大腸がん

大腸がんの基礎知識と治療法

このページでは、大腸がんの症状、発生、予防、検査、治療についてわかりやすくご紹介しています。

大腸とは

大腸とは、小腸に続いて、右下腹部から始まり、おなかの中をぐるりと大きく回って、肛門につながります。 長さは1.5〜2mほどの臓器で、結腸(盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)と直腸に分かれます。 さらに直腸は、直腸S状部と、腹膜反転部を境に上部直腸と下部直腸に分かれます。大腸の壁は粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜の5つの層でできています。

出典:大腸癌治療ガイドライン(2026年版、金原出版、一部改変)

大腸は、結腸(虫垂、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)、直腸(直腸S状部、上部直腸、下部直腸)、肛門管、肛門と続く約2mの管です。小腸で栄養分の吸収が行われ、残りの消化物は大腸に送り込まれます。大腸は、小腸で吸収されなかった水分を吸収し、不要なものを固形状の便として肛門から排泄します。大腸の壁は粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜の5つの層でできています。

大腸は、大動脈から上腸間膜動脈と下腸間膜動脈が分岐した血管から血流を受けています。 大腸にもリンパ管とリンパ節が血管に沿って存在し、腸管の近辺から体幹に向ってリンパ液が流れています。

出典:大腸癌治療ガイドライン(2026年版、金原出版、一部改変)

大腸は、複雑な動脈系・リンパ系ネットワークによって栄養供給と免疫防御が支えられています。大腸がん手術では、この解剖学的構造を正確に理解することが根治性と安全性に直結します。

• 血管系

大腸は主に上腸間膜動脈(SMA)下腸間膜動脈(IMA)、およびそれらの分枝によって栄養されています。
上腸間膜動脈は、回結腸動脈右結腸動脈中結腸動脈などを分岐し、右側結腸を栄養します。
下腸間膜動脈は、左結腸動脈S状結腸動脈上直腸動脈を分岐し、左側結腸から直腸上部を栄養します。
また、これらの間をつなぐ血管網(辺縁動脈)も存在し、血流の補償路として機能します。

• リンパ系

大腸からのリンパ流は、腸管周囲の腸管傍リンパ節、血管沿いの中間リンパ節、血管起始部近くの主リンパ節へと段階的に流れます。がん細胞はこのリンパ流に沿って転移しやすく、リンパ節郭清の範囲(D1・D2・D3郭清)もこの流れを基に設計されています。

• 直腸領域

直腸はさらに、中直腸動脈(内腸骨動脈由来)や下直腸動脈からも血流を受けるため、特に直腸癌手術では多様な血管支配への対応が求められます。

このような血管・リンパ系の理解は、大腸がん手術における根治性の確保、合併症リスク低減、機能温存に不可欠です。

大腸は、大動脈から上腸間膜動脈と下腸間膜動脈が分岐した血管から血流を受けています。 大腸にもリンパ管とリンパ節が血管に沿って存在し、腸管の近辺から体幹に向ってリンパ液が流れています。

直腸とは

直腸は大腸の一部です。直腸は男性では膀胱、前立腺とともに、女性では膀胱、子宮、膣とともに骨盤内に存在します。直腸は、 直腸S状部(RS)、 上部直腸(Ra)、 下部直腸(Rb)に分かれます。直腸の主な働きは便を貯めることと言われています。

直腸は大腸の一部です。直腸は男性では膀胱、前立腺とともに、女性では膀胱、子宮、膣とともに骨盤内に存在します。直腸は、直腸S状部(RS)、上部直腸(Ra)、下部直腸(Rb)に分かれます。直腸の主な働きは便を貯めることと言われています。

排便機能 排尿機能 性機能
直腸がん手術と関連する神経障害、排便機能 排尿機能 性機能とその仕組み。直腸周囲の神経は射精機能や排便、排尿、勃起機能に関連します。また、直腸内圧が4上昇すると、刺激が脊髄に伝わり大脳で便意を意識します。脊髄反射で直腸筋が収縮して内肛門括約筋が緩むことで排便されます。排尿障害、直腸の周りには、泌尿器や生殖器の機能をつかさどる自律神経が集まっています。この自律神経がダメージを受けると、尿意が鈍くなったり、排尿しても膀胱に残っている尿量(残尿)が多くなることがあります。排便障害、直腸がんの手術で直腸が切除されると、便をためておく部分が小さくなり、便の回数が増えたり、排便を我慢できなくなったりします。また、肛門括約筋をコントロールする自律神経が傷つくと、排便を我慢できなくなったり、便意がよくわからなくなることもあります。性機能障害、生殖器の機能をつかさどる自律神経がダメージを受けると、性機能も障害されます。特に男性で起こりやすく、射精障害や勃起障害が多くみられます。

直腸周囲の神経は射精機能や排便、排尿、勃起機能に関連します。また、直腸内圧が4上昇すると、刺激が脊髄に伝わり大脳で便意を意識します。脊髄反射で直腸筋が収縮して内肛門括約筋が緩むことで排便されます。このため、様々な職種の医療スタッフが直腸がんの治療をサポートします。
直腸がんセンターのホームページをご覧ください)

大腸がんの症状

大腸がんの初期には症状がほとんど出ないことが多いですが、以下のような症状が見られることがあります。

● 初期症状
  • 血便や黒っぽい便
  • 便秘や下痢が続く
  • 便が細くなる
  • お腹の張りや違和感
● 進行した場合
  • 腹痛やしこりを感じる
  • 体重減少
  • 貧血(めまい・倦怠感)
  • 尿の異常(頻尿・排尿困難)
  • 直腸の圧迫感・違和感

直腸がんの症状は、他の病気(痔・過敏性腸症候群など)と似ていることが多いため、長期間続く場合は必ず医師に相談してください。

 

