。
シンポジウム講演演題名 「妊孕性温存から次のステップへ」
第45回日本造血・免疫細胞療法学会総会でレジデントの先生方全員が総会で演題発表いたしました。
さらに奨励賞に三田先生の演題が選ばれました。
受賞演題名:同種移植ソースおよびGVHD予防法と免疫抑制剤投与期間に関する後方視的検討
2023年の欧州骨髄移植学会総会で、大阪国際がんセンター血液内科が映像で紹介されました。
(リンクはこちら→ https://www.youtube.com/watch?v=Cn_1ryi4gYE&list=PLd5j0y9uSMDkM077K7uNWrYu-QDzgE4To&index=6)
血液内科 集合写真 2023年4月21日撮影
プレスリリース
- ・血液内科 主任部長 横田 貴史と、特別研究員 中井 りつこ、技術員 施 亨韻らの、造血機構に関与する新たな遺伝子に関する研究論文が、Nature Communicationsに受理されました。(2024年6月26日)
プレスリリース 造血に必要な新規遺伝子を発見― 新たな白血病治療につながる可能性 ― - ・がん治療の地域医療連携DXに向けて、大阪市近辺エリアの複数の血液内科医療機関を、インターネットで診療連携する共同研究を開始しました。(2024年8月27日)
プレスリリース がん治療の地域医療連携DXに向けて、大阪エリアの複数医療機関との共同研究を開始 - ・血液内科 主任部長 横田 貴史と、特別研究員 中井 りつこ、技術員 施 亨韻らの、造血細胞移植を応用した難病治療に関する研究論文が、Nature Metabolismに受理されました。(2024年9月24日)
プレスリリース 造血細胞移植を用いた新たな難病治療の開発―ミトコンドリアの細胞間移送を利用した次世代の治療―
血液内科 論文抄読会
正岡徹先生ご講演
当科で長年、我が国における骨髄移植を黎明期から牽引してこられた正岡 徹先生が、骨髄移植の歴史と希少疾患発見への身構えについて、現在の血液内科のメンバーにお話になりました。(2023年9月)
岡本真一郎先生ご講演
我が国およびアジア太平洋地域の造血幹細胞移植診療を長年牽引してこられた岡本真一郎 慶應義塾大学名誉教授・骨髄バンク副理事長が当センター講堂でセミナーをしてくださいました。テーマは造血器腫瘍におけるチーム医療の実践 -Working together for the patients and teamで、造血幹細胞移植診療の海外および本邦での現在に至る歴史と、チーム医療についての考え方をお話になりました。当センターの多種にわたる職員に加え、当センター以外の医療関係者の方も多数出席され、100名を超える聴講者になりました。当センターの大講堂は満席となり熱気に包まれました。(2024年3月8日)
スタッフ紹介
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副院長
石川 淳
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主任部長
大阪大学医学部連携大学院招聘教授(腫瘍医学講座)横田 貴史
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副部長
藤 重夫
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副部長
油田 さや子
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医長
多田 雄真
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医長
新開 泰宏
職 名 | 氏 名 | 専門分野 | 認定医/専門医/指導医 |
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副院長 | 石川 淳 | 血液がん 造血幹細胞移植 血液難病 |
日本内科学会認定医 日本血液学会血液専門医・指導医 日本造血細胞移植学会認定医 日本輸血・細胞治療学会細胞治療認定管理師 |
主任部長 大阪大学医学部連携大学院招聘教授(腫瘍医学講座) |
横田 貴史 | 血液がん 造血幹細胞移植 血液難病 |
日本内科学会指導医 日本内科学会認定医・総合内科専門医 日本血液学会専門医・指導医 日本造血細胞移植学会認定医 |
副部長 | 藤 重夫 | 血液がん 造血幹細胞移植 血液難病 |
日本造血細胞移植学会認定医 |
副部長 | 油田 さや子 | 血液がん 造血幹細胞移植 血液難病 |
日本内科学会総合内科専門医 日本血液学会専門医・指導医 がん薬物療法専門医 がん治療認定医 日本輸血・細胞治療学会細胞治療認定管理師 |
医長 | 新開 泰宏 | 血液がん 造血幹細胞移植 血液難病 |
日本内科学会認定医 日本内科学会総合内科専門医 日本血液学会血液専門医 日本輸血・細胞治療学会細胞治療認定管理師 |
医長 | 多田 雄真 | 血液がん AYA 世代サポート 造血幹細胞移植 血液難病 |
日本内科学会認定医 日本内科学会総合内科専門医 日本血液学会血液専門医 日本造血細胞移植学会認定医 日本輸血・細胞治療学会細胞治療認定管理師 |
レジデント | 松岡 慶樹 | 日本内科学会内科専門医 | |
レジデント | 雨宮 優夏 | 日本内科学会内科専門医 | |
レジデント | 中原 航 | 日本内科学会内科専門医 | |
レジデント | 細谷 真子 | ||
HCTC・ 看護師 |
大石 亜紀 | 移植コーディネート | 日本造血・免疫細胞療法学会認定HCTC |
HCTC | 小山 可織 | 移植コーディネート | 臨床検査技師 日本組織移植学会認定コーディネーター 日本輸血・細胞治療学会 細胞治療認定管理師 日本造血・免疫細胞療法学会認定HCTC |
HCTC | 岡部 奈都美 | 移植コーディネート | 日本造血・免疫細胞療法学会認定HCTC |
回数報酬医 | 吉岡 ふみ | ||
回数報酬医・ 特別研究員 大阪大学 |
笠原 秀範 | ||
特別研究員 大阪大学 |
紀田 修平 | ||
特別研究員 大阪大学 |
三田 和広 | ||
特別研究員 大阪大学 |
加納 美月 | ||
特別研究員 大阪大学 |
寺川 拓弥 | ||
特別研究員 ワシントン大学セントルイス校 |
中井 りつこ | ||
技術補助 作業員 |
施 亨韻 | ||
データマネージャー 作業員 |
柴田 礼子 | ||
事務補助 作業員 (医局秘書) |
長谷川 満枝 |
外来診療表
診察室 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |||||
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AM | PM | AM | PM | AM | PM | AM | PM | AM | PM | |
14 | 横田 | 新開 | ||||||||
15 | 油田 | |||||||||
23 | 油田 | |||||||||
26 | 横田 | |||||||||
28 | 石川 | 新開 | 多田 | 石川 | 血液一般 | |||||
29 | 多田 | |||||||||
32 | 藤 | |||||||||
33 | 藤 |