大腸外科

  • 診療内容 / 実績
副院長
大植 雅之
大腸外科長
安井 昌義
副部長
西村 潤一
副部長
末田 聖倫
診療主任
北風 雅敏

大腸がん診療の特徴

大腸がんの手術では、ロボット支援下手術を含めた腹腔鏡下手術を主軸に行っています。特に、直腸がんの手術に対しては、ロボット支援下手術を積極に行っており、肛門とその機能の温存、排尿ならびに性機能障害の防止を図っています。ロボット手術は2022年4月から結腸癌でも保険収載されており、ロボット支援下の結腸切除も積極的に行なっています。また、局所進行直腸がんに対する術前化学放射線療法の施行、局所再発や肝転移、肺転移に対する抗癌剤や放射線治療を併用した集学的治療を施行することで、治療成績を上げています。さらに、泌尿器科や婦人科、整形外科、形成外科等の各科診療科と連携することで、切除限界の大腸がん症例に対しても骨盤内臓全摘術などにより積極的な根治切除を目指しています。

  • ・年間約380例、腹腔鏡下手術が約98%
  • ・直腸がんに対するロボット支援下手術を、2018年2月より導入
  • ・外来初診より手術まで15日(中央値)
  • ・術後退院までの平均日数は9.9日(中央値は8日)
  • ・集学的治療による根治切除の実践
大腸がん手術症例数の年次推移(2013年〜2022年)
大腸がん手術症例数の年次推移
大腸がん手術における腹腔鏡下手術の割合(ロボット支援下手術を含む)
大腸がん手術における腹腔鏡下手術の割合
外科治療の成績(2010~2014年の5年全生存率)
結腸癌手術症例 5年全生存率
結腸癌手術症例 5年全生存率
直腸がん手術の縫合不全発生率(2013年〜2022年)
2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022
縫合不全(%) 0.9% 0% 2.5% 1.7% 0.7% 2.1% 0% 0.7% 1.2% 1.5%

腹腔鏡下手術

腹腔鏡手術とは、お腹を大きく切開する開腹手術とは異なり、臍の小切開と左右の側腹部の5mmや10mm程度の小さな傷を利用して、カメラと鉗子を挿入して手術を行うものです。よって、開腹手術よりも体に対するダメージが低い(低侵襲)ことが最大の特色となります。また、腹腔鏡手術では、炭酸ガスでお腹を膨らませて(気腹)、高解像度のカメラとモニターを用いて鮮明で拡大された画像を見ながら手術を行うため、細かな血管や神経まで観察可能であり(拡大視効果)、出血量が少なく、精緻な手術操作が可能です。加えて、入院期間の短縮、創感染の低さ、整容性などの面でも開腹手術より優れていることが知られています。大腸がんに対する腹腔鏡手術は、2002年に保険適応となっており、手術・治療成績が開腹手術とほぼ同等であることから、標準的な術式になってきています。当院では、大腸癌の手術の95%以上を腹腔鏡手術にて行なっております。

<腹腔鏡下手術のポート創>

マルチポート

単孔式

<腹腔鏡下手術の様子>

腹腔鏡下手術の鉗子操作

モニターを見ながらの手術操作

<腹腔鏡下手術の実際>

S状結腸癌に対する腹腔鏡下手術

下腸管膜動脈の切離

S状結腸の切離

腸管吻合(DST)

腸管吻合後

ロボット支援下手術

ロボット手術は、肉眼で見えるのと同様に奥行きがある3次元ハイビジョンモニターを見ながら行います。またロボットの鉗子は、腹腔鏡の直線的な動きとは異なり、手振れがなく多関節可動となるため、あたかも人の手や指と同じように動かすことができるため、複雑で精緻な手術が可能となります。直腸がんの手術では、精度の高いがんの根治切除はもちろんのこと、肛門の温存と肛門機能の温存、そして、性機能や排尿機能の温存も重要な課題となります。狭い骨盤の深部で行う直腸癌手術はそれらの点でロボット手術が有用であるといわれており、今後の直腸がん手術の主軸を担うものと期待されています。また2022年4月から結腸癌にもロボット手術が保険収載されました。当科では保険収載前から全国に先駆けて取り組んでおり、すでに多くの患者様に受けて頂き、良好な術後経過を辿っていただいております。但し、全ての結腸癌にロボット手術を行なっているのではありませんので、ご相談ください。当院は、Intuitive社(ダビンチを扱う会社)公認の直腸がんと結腸がん両方のメンターサイト(他施設の外科医のための見学施設;国内で2施設のみ(2022年4月現在))となっております。