「血便・便の形の変化・排便異常・腹痛・貧血」は特に注意すべき症状です。
40歳以上は便潜血検査を年1回受けます。陽性の場合は、便潜血検査を繰り返さず、大腸内視鏡検査で精密検査を受けます。内視鏡の間隔は所見や家族歴などで異なります。

 

大腸がんの発生

大腸がんの発生

出典:大腸癌治療ガイドライン(2026年版、金原出版、一部改変)

大腸がんは、腸壁の各組織層を順に浸潤しながら進行し、さらに血管やリンパ管を介して体内に転移する特徴を持ちます。

腸壁構造

腸壁は、内側から順に粘膜(上皮、粘膜筋板)、粘膜下層筋層漿膜下層または外膜、漿膜で構成されています。がんはまず粘膜内に発生し、徐々に粘膜下層、固有筋層へと浸潤を進めます。

リンパ管・血管浸潤

粘膜下層や筋層には豊富なリンパ管・血管が存在しており、がん細胞がこれらに侵入することでリンパ行性転移や血行性転移を引き起こします。
– リンパ管侵襲によって、がん細胞はリンパ節へ転移します。
– 血管侵襲を起こすと、肝臓や肺などの遠隔臓器へ血行性に転移します。

他臓器への転移

がん細胞が血管やリンパ管を通じて全身へ運ばれると、肝臓、肺、腹膜などに**二次転移(遠隔転移)**を形成します。
この過程は、大腸がんのステージ分類(特にステージIV)や治療方針決定において非常に重要です。

大腸がんの診断・治療戦略では、原発巣の深達度だけでなく、血管・リンパ管侵襲の有無が厳密に評価されます。

大腸がんの発生

大腸がんは、発生する部位によって特徴が異なります。統計データによると、日本ではS状結腸と直腸に多く、下行結腸では比較的少ない傾向にあります。

直腸がんでは、さらに上部直腸(Ra)、下部直腸(Rb)、肛門管に細分化され、それぞれ治療方針や予後が異なります。特に下部直腸癌(Rb)では、手術後の排便機能温存が課題となるため、専門的な治療戦略が必要です。

当院では、大腸がんの発生部位ごとに最適な治療を選択し、根治性と生活の質(QOL)の両立を目指した個別化治療を提供しています。気になる症状がある方や検診異常を指摘された方は、早めに専門医へのご相談をおすすめします。

大腸がんは粘膜から発生し、固有筋層、漿膜と段々と浸潤します。リンパ管や血管に浸潤すると遠隔転移を引き起こします。また、漿膜外に露出すると腹膜播種を引き起こします。大腸がんの発生場所はS状結腸と直腸で約7割を占めると言われています。

大腸がんの要因

大腸の粘膜の細胞(粘液を作る細胞)は、常にコピーされ新しい細胞に生え変わっています。この新陳代謝の過程で、コピーされた細胞の遺伝子にキズがつき、無秩序に増殖してしまう細胞が発生してきます。この細胞がポリープになり、さらにキズがつくことで浸潤したり転移したりするようになります。

大腸がんの要因。大腸がんは粘膜から発生する。遺伝子の病気。遺伝子の変異が起こると固有筋層、漿膜と段々と浸潤します。リンパ管や血管に浸潤すると肝臓や肺への遠隔転移を引き起こします。また、漿膜外に露出すると腹膜播種を引き起こします。大腸がんの発生場所はS状結腸26%と直腸39%で約7割を占めると言われています。

大腸がんの要因ははっきりとは分かっていません。しかしながら多くの要因が、複数影響しあって発症につながると考えられています。主要なリスク要因は以下の通りです。

①年齢
大腸がんの発症率は40歳以上で急激に増加します。
②肥満
特に内臓脂肪型の方はリスクが高いと言われています。
➂遺伝
家族内に大腸がんがみられても、すべてが遺伝性とは限りません。若年発症や複数の血縁者の発症などがある場合は、遺伝性腫瘍診療科への相談を検討します。
➃食生活の欧米化
食生活の欧米化によって、脂質や動物性たんぱく質の摂取量が増え、炭水化物や食物繊維の摂取量が減っています。そのため便が大腸内に停滞する時間が長くなる傾向があります。特に赤身肉や加工肉が、大きく発症に関わっていると言われています。
⑤飲酒・喫煙
過度なアルコールの摂取や喫煙は大腸がんのリスクを増加させると言われています。
➅運動不足
モータリゼーション(自動車交通)の発達により、日本人の歩数は確実に減っています。そのため、発がん物質が、大腸粘膜に長く滞在してしまい、影響を受けると考えられています。
⑦その他
炎症性腸疾患、Ⅱ型糖尿病、大腸ポリープなど様々な因子が指摘されています。

大腸がんの予防と生活習慣

大腸がんの予防には、生活習慣の見直しが大切です。

予防のためのポイント
  • 食物繊維を多く摂る(野菜・豆類・きのこ・発酵食品)
  • 赤身肉・加工肉を控えめにする
  • 週150分以上の運動を続ける
  • 肥満を防ぎ、適正体重を維持する
  • 禁煙し、飲酒は適量にする
  • 40歳以上は大腸がん検診を受ける

生活習慣の見直しは発症リスクの低減に、検診は早期発見と死亡リスクの低減に役立ちます。40歳以上の方は年1回、便潜血検査を受けましょう。

大腸がんの診断方法

  • 便潜血
  • 大腸内視鏡検査
  • CT
  • MRI
  • PET
  • 腫瘍マーカー

大腸がんのステージ

大腸がんの進み具合(広がり)を「ステージ」と呼びます。

大腸がんのステージ。大腸がんは、がん深達度によって「早期がん」と「進行がん」に分けられます。がんの深さが粘膜下層までにとどまるものを「早期大腸がん」、粘膜下層より深くに達するものを「進行大腸がん」といいます。進行がんになると、早期がんよりもリンパ節や他の臓器に転移する可能性が高くなります。

