大腸外科
- 診療内容 / 実績
豊富な実績で、安心し納得できる最適な大腸がん治療を徹底追求します
大腸外科の特徴
大阪国際がんセンター大腸外科では、「豊富な手術実績をもとに、各分野の専門家と連携しながら、患者さん一人ひとりに適した治療を提供する。そして、安心と納得のもと、『出会えて良かった』と思っていただける医療を実現する。」ことを基本方針としています。大腸外科専門医をはじめ、内視鏡医、放射線科医、腫瘍内科医、薬剤師、看護師、栄養士、理学療法士、ソーシャルワーカーなど、多職種が連携し、総合的なケアを提供しています。
- 1.大腸がん治療の専門チーム
- 2.質にこだわった手術
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- ・ロボット支援手術や腹腔鏡手術を積極導入し、傷口を小さくし、回復を早めることで身体への負担を軽減。
- ・精密な手術で合併症リスクを低減。
- ・超低位前方切除術や括約筋間直腸切除術(ISR手術)ISR手術や肛門温存率の向上。
- ・早期社会復帰を目指した手術計画(クリニカルパス)を策定。
- 3.豊富な治療実績と成績向上への取り組み
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- ・年間450件以上のがん関連手術、350件以上の大腸がん切除の手術を実施。
- ・進行がんや再発症例にも対応し、患者さんごとに適した治療を提供。
- ・直腸がんでの肛門温存や直腸温存への追求。
- ・大腸がん転移に対する集学的治療(手術、化学療法、放射線治療)。
- 4.ケアチームによる就労・生活サポート
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- ・仕事をしている患者さんやご家族にとって、通院しやすいスケジュールの取り組み。
- ・看護師や栄養士による食事・生活のアドバイス。
- ・患者さんの不安を解消し、生活の質(QOL)の向上をサポート。
- ・かかりつけ医と連携し、安心して日常生活を送れる体制を整備。
- 5.新しい治療(治験・臨床試験)への取り組み
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- ・新薬(治験)やリキッドバイオプシーなどの新しい技術を活用。
- ・標準治療に加え、新たな治療の選択肢を提供。
患者さんに合った治療とサポートで、出来るだけ普段の生活を維持できる治療を目指します。
大腸がんとは?
大腸がんとは、大腸(結腸や直腸)にできるがんのことです。初期は症状が出にくいですが、血便や便の変化、腹痛などが現れることがあります。早期発見で治療の選択肢が広がるため、定期的ながん検診が大切です。くわしくは、大腸がんの解説や直腸がんセンターのサイトをご覧ください。
大腸がんの手術
ロボット支援低手術と腹腔鏡手術について


近年は、ほとんどの手術が傷の小さなロボット支援手術や腹腔鏡手術が可能になっています。これらのロボット支援手術も普及しており、当センターでは大腸がん手術の約7割がロボット支援手術で実施しています。
ロボット支援低位前方切除術(ISR)
下部直腸後壁部分に腫瘍を同定。赤線の範囲の腫瘍を含む腸管とリンパ節の切除を行います。
R1〜R4にロボット用ポートを入れます。ロボットとドッキング後にポートからカメラやインストゥルメント(鉗子、ハサミ型の電気メス、自動縫合器など)入れます。助手は腹腔鏡用の鉗子でサポートします。
①ハサミ型の電気メスで後腹膜からS状結腸と直腸を剥離し切除する部分を、慎重に授動します。
②剥離が終了すると、がんの進行度に合わせて腸管膜の切除範囲を決定します。
③病巣から2〜3cm離して直腸を自動縫合器で切離します。残ったS状結腸側の断端を体腔外に導出し、自動吻合器の先端(アンビル)を装着します。切除された腫瘍が含まれる腸管は、小切開創(お臍)から取り出します。
④病巣を切除したあとは、S状結腸と残った直腸をつなげるため、肛門から自動吻合器を挿入しドッキングし吻合します。
横から見た図。円形にステイプラーがかかり、真ん中が打ち抜かれることで、吻合口が形成されます。
⑤吻合が確実に出来ていること、止血が出来ていることを確認し、ポートを抜いて切開創を縫合して手術終了です。縫合には吸収される糸を使っています。
ロボット支援結腸右半切除術
上行結腸部にがんを同定。赤線の範囲の腫瘍を含む腸管とリンパ節の切除を行います。
R1〜R4にロボット用ポートを挿入します。ロボットとドッキング後にポートからカメラやインストゥルメント(鉗子)を挿入します。助手が腹腔鏡用の鉗子で手術をサポートします。
①ハサミ型電気メスで右側結腸を後腹膜から剥離し、慎重に上行結腸を授動します。
②回盲部から上行結腸とがんの進行度に合わせてリンパ節を含む腸管膜の切除を行います。上行結腸と回腸は自動縫合器で切離します。
③病巣を含む腸管を切除したあとは、横行結腸と回腸をつなげるためにそれぞれに小孔を開けます。(赤丸部分)
④体腔内で小さな孔に自動縫合器を履かせるように挿入し、回腸と上行結腸を挟み込み自動縫合器で縫合と切離を同時に行います。
⑤吻合口が作られ、上行結腸と回腸が開通した状態になります。最後に開いている口を自動縫合器で閉鎖します。