ロボット支援下手術症例数の推移(2018年〜2022年)

ロボット支援下手術数の推移

<ロボット支援下直腸がん手術>

ロボットの操作部
(コンソール)

デュアルコンソール
(二人での手術が可能)

術者の指と足で操作

手術用ロボットの本体

ステレオビューワ
(高解像度の3D画像での手術が可能)
(マイクとスピーカーで手術室内のスタッフとのコミュニケーションが可能)

<ダビンチXiによるロボット支援下手術の実際>

ロボット支援下の直腸手術
(直腸後腔の剥離)

ロボット支援下の上行結腸手術
(体腔内吻合)

第101回成人病公開講座 「がんロボット手術 ~がんロボット手術センター新設~」

進行・再発大腸癌に対する治療

  • a.高度進行・境界切除大腸がんに対する治療:
    当院では、泌尿器科、婦人科、整形外科や形成外科などの多数の診療科と連携し、高度進行、境界切除可能の大腸がん(例えば、膀胱や婦人科臓器にがんが浸潤している場合や、仙骨にがんが近接しているような状態)に対しても積極的な手術治療を行っています。直腸がんでは、腫瘍内科(抗がん剤のスペシャリスト)や放射線腫瘍科と連携することで、術前化学療法や化学放射線療法を行い、直腸がん術後の局所再発率の低下、肛門温存を図っています。

  • b.転移を伴う大腸がんに対する治療:
    大腸がんの同時性の遠隔転移では、肝臓が最も多く、肺転移も比較的多く発生します。また、結腸がんでは、腹膜播種(お腹の中にがん細胞がばら撒かれた状態)が肝転移に次いで多いことが知られています。大腸がんの診断時に遠隔転移を診断されても諦める必要はありません。肝臓に転移がある場合、その程度が軽度の場合には、大腸がんの原発巣の切除と同時の切除、もしくは、抗癌剤治療後に肝切除を行うことで、高い根治性を得ることが可能となります。肺転移の場合にも、抗癌剤治療後に切除可能であれば外科的切除を行います。遠隔転移が高度である場合には、基本的に抗がん剤治療を先行し、根治切除が可能となれば、外科的切除を行います。外科的な根治切除が不能である場合には、抗がん剤治療や放射線治療による集学的治療を行います。大腸がんの場合は、がんの進行により腸管が閉塞し腸閉塞(イレウス)症状や出血症状(下血や貧血)を呈することがあります。このような場合には、手術により症状を改善した後に、抗癌剤治療を行なっていきます。

  • c.大腸がんの再発に対する治療:
    結腸がん手術後の再発では、肝臓と肺、直腸がんでは、肝臓と肺、そして局所再発が多いことが知られています。大腸がん手術後にがんの再発が診断された場合、抗がん剤や放射線治療などの集学的治療を行います。これらの治療を行うことで外科的な切除が可能となれば、積極的に根治切除を行います。直腸がんの局所再発で、遠隔転移がない場合には、骨盤内臓全摘術も選択肢となります。この場合には、泌尿器科、婦人科、整形外科や形成外科などの多数の診療科と連携して手術を行っています。直腸がんにおける局所再発の場合、重粒子線治療も強力な治療法として選択肢になります。この場合も基本的に他臓器に転移がない場合に適応となります。
    残念ながら、外科的切除が不能な場合には、主に、腫瘍内科や放射線腫瘍科との協力の下に治療を行なっていきます。近年では大腸がんに対する抗がん剤や分子標的薬が次々に開発されています。いくつかの薬剤を組み合わせて治療を行うことで、がんを完全に消失させることは難しくても、がんの進行を抑えて、生存期間を延ばすことが可能になってきています。大腸がんにおいては、RASやBRAF、MSIなどの、がん細胞に起こっている遺伝子の変異を調べてがんに合った分子標的薬を選択します。なお、当院では、「がんゲノム医療連携病院」に指定されており、標準治療(治療ガイドラインで定められた治療)を終えられた進行・再発のがんの患者様に対して、がん遺伝子パネル検査を行うことで、新しい薬剤や治療法の検索、そして、利用可能な治験・臨床試験を探すことも可能です。

関連サイト

センター
広報誌

総合受付06-6945-1181 月曜日~金曜日(祝日除く) 午前9時~午後5時30分