出典:大腸癌治療ガイドライン(2026年版、金原出版、一部改変)

大腸癌の治療方針は、病期(ステージ)、腫瘍の深達度(T因子)、リンパ節転移(N因子)、**遠隔転移(M因子)**の有無に応じて決定されます。以下は、日本大腸癌研究会「大腸癌治療ガイドライン」に準拠した標準的な治療戦略です。

 

ステージ0(上皮内癌)
腫瘍は粘膜内にとどまり、リンパ節転移のリスクが極めて低いため、内視鏡的切除(ポリペクトミー、EMR、ESD)が原則となります。
ステージI(浸潤が粘膜下層〜固有筋層)
内視鏡切除後の病理評価により、高リスク因子(脈管侵襲、深部浸潤、未分化型成分、切除断端陽性など)がない場合は内視鏡治療単独で完結可能です。
高リスク因子がある場合や手術適応例では、腸管切除+D2またはD3郭清を施行します。
ステージII(固有筋層貫通、リンパ節転移なし)
腸管切除+D3郭清が基本です。高リスク例(脈管侵襲強度高、腸閉塞を伴う、T4病変など)では、術後補助化学療法(主にフルオロピリミジン系)が推奨されます。
ステージIII(リンパ節転移あり)
標準治療は腸管切除+D3郭清+術後補助化学療法(FOLFOX療法やCAPOX療法など)です。リンパ節転移数により予後が異なり、術後補助療法の選択にも影響を及ぼします。
ステージIV(遠隔転移あり)
治療は切除可能例切除不能例に分けられます。
切除可能例:原発巣および転移巣の完全切除(conversion surgeryを含む)を目指します。
切除不能例:全身化学療法(FOLFOX、FOLFIRI、分子標的薬併用療法など)が中心となり、症状緩和目的で局所治療(放射線治療や姑息的切除)を併用することもあります。

このように、治療方針は腫瘍の進展度と個別リスク因子に応じて精緻に決定されます。ガイドラインに基づく標準治療の実践は、治療成績の向上と患者さんの予後改善に直結します。

 

ステージは、以下の①~③の3つを総合して、ステージ0、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳに分類されます。ステージの数字が大きくなるほど、がんが進行している状態を表します。

①がんが大腸の壁に食い込んでいる程度 (深達度)
がんが大腸の壁に食い込んでいる程度 (深達度)

出典:大腸癌治療ガイドライン(2026年版、金原出版、一部改変)

大腸がんの進行度は、がんが腸壁のどこまで浸潤しているか(T分類)によって細かく分類されます。

  • Tis(上皮内がん)は、粘膜内にとどまる状態です。
  • T1は、がんが粘膜下層に達したもので、さらに**T1a(浅い浸潤)とT1b(深い浸潤)**に分けられます。
  • T2は、がんが固有筋層にまで浸潤している状態です。
  • T3は、固有筋層を超えて漿膜下層または外膜に達するものです。
  • T4はさらに進行したもので、T4aは漿膜を突破し、T4bは他の臓器や構造物へ直接浸潤している状態を指します。

この図では、がんの進行に応じて「早期がん(粘膜内または粘膜下層まで)」と「進行がん(粘膜下層より深く浸潤)」に区分しています。
進行度は治療方針や予後の見通しに直結する重要な情報です。

②リンパ節への転移の程度 (リンパ節転移度)
リンパ節への転移の程度 (リンパ節転移度)

出典:大腸癌治療ガイドライン(2026年版、金原出版、一部改変)

大腸がん手術では、がんの根治性を高めるために腫瘍周囲のリンパ節を切除(郭清)します。リンパ節郭清は、切除する範囲に応じてD1郭清、D2郭清、D3郭清に分類されます。

D1郭清
腸管の直近にある腸管傍リンパ節(腸管壁に最も近い領域)のみを切除します。通常は早期がん(T1aなど低リスク病変)で、リンパ節転移のリスクが極めて低い場合に適応されます。
D2郭清
腸管傍リンパ節に加えて、腸間膜内を走行する血管沿いの中間リンパ節まで郭清します。進行がん(T1b〜T2相当)や、転移のリスクが中程度と考えられる場合に行われます。
D3郭清
腸管傍リンパ節・中間リンパ節に加え、さらに血管起始部(上腸間膜動脈や中結腸動脈など)付近の主リンパ節までを郭清する方法です。標準的な進行大腸がん(T3以上、またはN陽性疑い例)に対して推奨される郭清範囲であり、局所再発や遠隔転移のリスクを低減するために重要です。
③肝臓や肺、腹膜など、ほかの臓器への転移の有無(遠隔転移)
肝臓や肺、腹膜など、ほかの臓器への転移の有無(遠隔転移)

出典:大腸癌治療ガイドライン(2026年版、金原出版、一部改変)

大腸がんが進行すると、がん細胞が原発巣(大腸)から他の部位へ転移することがあります。転移の経路には大きく3つのパターンがあります。

リンパ行性転移
がん細胞がリンパ管を通って周囲のリンパ節へ広がる転移です。最初に腸管傍リンパ節、中間リンパ節、主リンパ節へと順に波及していきます。これはがんの進行度(ステージIII)を決定する重要な指標となります。
血行性転移
がん細胞が血管(門脈系)に侵入し、血流に乗って肝臓や肺など遠隔臓器へ転移します。
大腸がんでは特に肝転移が最も高頻度であり、続いて肺転移がみられます。進行すると全身へと広がる可能性もあります。
腹膜転移(腹膜播種)
がん細胞が腸管表面を破り、腹腔内に散布されることで腹膜に転移します。腹膜播種は治療が難しく、予後に大きな影響を及ぼすことがあります。