⑥切除した腫瘍と腸管を切開創から取り出します。吻合が確実に出来ていること、止血が出来ていること、異物がないことを確認します。その後、ポートを抜き、切開創を縫合して終了です。縫合には吸収される糸を使用しています。
術前・術後のながれ
大腸がん手術の流れ (初診から退院まで)
- 術前外来
- 初診日では、診察と手術に関連する検査を行い、2回目の来院では、麻酔科外来で診察と全身麻酔の説明を受けてもらい、大腸外科外来で手術説明を行います。手術日予定は初診日に相談します。
*病状に応じて、追加の検査が必要になることがあります。 - 入院
- 手術2日前に入院してもらいます。手術当日はICUまたはHCUで経過観察を行います。術後1日目から疼痛コントロールを図りながら、リハビリが開始され、結腸がんであれば術後5〜7日目に退院、直腸がんであれば、術後7〜14日目に退院となります。
*病状に応じて、異なることがあります。 - 退院後
- 退院後は、2〜3週間後に手術の結果説明を行います。ステージによっては、術後補助化学療法の説明も行います。また、術後は5年間、再発がないかフォローアップします。基本的には3ヶ月おきに採血、6ヶ月おきのCT、1年に1回の大腸内視鏡検査で定期的な検査が必要です。

早期社会復帰を目指した術前・術後のながれ (クリニカルパス)

入院前から入院中のスケジュール(クリニカルパス)について示します。
非日常である手術をいかに日常生活の中で受けていただくかを考えて、術前と術後のスケジュールを組んでいます。
退院することが目標ではなく、退院後の生活も含めた早期社会復帰を目標としています。
- 術前
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- ・手術2日前に入院してもらっています。
- ・入院5日前から自宅で下剤を内服してもらいます。
- ・入院後は手術の準備や下剤処置などを行います。
- ・入院後に手術説明をすることは基本的にはありません。
- 手術当日・術後
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- ・全身麻酔から覚醒していることを確認した後、飲水開始できます。
- ・お薬でしっかりと疼痛コントロールします。
- ・ベッド上安静ですが、寝返りはできますのでお好みの体勢でお休みください。
- 手術後1日目
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- ・最初は看護師と一緒に歩いてみましょう。
- ・出来るだけ座っている時間を作っていきます。
- ・栄養補給飲料を食事として開始します。
- 術後2〜3日目
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- ・状態をみて、食事を開始します。
- ・食事が取れるようになると点滴がなくなります。
- ・体を動かしていきます。
- 術後3〜4日目
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- ・合併症が発生していないか経過観察していきます。
- ・創部は基本的に観察のみで消毒はしません。
- 術後5〜7日目
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- ・順調であれば、退院の準備をしていきます。
- 合併症予防のために
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- ・よく歩きます。できるだけ座っている時間を長くします。
- ・水分や食事はゆっくりとり、腹八分目を目安にします。
- ・排便・排尿時に、いきんだりして腹圧をかけないようにします。
患者さんの心と暮らしを支えるために
- 1.不安に寄り添うコミュニケーション
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- ・初めて「がん」と聞くと不安になります。当科では、患者さんやご家族のお気持ちに配慮しながら、わかりやすい言葉で丁寧にご説明します。初診時には、わかりやすいパンフレットをお渡します。
- 2.ケアチームでのサポート体制
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- ・医師、看護師、薬剤師、理学療法士、栄養士、ソーシャルワーカーなどが一丸となり、治療だけでなく生活・心のケアも含めてサポートします。
- 3.患者さん一人ひとりに合わせたプラン
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- ・治療だけでなく、「その後の暮らしまで見据えたケア」を大切にしています。
- ・仕事復帰や家事、育児、介護との両立など、個々の状況に応じたアドバイスを行います。
手術実績
- 1.大腸がん手術の実績
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- ・年間450件以上の手術、350件以上の大腸がん切除の手術を実施。
- ・ロボット支援手術や腹腔鏡手術を積極導入し、身体への負担を軽減。