これらの転移様式を把握することは、治療方針の決定や予後予測において極めて重要です。

大腸がんの治療

このページの治療情報は、大腸癌研究会『大腸癌治療ガイドライン 医師用 2026年版』を参考に、患者さん・ご家族向けに要点をまとめたものです。
実際の治療は、がんの部位と進行度、遺伝子・バイオマーカー、年齢、体力、合併症、生活背景、治療に対する希望を総合して決めます。同じステージでも最適な治療が異なることがあります。当センターでは、消化管内科、大腸外科、腫瘍内科、放射線腫瘍科、放射線診断・IVR科、病理・細胞診断科、がんゲノム診療科などが連携し、治療方針を検討します。

ステージ別治療方針(標準治療)

多くの臨床試験の結果をもとに専門家が集まって検討を行い、専門家の間で合意の得られている治療法のことを「標準治療」といいます。大腸がんの治療では、ステージに応じて標準治療が設定されています。

大腸がんのステージ別治療方針

出典:大腸癌治療ガイドライン(2026年版、金原出版、一部改変)

ステージ0・I

ステージ0では、がんが粘膜内にとどまるため、内視鏡的切除が基本です。ステージIでは、がんの深さや内視鏡治療後の病理結果に応じて、内視鏡治療のみで経過観察できる場合と、リンパ節郭清を伴う腸切除が必要な場合があります。
内視鏡で切除したpT1がんでは、がんが深部断端に露出している場合は追加手術を強く検討します。また、①粘膜下層への浸潤が1,000 μm以上、②リンパ管または静脈への侵襲、③低分化腺がん・印環細胞がん・粘液がん、④簇出(budding)BD2/3、のいずれかがある場合は、リンパ節郭清を伴う腸切除を検討します。追加手術の要否は、複数の病理所見、病変部位、年齢・合併症、患者さんの希望を含めて判断します。

ステージII・III

ステージIIではリンパ節転移を認めませんが、がんは固有筋層を越えて広がっています。腸切除と適切なリンパ節郭清が基本です。術後補助化学療法を全員に一律に行うのではなく、T4、穿孔・穿通、低分化腺がん・印環細胞がん・粘液がん、郭清リンパ節数が少ない場合、脈管侵襲、傍神経侵襲、切除断端、CEA、簇出などの再発リスクとMSI/MMR検査結果を踏まえて検討します。
ステージIIIではリンパ節転移を認めます。根治手術に加えて術後補助化学療法を行うことが標準ですが、再発リスク、年齢、臓器機能、合併症、副作用、生活への影響を考慮して薬剤と治療期間を選びます。直腸がんでは、腫瘍の位置や局所再発リスクに応じて、手術前の放射線治療や薬物療法を検討することがあります。

ステージIV

ステージIVでは、肝臓、肺、腹膜などへの遠隔転移を認めます。原発巣と転移巣の両方を安全に切除できる場合は、根治を目指した切除を検討します。最初は切除が難しくても、薬物療法で縮小した後に切除できることがあります。
遠隔転移が切除できない場合は全身薬物療法が中心です。原発巣による腸閉塞や出血などが他の治療で制御できない場合は、過大な侵襲とならない範囲で原発巣切除を検討します。一方、原発巣による症状がない場合は、予防的に原発巣を先に切除するのではなく、通常は全身薬物療法を開始します。

内視鏡治療
内視鏡治療 ポリペクトミー EMR ESD

出典:大腸癌治療ガイドライン(2026年版、金原出版、一部改変)

リンパ節転移の可能性がほとんどなく、病変を一括切除できると判断される早期がんでは、内視鏡治療を検討します。主な方法は、ポリペクトミー、EMR(内視鏡的粘膜切除術)、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)です。病変の大きさだけでなく、部位、深さ、形、線維化、術者の経験などを踏まえて方法を選びます。
内視鏡治療は、治療であると同時に、切除標本を詳しく調べるための検査でもあります。切除後の病理結果により、経過観察、内視鏡的追加治療、リンパ節郭清を伴う追加手術のいずれが適切かを判断します。pT1がんで追加手術を行わない場合は、内視鏡だけでなく、CTなどの画像検査や腫瘍マーカーを組み合わせた経過観察が必要です。

  • ポリペクトミーでは、スネア(金属製の輪)を病変にかけ、高周波電流で焼き切るシンプルな方法です。
  • **EMR(内視鏡的粘膜切除術)**は、生理食塩水などを病変下に注入して膨らませた後、スネアで切除します。やや大きな病変にも対応可能です。
  • **ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)**は、生理食塩水やヒアルロン酸などを注入し、専用の電気メスを用いて粘膜下層を剥離しながら、正確に腫瘍を切除します。より大きな病変や、一括切除が求められる病変に適しています。
手術治療とリンパ節郭清

手術では、がんを含む腸管と、がんが広がる可能性のあるリンパ節を一緒に切除します。腸管の切除範囲とリンパ節郭清の範囲は、腫瘍の部位、深さ、リンパ節転移の可能性、支配血管の走行をもとに決めます。すべての患者さんで一律に腫瘍の上下10 cm以上を切除するわけではありません。
手術方法には、ロボット支援手術、腹腔鏡手術、開腹手術があります。低侵襲手術は傷が小さく、術後回復が早い利点が期待されますが、がんの広がり、癒着、体格、緊急性などにより開腹手術が適切な場合もあります。根治性と安全性を優先し、一人ひとりに適した方法を選びます。

手術治療、大腸がんの手術は、腫瘍と所属するリンパ節を一緒に切除します。リンパ節は血管に沿って存在し、深達度に応じてリンパ節転移率が高くなります。

大腸がん手術では、腫瘍とその周囲の十分な安全域(通常、腫瘍から上下10cm以上)を切除するとともに、がんの転移リスクを考慮して、関連するリンパ節も広範囲に切除(D3郭清)します。
図の左側では、腫瘍とリンパ節を扇状に切除する範囲が示されています。右側では、腫瘍とリンパ節を切除後、健常な腸同士を吻合(つなぎ合わせる手術)した状態を示しています。
この手術により、局所再発を防ぎ、がんの根治を目指します。当院では、正確かつ安全なD3郭清を標準手技として行い、患者さん一人ひとりに最適と考えられる治療を提供しています。

手術治療、大腸がんの手術は、腫瘍と所属するリンパ節を一緒に切除します。リンパ節は血管に沿って存在し、深達度に応じてリンパ節転移率が高くなります。

出典:大腸癌治療ガイドライン(2026年版、金原出版、一部改変)

大腸がん・直腸がんの治療では、腫瘍の位置や進行度に応じて適切な手術法が選択されます。主な手術法には、回盲部切除術、結腸右半切除術、結腸部分切除術、S状結腸切除術、さらには直腸がんに対する前方切除術(括約筋温存手術)や、人工肛門を造設するマイルズ手術(腹会陰式直腸切除術)があります。肛門機能を温存できるかどうか、腫瘍の位置や周囲組織への浸潤状況により手術選択が左右されます。当院では、最新の診断技術と経験豊富な外科医による個別化手術で、根治性と生活の質(QOL)向上を両立する治療を提供しています。大腸がん・直腸がんの手術に関する詳しい情報は、ぜひご相談ください。

腫瘍の部位によって、切離する血管と切除範囲を決定します。

手術のアプローチには、①ロボット手術、②腹腔鏡手術、③開腹手術があります。ロボット手術と腹腔鏡手術は、体に小さな孔をあけて行う手術です。開腹手術に比べて、傷が小さく、出血が少なく、術後の回復が早いと言われています。

手術のアプローチ ロボット手術 腹腔鏡手術 開腹手術。腫瘍の部位によって、切離する血管と切除範囲を決定します。右半結腸切除術、結腸部分切除術、左班結腸切除術、S状結腸切除術、前方切除術。手術のアプローチには、①ロボット手術、②腹腔鏡手術、③開腹手術があります。ロボット手術と腹腔鏡手術は、体に小さな孔をあけて行う手術です。開腹手術に比べて、傷が小さく、出血が少なく、術後の回復が早いと言われています。
ロボット支援手術

大腸癌治療ガイドライン2026年版では、ロボット支援手術は直腸がん手術の選択肢として強く推奨され、結腸がん手術の選択肢として弱く推奨されています。ロボット支援手術は、多関節鉗子、手ぶれ補正、高精細な三次元画像などを利用して、骨盤深部などで精密な操作を行う方法です。
ロボット支援手術がすべての患者さんに最適とは限りません。当センターでは、腫瘍の位置と進行度、体格、開腹手術歴、合併症などを評価し、ロボット支援手術、腹腔鏡手術、開腹手術から適切な方法を提案します。導入・実施にあたっては、関連学会の術者・施設基準を遵守します。

下部直腸がんと側方リンパ節郭清

直腸がん手術では、直腸間膜全切除(TME)または腫瘍の位置に応じた直腸間膜切除(TSME)が基本です。排尿・性機能を担う自律神経を可能な限り温存しながら、根治性を確保します。
腫瘍の下縁が腹膜反転部より肛門側にあり、壁深達度がT3以深の直腸がんでは、側方リンパ節郭清を検討します。側方リンパ節転移が疑われる場合は郭清を強く検討し、画像上陰性の場合も局所再発リスク、術前治療、術後機能への影響を含めて個別に判断します。

直腸がんのTNTと臓器温存(NOM)

TNT(total neoadjuvant therapy)は、放射線治療と全身薬物療法を手術前に行う治療戦略です。病理学的完全奏効や臓器温存の可能性を高めることが期待されますが、治療の組み合わせは複数あり、全生存期間の改善、手術への影響、治療期間の長期化、過剰治療など未解決の点があります。大腸癌治療ガイドライン2026年版では、日本の日常診療で直腸がん全例に一律に行うことは推奨されていません。
術前治療後に画像・内視鏡・直腸診でがんが消失したと判断される状態をcCR(臨床的完全奏効)といいます。cCR例で手術を行わず、厳密に経過をみる方法がNOM(non-operative management、Watch & Wait)です。NOMは『治療をしない』方法ではなく、局所再増大を早期に見つけるための直腸診、内視鏡、MRIなどによる密なサーベイランスが必要です。局所再増大は約25〜30%に認められ、多くは早期に起こるため、救済手術を含む体制が欠かせません。
大腸癌治療ガイドライン2026年版では、NOMを日常診療として安易に行わないことを弱く推奨しています。当センターでは、標準治療との違い、期待される利益と不利益を十分に説明し、直腸がんセンターの多職種チームで対象と監視体制を慎重に検討し臨床試験として実施しています。

術後サーベイランス(定期検査)

手術後のサーベイランスは、再発や新たに発生する大腸がんを早期に発見し、再切除などの治療につなげることを目的としています。pStage I〜IIIでは術後5年間を目安に行い、再発が多い術後3年以内は検査間隔を短くします。
検査の内容と時期は、病期、結腸がん・直腸がんの別、手術方法、病理結果、術後補助化学療法、年齢や合併症によって異なります。以下は大腸癌治療ガイドライン2026年版に示された標準的なスケジュールの一例です。担当医が患者さんごとに調整します。