- ・進行がんや再発症例にも対応し、豊富な経験を活かした治療方針を提供。
- 2.低侵襲手術の推進
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- ・ロボット支援手術や腹腔鏡手術に対応 (97.6%)。
- ・精密な操作により合併症リスクを低減。
- ・クリカルパスで、より短い入院期間で早期退院を実現 (術後5〜7日目退院)。
- 3.肛門・直腸温存への取り組み
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- ・直腸がんセンターを併設し、エキスパートによる専門的な治療を提供。
- ・内視鏡治療やロボット手術を積極的に活用し、肛門温存を目指す。
- ・術前化学・放射線療法(TNT療法)を用いて、腫瘍の縮小と肛門・直腸温存の可能性を追求
- ・術後の生活の質(QOL)を考慮し、患者様に寄り添った治療を提供
- ・肛門温存が可能な超低位前方切除術や括約筋間直腸切除術(ISR手術)を導入。
低位前方切除術ロボット支援手術を用いて、腹腔内から直腸を肛門近くまで慎重に剥離し、直腸と腫瘍を切除します。
切除後、吻合器(ふんごうき)を使用して、口側結腸と残存直腸を吻合(つなぎ直し)します。
この手術では、内肛門括約筋と外肛門括約筋を温存するため、排便機能が保たれます。括約筋間直腸切除術(ISR手術)(※一時的な回腸ストーマ造設が必要な場合があります)
内肛門括約筋を部分的または全体的に切除し、外肛門括約筋と肛門を温存して排便機能を維持する手術です。
直腸からの操作で口側結腸と肛門を直接吻合します。
ISR手術は、吻合部の縫合不全を防ぐために、一時的に小腸にストーマ(人工肛門)を造設することがあります。
一時的ストーマにより、吻合部に便が流れるのを防ぎ、安定を図ります。吻合部が十分に治癒した3〜6か月後にストーマを閉鎖し、再び自然な排便が可能になります。 - 4.治療成績(ステージ別5年生存率)
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患者さん・ご家族からのご質問にお答えします
手術件数が多いと何がいいのでしょうか?
手術の件数が多い病院では、医師やスタッフが豊富な経験を積み、合併症を減らす工夫や手術技術の向上に取り組みやすい傾向があります。当科では年間350件以上の大腸がん手術を行っており、常に技術の向上と安全性の確保に努めています。
手術までの待機期間はどれくらいですか?
初診日からおよそ3週間ほどです。ただし、進行度や患者さんの病状により異なるため、担当医の指示に従ってください。
術後はどのくらいで退院できますか?
ロボット手術や腹腔鏡手術の場合は、結腸がんでは術後5〜7日ほど、直腸がんでは術後7〜14日ほどで退院できる方が多いです。ただし、進行度や患者さんの体調により異なるため、担当医の指示に従ってください。
ストーマ(人工肛門)が必要になることは多いですか?
大腸がんの部位や進行度によってはストーマが必要になりますが、すべての症例に造設するわけではありません。造設が必要な場合も、ストーマ外来や専門スタッフがケアをサポートしますのでご安心ください。
費用はどのくらいかかりますか?
保険診療の範囲で治療を受ける場合、手術や化学療法の費用の目安は数十万円ほどですが、「高額療養費制度」を利用することで自己負担額が抑えられます。いまのあなたに最適な公的支援制度や民間保険が、見つかるサイトもあります。ご利用ください。
家族の付き添いは必要ですか?
外来での術前説明や術後初回外来の説明時にはご家族のご同行をおすすめしています。また、手術当日は、手術が終了したらご家族に説明をさせていただきます。ご家族の付き添いが難しい場合もあるかと思います。その際は、担当医にご相談ください。面会のご案内もご確認ください。
他院で大腸がんの手術が難しいと言われました。相談できますか?
もちろん可能です。セカンドオピニオン外来も行っていますので、お気軽にご予約ください。
大腸がんの治験や臨床試験に参加するとどんなメリットがありますか?
新しい薬剤や治療法を受けられる可能性があり、標準治療と比べて効果が高い場合や副作用が少ない場合があります。ただし、未知のリスクも伴いますので、担当医としっかり相談のうえご検討ください。治験情報はこちらをごらんください。
まとめ
大腸がんの治療は、早期発見と適切な治療計画が何より大切です。大阪国際がんセンター大腸外科では、豊富な手術実績をもとに、各分野の専門家と連携しながら、常に最新の治療を取り入れ、患者さん一人ひとりに適した治療を提供しています。そして、安心と納得のもと『出会えて良かった』と思っていただける医療を実現するように精一杯努めています。
大腸がん治療に関わるケアチーム
大阪国際がんセンター がん対策センターの「おおさか がんサポートブック」も、無料でダウンロートできます。参考にしてください。
- ・更新日:2025年4月1日
- ・参照ガイドライン:大腸がん治療ガイドライン 2024年版 (金原出版)
監修:大腸外科 科長 /直腸がんセンター センター長 賀川義規(日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医、大腸肛門病学会専門医 など)