検査 術後1~3年 術後4~5年 主な目的・注意点
問診・診察 3カ月ごと 6カ月ごと 症状、体重、腹部所見、手術後の生活上の問題などを確認します。
腫瘍マーカー
CEA・CA19-9
3カ月ごと 6カ月ごと 経時的な変化を確認します。正常値でも再発がないとは限らないため、CTなどと組み合わせます。
胸部CT 6カ月ごと pStage I・II:1年ごと
pStage III:6カ月ごと
主に肺転移や胸部リンパ節転移を調べます。直腸がんでは肺再発に注意します。
腹部CT
直腸がんは腹部・骨盤CT
6カ月ごと pStage I・II:1年ごと
pStage III:6カ月ごと
肝、リンパ節、腹膜、骨盤内局所などの再発を調べます。必要に応じてMRIを追加します。
大腸内視鏡検査 結腸がん:術後1年・3年
直腸がん:術後1年・2年・3年
所見に応じて個別に設定 吻合部再発、ポリープ、新たに発生する大腸がんを調べます。術前に全大腸を観察できなかった場合は、原則として術後6カ月以内に行います。
直腸指診
直腸がんのみ
6カ月ごと 必要に応じて実施 吻合部や骨盤内の局所再発を確認します。局所再発リスクが高い場合は、より早期の内視鏡検査を行うことがあります。
病期・治療内容によるサーベイランスの違い

pStage 0(pTisがん)では、切除断端や吻合部を確認する定期的な内視鏡検査を検討します。通常、肝臓や肺などの再発を対象とした定期的なCT検査は必要ありません。
pStage IVを根治切除できた場合や再発巣を切除した場合は、pStage IIIに準じながら、切除した肝臓・肺などを術後2年間は3〜6カ月ごとに詳しく調べることがあります。5年を超えた経過観察が必要かどうかも個別に判断します。
大腸がんの手術後は、別の部位に新たな大腸がんが発生する可能性が一般の方より高いため、再発サーベイランスが終了した後も大腸内視鏡検査を継続します。遺伝性大腸がんが疑われる場合は、遺伝カウンセリングを含めた専用の計画を立てます。
PET/CTは再発が疑われる場合の精密検査として有用ですが、症状や異常所見がない方に定期的に行う検査としては推奨されていません。ctDNA(MRD)は再発リスクを考える補助情報ですが、現時点ではCT、腫瘍マーカー、大腸内視鏡などの標準的なサーベイランスに置き換わるものではありません。
次回受診日を待たず、血便、続く腹痛や排便の変化、原因不明の体重減少、長引く咳や息切れなどがある場合は、早めに担当医へご相談ください。

ctDNAと分子的残存病変(MRD)

ctDNA(circulating tumor DNA)は、がん細胞から血液中に放出されたDNAです。根治手術後に画像では確認できない微量ながんの残存を、ctDNAで捉えようとする考え方を分子的残存病変(MRD)といいます。
手術後のctDNA陽性は、再発リスクを予測する強い因子であることが報告されています。一方、ctDNAの結果だけで術後補助化学療法の要否や強さを決めること、定期的なctDNA検査で再発を早く見つけることが、患者さんの長期的な利益につながるかは検証中です。2026年版では、ctDNAは治療方針を考える補助的な情報と位置づけられ、標準的な病理評価や画像検査に置き換わるものではありません。臨床研究を含め、担当医と相談して検討します。

薬物療法

薬物療法は、抗がん剤などの薬を用いて、体内のがん細胞の増殖を抑えたり、がんを縮小させたりする治療です。大腸がん・直腸がんの薬物療法には、従来の抗がん剤である殺細胞薬、がんの増殖に関わる分子を狙う分子標的薬、免疫の働きを利用する免疫チェックポイント阻害薬などがあります。

薬物療法の目的は、大きく分けて次の3つです。

目的 主な対象 治療の考え方
術後補助化学療法 再発リスクが高いII期・III期大腸がん、直腸がん 手術後に目に見えない微小ながん細胞を抑え、再発リスクの低下を目指します。
術前治療・腫瘍縮小治療 進行直腸がん、一部の切除可能境界・局所進行例 手術前にがんを小さくし、根治性や機能温存の可能性を高めることを目指します。
切除不能・再発がんに対する薬物療法 遠隔転移例、再発例、手術で完全切除が難しい症例 がんの進行を抑え、症状を和らげ、可能な場合には切除を目指します。

当センターでは、患者さんの全身状態、年齢、合併症、治療目的、がんの広がり、遺伝子変異やバイオマーカー検査の結果を総合的に評価し、標準治療と国内承認薬に基づいて治療方針を検討します。

切除不能・再発大腸がんのバイオマーカー検査

切除不能または再発大腸がんの薬物療法では、治療開始前にRAS、BRAF V600E、MSI/MMRを調べ、HER2検査も検討します。腫瘍の左右の部位、全身状態、治療目的と合わせて、抗EGFR抗体薬、抗VEGF薬、免疫チェックポイント阻害薬、BRAF阻害薬などを選びます。
MSI-High/dMMRでは、一次治療としてニボルマブ+イピリムマブ療法が強く推奨され、ペムブロリズマブ療法も選択肢です。BRAF V600E変異ではFOLFOX+エンコラフェニブ+セツキシマブ、KRAS G12C変異ではソトラシブ+パニツムマブ、HER2陽性では抗HER2療法が治療選択肢になります。NTRK、RET、ALK融合遺伝子など、頻度は低くても対応する治療薬がある遺伝子異常もあります。

高齢の患者さんの薬物療法

治療は年齢だけで決めず、体力、日常生活動作、認知機能、栄養状態、臓器機能、合併症、服薬状況、本人の希望を確認して選びます。80歳以上でも、全身状態と臓器機能が保たれていれば、フッ化ピリミジン単剤による術後補助化学療法を検討できます。
一方、高齢者ではフッ化ピリミジンにオキサリプラチンを追加する効果が明確でないため、標準用量を一律に追加することは勧められていません。切除不能・再発大腸がんでも、治療効果と副作用のバランスをみながら、減量、休薬、薬剤変更を行います。

 

日本で承認されている主な薬剤(2026年7月19日時点)
大腸がんの薬物療法は、病期、治療目的、これまでの治療歴、RAS・BRAF・MSI/MMR・HER2などの検査結果、腫瘍の部位、全身状態や臓器機能を総合して選びます。承認されている薬剤であっても、すべての患者さんに適しているわけではありません。

1. 殺細胞性抗がん薬
分類 主な薬剤
フッ化ピリミジン系 5-FU、カペシタビン、S-1、UFT/LV
プラチナ系 オキサリプラチン
トポイソメラーゼI阻害薬 イリノテカン
代謝拮抗薬(後方治療) トリフルリジン・チピラシル(FTD/TPI)

5-FU、カペシタビン、S-1などのフッ化ピリミジン系薬を基本に、オキサリプラチンやイリノテカンを組み合わせます。切除不能・再発大腸がんでは、FOLFOX、CAPOX、SOX、FOLFIRI、FOLFOXIRIなどに分子標的薬を併用することがあります。後方治療では、トリフルリジン・チピラシル+ベバシズマブ、レゴラフェニブ、フルキンチニブなどが選択肢です。

2. 血管新生阻害薬・抗EGFR抗体薬など
分類 主な薬剤 主な対象・備考
抗VEGF抗体 ベバシズマブ 一次治療から後方治療まで、化学療法との併用で使用します。
抗VEGFR2抗体 ラムシルマブ 主に二次治療以降でFOLFIRIと併用します。
VEGF阻害薬 アフリベルセプト ベータ 主に二次治療以降でFOLFIRIと併用します。
抗EGFR抗体 セツキシマブ
パニツムマブ
原則としてRAS野生型で使用を検討します。腫瘍の部位やBRAF変異なども考慮します。
マルチキナーゼ阻害薬 レゴラフェニブ 標準治療後の後方治療で使用します。
選択的VEGFR1/2/3阻害薬 フルキンチニブ がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発結腸・直腸がんに使用します。2024年9月承認、同年11月発売です。
3. 遺伝子変異・バイオマーカーに基づく治療
バイオマーカー 主な薬剤・治療 備考
MSI-High/dMMR ニボルマブ+イピリムマブ
ペムブロリズマブ
ニボルマブ
免疫チェックポイント阻害薬の対象です。ニボルマブ+イピリムマブは2025年8月に未治療例を含む適応へ拡大されました。
BRAF V600E変異(一次治療) エンコラフェニブ+セツキシマブ+FOLFOX 2025年11月に一次治療として国内承認されました。
BRAF V600E変異(既治療) エンコラフェニブ+セツキシマブ
エンコラフェニブ+セツキシマブ+ビニメチニブ
がん化学療法後に増悪した症例で使用します。
KRAS G12C変異 ソトラシブ+パニツムマブ 2025年に、がん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性の治癒切除不能な進行・再発結腸・直腸がんに承認されました。
HER2陽性 トラスツズマブ+ペルツズマブ がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発結腸・直腸がんで使用します。
HER2陽性固形がん トラスツズマブ デルクステカン HER2遺伝子増幅またはIHC 3+の進行・再発固形がんで、標準的治療が困難な場合に使用します。2026年3月にがん種横断的に承認され、大腸がんも承認根拠試験に含まれます。
NTRK融合遺伝子 エヌトレクチニブ
ラロトレクチニブ
レポトレクチニブ
NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発固形がんに対するがん種横断的治療です。レポトレクチニブは2025年11月に適応追加されました。
RET融合遺伝子 セルペルカチニブ RET融合遺伝子陽性の進行・再発固形腫瘍に対する治療です。
ALK融合遺伝子 アレクチニブ ALK融合遺伝子陽性の進行・再発固形がんに対し、2026年5月にがん種横断的に適応が拡大されました。
TMB-High ペムブロリズマブ 標準的治療が困難なTMB-High固形がんで使用を検討します。MSI/MMRやPOLE/POLD1などの結果も含め、専門家会議で総合的に判断します。

MSI-High/dMMRでは、一次治療としてニボルマブ+イピリムマブまたはペムブロリズマブを検討します。BRAF V600E変異では、一次治療としてエンコラフェニブ+セツキシマブ+FOLFOX、既治療例ではエンコラフェニブ+セツキシマブ±ビニメチニブが選択肢です。KRAS G12C、HER2、NTRK、RET、ALKなどの遺伝子異常が見つかった場合にも、それぞれに対応する治療を検討できます。検査方法、治療を行う時期、保険診療上の条件は薬剤ごとに異なるため、がんゲノム医療を含む専門チームで判断します。

4. 包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)検査

包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)検査は、多数の遺伝子を一度に調べ、治療につながる遺伝子異常を探す検査です。腫瘍組織を用いる検査と血液を用いる検査があります。
大腸癌治療ガイドライン2026年版では、検査後に薬物療法を受けられる可能性が高い患者さんに対し、治療機会を失わない適切な時期にCGP検査を行うことが弱く推奨されています。当センターでは、がんゲノム診療科と連携し、検査の適応、時期、結果に基づく治療選択を検討します。

5. 後方治療(標準治療後の薬物療法)

標準的なフッ化ピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカン、抗VEGF薬、RAS野生型に対する抗EGFR抗体薬が効かなくなった場合や副作用で継続できない場合にも、複数の治療選択肢があります。
2026年版では、トリフルリジン・チピラシル+ベバシズマブ療法が強く推奨され、レゴラフェニブ、トリフルリジン・チピラシル単剤、フルキンチニブも選択肢です。遺伝子異常に対応する治療がある場合は、それらを先に検討することがあります。副作用の特徴や体力、これまでの治療歴を踏まえて選びます。

よくある質問

■大腸がんのリスクと予防について

大腸がんになりやすい体質や生活習慣はありますか?

大腸がんのリスクは、食生活(肉中心・食物繊維不足)、運動不足、肥満、喫煙、過度な飲酒、遺伝的要因などが関係しています。定期的な検査と健康的な生活が予防につながります。

家族に大腸がんの人がいます。私もなる可能性は高いですか?

家族に大腸がん患者がいる場合、一般的な人よりリスクが高くなると言われています。遺伝性のがん(リンチ症候群や家族性大腸腺腫症)の可能性は、大腸がんの場合、非常に低い(5%未満)ですが、40歳未満でも、医師と相談のうえ早めに検査を受けることをおすすめします。

大腸がんを防ぐためにできることは?

食物繊維を多くとる、赤身肉・加工肉を控える、運動をする、肥満を防ぐ、禁煙・節酒を心がけることが予防に役立ちます。生活習慣の見直しは発症リスクの低減に、検診は早期発見と死亡リスクの低減に役立ちます。40歳以上の方は年1回、便潜血検査を受けましょう。

大腸がん検診の目安はなんですか?

40歳以上:便潜血検査を年1回受ける
50歳以上:基本的には便潜血検査ですが、大腸内視鏡検査を定期的に受けるとより安心できます。
家族歴がある人:医師と相談し、40歳未満でも検査をうけることを考えてみてください。

 

■症状について

どんな症状が出たら病院に行くべきですか?

血便、便が細くなる、便秘や下痢が続く、腹痛、お腹の張り、体重減少などの症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

血便が出たら必ず大腸がんなの?

いいえ、血便は痔や大腸ポリープ、炎症性腸疾患などでも起こることがあります。ただし、大腸がんの可能性もあるため、一度医師に相談し大腸内視鏡検査をすることをおすすめします。

 

■検査について

大腸がんの検査は痛いですか?

便潜血検査は簡単で痛みはありません。大腸内視鏡検査は多少の違和感があることもありますが、鎮静剤を使用すればリラックスした状態で受けられます。

何歳から検査を受けたほうがいいですか?

一般的には40歳以上から定期的な便潜血検査を受けることが推奨されています。ただし、家族に大腸がんの人がいる場合や、リスクが高いと考えられる場合は、医師と相談のうえ、より早い年齢からの検査が望ましいです。

便潜血検査が陽性だったらどうすればいい?

陽性でも必ずしも大腸がんとは限りませんが、大腸内視鏡検査を受けて詳しく調べる必要があります。

 

■治療について

大腸がんは治る病気ですか?

早期に発見し適切に治療できれば、多くの方で治癒が期待できます。治癒の可能性は病期、病理所見、全身状態などで異なります。

大腸がんの手術を受けたら、普通の生活に戻れますか?

はい、多くの方が術後のリハビリを経て日常生活に復帰できます。食事の工夫や体調管理が必要ですが、仕事や趣味も続けることができます。

人工肛門(ストーマ)になったら生活はどう変わる?

ストーマが必要になるケースは一部ですが、適切なケアをすれば普通の生活が可能です。専用のパウチを使えば、スポーツや旅行もできます。

抗がん剤治療は副作用がつらいですか?

出来るだけ日常生活の中で抗がん剤治療を受けていただくようにしています。副作用の出方には個人差がありますが、吐き気、脱毛、倦怠感などが出ることがあります。最近では、副作用を軽減するサポート薬や症状緩和の方法も進歩しております。また、症状に合わせた休薬と減量によって、多くの方が治療を続けられています。

 

■術後の生活と再発について

大腸がんの手術後、食事で気をつけることは?

消化の良い食事を心がけ、徐々にバランスの良い食事に戻していきます。とくに食べてはいけないものはありませんが、脂っこいものや刺激の強い食べ物は、体調を見ながら調整しましょう。

大腸がんは再発しますか?

早期の大腸がんでは再発率は低いですが、進行がんでは再発の可能性があります。そのため、術後5年間の定期的な検査や通院が必要です。

大腸がんの治療後に妊娠・出産は可能ですか?

可能性は治療内容、年齢、卵巣・精巣機能、骨盤への放射線治療などで異なります。将来の妊娠・出産を希望する場合は、治療開始前に妊よう性温存を含めて相談してください。

最後に

生活習慣の見直しは発症リスクの低減に、検診は早期発見と死亡リスクの低減に役立ちます。40歳以上の方は年1回、便潜血検査を受けましょう。大腸がんは切除できれば、治癒が期待出来る比較的予後の良いがんです。そのために、がん検診を定期的に受診されることをお勧めします。

大腸がん治療に関わるケアチーム

また、大阪国際がんセンターがん対策センターの大阪がん情報サイトの「おおさか がんサポートブック」も、無料でダウンロートできます。参考にしてください。

  • 更新日:2026年7月5日
  • 参照:大腸癌研究会編『大腸癌治療ガイドライン 医師用 2026年版 第9版』金原出版、2026年。薬剤・適応に関する記載は2026年7月時点です。適応や保険診療上の取り扱いは変更されることがあります。

監修:大阪国際がんセンター 消化器外科 大腸外科長/直腸がんセンター センター長 賀川義規(日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医、日本大腸肛門病学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡外科学会技術認定医、ロボット支援手術認定プロクター、大腸癌治療ガイドライン2024年版協力者)

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